「〇〇のチカラ(力)」商標は登録されづらい!品質・効能を表す表現と判断される可能性(「炭のチカラ」事件)

「〇〇のチカラ(力)」商標は登録されづらい!品質・効能を表す表現と判断される可能性(「炭のチカラ」事件)

結論:「〇〇のチカラ(力)」という商標は、その商品に含まれる成分や素材の効能・効果を表すものと理解されやすく、商標法3条1項3号の「品質表示」に該当して登録が認められにくい傾向があります。

今回の「炭のチカラ」事件では、本願商標「炭のチカラ」が、商品の品質や効能を表示するにすぎないとして登録を認められませんでした。

ポイントは、「炭のチカラ」という表現が、需要者に「炭の効力・効果を利用した商品」という意味を直ちに認識させると判断された点です。

事案の概要

本願商標は「炭のチカラ」(商願2024-108160号)です。

指定商品は、第3類の「炭を含むせっけん類、炭を含む入れ歯洗浄剤、炭を含む歯磨き、炭を含む化粧品」です。

拒絶査定不服審判は、不服2025-016897です。

審決では、本願商標は商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法3条1項3号に該当すると判断されました。

理由1 「炭のチカラ」は「炭の効能」を意味すると理解される

審決は、「炭」「の」「チカラ」という各語の意味から検討しています。

「炭」は木を焼いてできた炭を意味し、「チカラ」は「力」の片仮名表記であり、「ききめ」「効能」といった意味を持つ言葉です。

そのため、「炭のチカラ」という全体からは、

炭のききめ・効能・効果

という意味合いが容易に認識されると判断しました。

さらに、炭には汚れや臭いを吸着する効果が一般に知られており、その効力を利用した商品も多数流通しています。

そのような取引実情の中では、「炭のチカラ」と表示されれば、需要者はブランド名ではなく、

炭の効能を活かした商品

と理解するにすぎないと判断されました。

理由2 「チカラ」の片仮名表記でも識別力は生まれない

請求人は、「チカラ」を漢字ではなく片仮名で表記したことで独自性があると主張しました。

しかし、この主張は採用されませんでした。

審決は、「チカラ」は「力」を片仮名表記したものと自然に理解されると指摘しています。

また、市場では、

  • 炭の力
  • 炭のちから
  • 炭のチカラ

といった表記が実際に使用されていることも認定されました。

つまり、漢字・平仮名・片仮名という表記の違いだけでは、需要者に特別な印象を与えるものではなく、依然として「炭の効能」を表す表示と受け取られるという判断です。

理由3 比喩的な意味があっても品質表示性は否定されない

請求人は、「炭のチカラ」からは「炭の能力」「炭の実力」といった比喩的なニュアンスも想起されるため、品質表示ではないと主張しました。

しかし、審決はこれも退けています。

商標法3条1項3号の趣旨は、商品の品質や効能を表す表示について、誰もが自由に使用できるようにすることにあります。

そのため、多少抽象的な意味合いや比喩的なニュアンスが含まれていたとしても、取引の実情から見て需要者が商品の品質や効能を表示したものと理解するのであれば、品質表示に該当すると判断されます。

本件では、炭の効力を訴求する商品が多数存在し、「炭の力」「炭のチカラ」といった表現も広く使われていることから、品質表示性が認められました。

理由4 取引実情が重視された

審決では、単に辞書的意味だけではなく、市場で実際にどのような表示が使われているかも重視されています。

炭を利用した化粧品や歯磨きなどの分野では、炭の吸着力や洗浄効果をアピールする商品が多数存在しています。

そのため、「炭のチカラ」という表示は、ブランド名というより、

炭が持つ効能を説明するキャッチフレーズ

として理解されるのが自然と判断されました。

商標法3条1項3号の判断では、このような実際の取引状況が重要な要素になります。

条件1 「〇〇のチカラ(力)」が登録されにくい場合

この事件からすると、次のような場合には登録が認められにくくなります。

素材や成分名がそのまま入っている場合

「炭」「塩」「お米」「ルテイン」「グルコサミン」など、商品に含まれる素材や成分名がそのまま用いられている場合です。

「チカラ」「力」が効能や効果を意味すると理解される場合

需要者が「〇〇の効力」「〇〇の働き」と理解する場合には、品質表示と評価されやすくなります。

市場で同様の表現が広く使われている場合

同業他社が効能表示として同様の表現を使用している実情があると、独占を認めるべきではないと判断されやすくなります。

商品分野との関係で効能表示になっている場合

炭入り化粧品に「炭のチカラ」と表示されれば、炭の効能を示す表示と理解されやすくなります。

条件2 逆に登録の余地がある場合

もっとも、「〇〇のチカラ」が常に登録できないわけではありません。

全体として独創的な造語になっている場合

各語が結合して新たな観念を生じ、品質表示とは受け取られない場合には登録の余地があります。

「〇〇」が品質や成分を示さない場合

前半部分が素材名や効能を示す語ではなく、ブランド名や造語であれば識別力が認められる可能性があります。

商品との関係で意味が直ちに理解されない場合

指定商品との関係で効能や品質表示として認識されない場合には、3条1項3号に該当しない可能性があります。

使用実績によって識別力を獲得した場合

長年の使用により需要者が特定事業者の商品として認識するようになれば、商標法3条2項による登録が認められる余地があります。

この事件から分かること

この事件が示しているのは、「〇〇のチカラ(力)」という表現自体が、商品の効能を説明するキャッチコピーとして受け取られやすいということです。

特に、素材や成分の効力を訴求する商品分野では、ブランド名としてではなく品質表示として理解される可能性が高くなります。

実際に、近年も同様の理由で、

といった商標が拒絶されています。

「〇〇のチカラ」というネーミングは親しみやすい反面、識別力の面では厳しい判断を受けやすい傾向があるといえるでしょう。

次の判断に進むために見るべきポイント

商品名を検討するときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。

まず、「〇〇」が素材や成分名になっていないか確認する

素材名そのものを用いると、品質表示と判断される可能性が高まります。

次に、「チカラ」が効能表示として理解されないか確認する

需要者が「効き目」「効果」と受け取る表現であれば注意が必要です。

さらに、市場で同じような表現が使われていないか調査する

取引実情として一般的に使用されている表現であれば、登録は難しくなります。

最後に、全体としてブランド名として機能するか検討する

説明的な表現ではなく、独自のブランドとして認識される構成になっているかを確認することが重要です。

まとめ

「〇〇のチカラ(力)」という商標は、その商品に含まれる成分や素材の効能・効果を表すものと理解されやすく、商標法3条1項3号の「品質表示」に該当して登録が認められにくい傾向があります。

「炭のチカラ」事件では、

  • 「炭のチカラ」は「炭の効能・効果」を意味すると理解された
  • 炭の効力を利用した商品が市場で広く流通していた
  • 「炭の力」「炭のちから」「炭のチカラ」といった表現も一般に使用されていた
  • 「チカラ」を片仮名にしても識別力は生じないと判断された
  • 比喩的な意味があり得ても品質表示性は否定されなかった

ことから、商標法3条1項3号に該当すると判断されました。

この事例は、素材や成分名に「〇〇のチカラ(力)」を組み合わせたネーミングは、商標として独占しにくいことを示しています。

サムライツ知財事務所では、商品名やブランド名について、識別力や品質表示該当性を踏まえた商標調査・出願戦略のご相談も承っています。
「このネーミングは登録できそうか」「別案も含めて検討したい」という段階でも、早めに整理しておくことで、ブランド展開をスムーズに進めやすくなります。