「スタイリングシリーズ」は「スタイリング」と類似しない!識別力の弱い語同士の結合は一体として把握されることも(「スタイリングシリーズ」事件)

「スタイリングシリーズ」は「スタイリング」と類似しない!識別力の弱い語同士の結合は一体として把握されることも(「スタイリングシリーズ」事件)

結論:「スタイリング」と「シリーズ」のように、いずれも識別力が強いとはいえない語同士が自然に結合している場合には、全体が不可分一体の商標として認識され、一部だけを取り出して先行商標と比較することはできないと判断されることがあります。

今回の「スタイリングシリーズ」事件では、本願商標「スタイリングシリーズ/STYLING SERIES」と引用商標「スタイリング」「styling/」は類似しないと判断されました。

ポイントは、「スタイリング」だけを要部として抽出することはできず、商標全体が一体不可分のものとして認識されると判断された点です。

事案の概要

本願商標は「」(商願2024-121021号)です。

引用商標は「スタイリング」(登録第3190951号)、「styling/」(登録第5852931号)及び「styling/」(登録第6324060号)です。

拒絶査定不服審判は、不服2025-019860です。

原査定では、本願商標のうち「スタイリング」部分を抽出して引用商標と比較し、商標法4条1項11号に該当すると判断されました。

しかし、審判ではその判断が覆され、登録が認められました。

理由1 商標全体がまとまりよく構成されていた

本願商標は、「スタイリングシリーズ」の片仮名と、「STYLING SERIES」の欧文字を上下二段に配置した商標です。

それぞれ同じ書体、大きさ、間隔で表されており、外観上まとまりよく一体的に構成されています。

また、上段の片仮名は下段の欧文字の読みを示すものと容易に理解されます。

さらに、「スタイリングシリーズ」という称呼も無理なく一連に称呼することができます。

このような構成から、需要者は商標全体を一つの名称として把握すると判断されました。

理由2 「シリーズ」だけでなく「スタイリング」も識別力が強くなかった

審決では、「シリーズ」は「一連の商品や役務」を意味する語として、識別力が弱いことを認めています。

一方で、「スタイリング」についても、「様式」などを意味する一般的な語であり、本願の指定役務との関係でも識別力がそれほど強いものではないと判断しました。

つまり、

  • 「シリーズ」は識別力が弱い
  • 「スタイリング」も識別力が特に強いわけではない

という評価がされています。

この点が本件の重要なポイントです。

一般には、「後半が説明的だから前半が要部になる」と考えられがちですが、本件では前半部分も強い識別力を有していなかったため、そのような判断には至りませんでした。

理由3 識別力が弱い語同士の結合は一体として認識されやすい

審決は、

識別力が弱い語同士がまとまりよく結合している場合には、その全体が不可分一体の商標として認識される

と判断しました。

需要者は、その構成中の特定の語だけに着目するのではなく、「スタイリングシリーズ」という全体を一つのブランド名として記憶・認識すると考えられたのです。

そのため、「スタイリング」だけを抜き出して引用商標と比較することは相当ではないとされました。

理由4 「スタイリング」だけが独立して認識される事情もなかった

審決では、「スタイリング」部分だけが独立して出所識別標識として認識される特段の事情も存在しないと判断しています。

例えば、

  • 「スタイリング」だけが特に大きく表示されている
  • 「シリーズ」が極端に小さく表示されている
  • 「スタイリング」が著名ブランドとして広く知られている

といった事情は認められませんでした。

そのため、本願商標全体を不可分一体として把握するのが自然であると判断されています。

条件1 一体不可分と判断されやすい場合

この事件からすると、次のような場合には商標全体で判断されやすくなります。

各構成部分の識別力がともに弱い場合

一方だけでなく双方とも一般的な語である場合には、特定部分だけが要部になるとは限りません。

外観上まとまりよく構成されている場合

文字の大きさや書体、配置が統一されていると、一体の商標として認識されやすくなります。

全体を自然に一連称呼できる場合

途中で区切ることなく自然に読み上げられる商標は、一体不可分と評価されやすくなります。

特定部分だけが強調されていない場合

構成中の一部分だけが目立つ表示になっていなければ、全体として把握される可能性が高くなります。

条件2 逆に要部抽出されやすい場合

もっとも、結合商標であれば常に全体判断となるわけではありません。

一方が説明的表示にすぎない場合

後半部分が役務内容や品質を示すだけで、前半部分に強い識別力があれば、その前半部分が要部となることがあります。

一方が著名ブランドである場合

需要者が特定部分だけで出所を認識する事情があれば、その部分だけが要部として抽出される可能性があります。

構成上、明確に分離して認識される場合

文字の大きさや配置に大きな差があり、独立した表示として受け取られる場合には、部分観察が認められることがあります。

前半部分の識別力が特に強い場合

前半部分が造語や独創的なブランド名である場合には、その部分が需要者の注意を引き、要部と評価される可能性があります。

この事件から分かること

この事件が示しているのは、識別力が弱い語同士を組み合わせた商標では、一部だけを抜き出して類否判断することは容易ではないということです。

これまで紹介した「DELTA FITNESS GYM 24H」事件では、「FITNESS GYM 24H」が説明的表示にすぎず、「DELTA」が要部とされました。

一方、本件では、「スタイリング」自体も識別力が強いとは評価されませんでした。

その結果、「スタイリングシリーズ」全体が不可分一体の商標として認識され、「スタイリング」だけを抽出することは否定されています。

同じ結合商標であっても、各構成部分の識別力によって結論が大きく変わることが分かる事例です。

次の判断に進むために見るべきポイント

結合商標を検討するときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。

まず、各構成部分の識別力を確認する

どの部分が商品や役務の内容を説明する語なのか、どの部分がブランドとして機能するのかを整理します。

次に、一部だけが需要者の注意を引く構成になっていないか確認する

文字の大きさや配置、著名性などから、要部が認められる事情がないかを検討します。

さらに、商標全体が自然に一体として把握されるかを見る

無理なく一連に称呼でき、まとまりよく表示されている場合には、一体不可分と判断される可能性があります。

最後に、全体観察と要部観察のどちらが実際の取引に即しているか検討する

商標の類否判断では、形式的な文字数ではなく、需要者が実際にどのように認識するかが重視されます。

まとめ

「スタイリング」と「シリーズ」のように、いずれも識別力が強いとはいえない語同士が自然に結合している場合には、全体が不可分一体の商標として認識され、一部だけを取り出して先行商標と比較することはできないと判断されることがあります。

「スタイリングシリーズ」事件では、

  • 商標全体がまとまりよく構成されていた
  • 「シリーズ」だけでなく「スタイリング」も識別力が強い語ではなかった
  • 識別力の弱い語同士の結合は全体で認識されやすいと判断された
  • 「スタイリング」部分だけが独立して認識される事情もなかった
  • 「スタイリング」のみを抽出した原査定は妥当ではないとされた

ことから、引用商標とは類似しないと判断されました。

この事例は、結合商標の類否判断では、単純に説明的な語を除けばよいわけではなく、各構成部分の識別力や商標全体の印象を総合的に検討する必要があることを示しています。

サムライツ知財事務所では、結合商標の要部認定や類否判断を踏まえた商標調査・出願戦略のご相談も承っています。
「この名称は一体として登録できそうか」「一部が先行商標と重なっているが問題ないか」といった段階でも、早めに検討することで、より適切なブランド戦略につなげることができます。