結論:「DELTA FITNESS GYM 24H」のように、後半が役務内容を示す説明的な語にすぎない場合、語頭の「DELTA」が要部とされ、先行商標「DELTA」と類似すると判断されることがあります。
今回の「DELTA FITNESS GYM 24H」事件では、本願商標「DELTA FITNESS GYM 24H」と引用商標「デルタ/DELTA」が類似すると判断されました。
ポイントは、本願商標のうち「FITNESS GYM 24H」の部分が、運動施設の提供との関係で役務の質を表すものと認識され、識別力がないか極めて弱いとされた点です。
その結果、語頭の「DELTA」部分が要部として取り出され、引用商標「DELTA」と比較されました。
目次
事案の概要
本願商標は「DELTA FITNESS GYM 24H」(商願2024-52808)です。
引用商標は「デルタ/DELTA」(登録第5276666号)です。
拒絶査定不服審判は、不服2025-14321です。
本願商標の指定役務中には、第41類「運動施設の提供」が含まれていました。
引用商標の指定役務にも、第41類「運動施設の提供,スポーツジムの提供,スポーツジムの提供に関する情報の提供」が含まれていました。
審決では、本願商標は引用商標と類似し、指定役務も同一又は類似するとして、商標法4条1項11号に該当すると判断されています。
理由1 「FITNESS GYM 24H」は役務の質を表すとされた
本願商標は、「DELTA FITNESS GYM 24H」の文字からなります。
このうち、「FITNESS GYM」は、健康維持のための各種運動設備をもつ施設を意味する語です。
また、「24H」は、24時間利用できることを表すものとして使用される語です。
そのため、審決は、本願商標の指定役務中「運動施設の提供」との関係では、「FITNESS GYM 24H」は、
24時間利用できるフィットネスジム
という役務の質を表すものと認識されると判断しました。
つまり、この部分は、需要者にとってサービス内容の説明に近く、自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いとされたわけです。
理由2 語頭の「DELTA」が要部とされた
一方、「DELTA」は、「三角州」「デルタ地帯」などを意味する英語です。
本願商標の中では、視覚上目につきやすい語頭に配置されています。
また、後半の「FITNESS GYM 24H」が説明的である以上、需要者が出所識別標識として注目するのは「DELTA」部分であると判断されました。
そのため、審決は、本願商標について、構成中の「DELTA」部分を要部として取り出し、引用商標と比較することが許されるとしました。
ここが本件の中心です。
単に全体として「DELTA FITNESS GYM 24H」と長い商標であっても、後半がサービス内容を説明するにすぎない場合には、語頭の識別力ある部分だけが要部とされることがあります。
理由3 「DELTA」と引用商標は称呼・観念が同じだった
引用商標は、「デルタ」と「DELTA」を上下二段に横書きした商標です。
引用商標からは、「デルタ」の称呼が生じ、「三角州」「デルタ地帯」ほどの観念が生じます。
本願商標の要部「DELTA」からも、同じく「デルタ」の称呼と「三角州」「デルタ地帯」ほどの観念が生じます。
したがって、本願商標の要部と引用商標は、
- 外観上「DELTA」のつづりを共通にする
- 称呼が「デルタ」で共通する
- 観念も共通する
として、類似すると判断されました。
理由4 「delta+他の語」は常に一体とはいえない
請求人は、「delta」は「delta ray」や「delta wing」のように、他の語と結合して一体的に用いられることがあるため、「DELTA FITNESS GYM 24H」又は「DELTA FITNESS GYM」は一体不可分に把握されると主張しました。
しかし、審決はこの主張を採用しませんでした。
たしかに、「delta+〇〇」という既成語は存在します。
しかし、それだけで本願商標も常に一体不可分と理解されるわけではありません。
本件では、後半の「FITNESS GYM 24H」が運動施設の提供との関係で説明的であり、識別力がないか極めて弱いとされたため、「DELTA」部分が出所識別標識として機能すると判断されました。
つまり、既成語としての結合例があるかどうかよりも、本願商標の指定役務との関係で、後半部分が識別力を持つかどうかが重視されたわけです。
条件1 「〇〇 FITNESS GYM 24H」が類似になりやすい場合
この事件からすると、次のような場合には、後半に説明的な語を付けても、先行商標との類似を回避しにくくなります。
後半部分が役務内容を直接示す場合
「FITNESS GYM」は運動施設そのものを示し、「24H」は24時間利用可能であることを示します。
このような語は、運動施設の提供との関係では識別力が弱くなります。
語頭部分に識別力がある場合
語頭は視覚上も称呼上も印象に残りやすい部分です。
そこに識別力のある語が置かれていると、要部として抽出されやすくなります。
先行商標と語頭部分が一致する場合
本件では、本願商標の語頭「DELTA」が引用商標「DELTA」と一致していました。
この場合、後半に説明語を足しても、全体として類似と判断されやすくなります。
指定役務が同一又は近い場合
本件では、双方の指定役務に「運動施設の提供」やスポーツジム関連役務が含まれていました。
役務が近いほど、共通する要部による混同のおそれは強く見られます。
条件2 逆に非類似の余地がある場合
もっとも、「〇〇 FITNESS GYM 24H」が常に「〇〇」と類似になるわけではありません。
全体が一体の造語として認識される場合
各語が結合して、特定の観念や独自のブランド名として一体的に理解される場合には、要部抽出が否定される余地があります。
後半部分にも識別力がある場合
後半部分が単なる役務内容の説明ではなく、独自性のある語や造語であれば、全体として区別される可能性があります。
語頭部分が弱い場合
語頭部分自体が記述的又はありふれた語である場合には、そこだけを要部とすることが適切でないこともあります。
指定役務が遠い場合
商標が似ていても、指定役務が非類似であれば、商標法4条1項11号には該当しません。
ただし、フィットネス関連の役務同士では、役務類似が認められやすくなります。
この事件から分かること
この事件が示しているのは、説明的な語を後ろに足しても、先行商標との距離を十分に取れないことがあるということです。
「DELTA FITNESS GYM 24H」は、全体としては長い商標です。
しかし、運動施設の提供との関係では、「FITNESS GYM 24H」はサービス内容の説明に近い表示です。
そのため、需要者が出所識別標識として注目するのは「DELTA」部分とされ、引用商標「デルタ/DELTA」と類似すると判断されました。
これは、「〇〇ジム」「〇〇フィットネス」「〇〇24H」のようなネーミングを考えるうえで、非常に実務的な示唆があります。
次の判断に進むために見るべきポイント
フィットネスジムや店舗型サービスの名称を検討するときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
まず、説明的な部分を除いた要部を確認する
「FITNESS」「GYM」「24H」「STUDIO」「CLUB」などは、役務内容を示す語として弱く見られることがあります。
それらを除いたときに何が残るかを見ます。
次に、その要部と同じ先行商標がないか確認する
全体名だけで検索するのではなく、語頭や識別力のある部分だけでも調査する必要があります。
さらに、指定役務が近いかを見る
運動施設、スポーツジム、トレーニング施設、フィットネスクラブなどは、近い役務として扱われやすいです。
最後に、全体として一体的なブランド名に見えるか検討する
説明語を足しただけなのか、それとも全体で独自の観念や語感を持つのかを確認します。
まとめ
「DELTA FITNESS GYM 24H」のように、後半が役務内容を示す説明的な語にすぎない場合、語頭の「DELTA」が要部とされ、先行商標「DELTA」と類似すると判断されることがあります。
「DELTA FITNESS GYM 24H」事件では、
- 「FITNESS GYM」はフィットネスジムを意味する
- 「24H」は24時間利用できることを示す
- これらは「運動施設の提供」との関係で識別力がないか極めて弱い
- 語頭の「DELTA」が要部として抽出された
- 引用商標「デルタ/DELTA」と称呼・観念が共通した
- 指定役務も同一又は類似だった
ことから、商標法4条1項11号に該当すると判断されました。
この事例は、店舗名やサービス名を作る際に、説明的な語を足すだけでは先行商標との類似リスクを避けられないことを示しています。
出願前には、全体名だけでなく、要部となり得る語を切り出して先行商標を確認することが重要です。
サムライツ知財事務所では、フィットネスジムや店舗型サービスの名称について、要部認定を踏まえた先行商標調査や出願戦略のご相談も承っています。
問い合わせる前に比較したい、比較したうえで名称変更や出願方針を検討したいという段階でも、早めに整理しておくと次の判断に進みやすくなります。
