FC契約解除後の商標使用は許されない(「明光義塾」事件)

FC契約解除後の商標使用は許されない(「明光義塾」事件)

フランチャイズ契約に基づいて使用していた商標は、契約が有効に解除されれば、原則として使い続けることはできません。

「明光義塾」事件では、フランチャイズ契約の解除後も「明光義塾」などの標章を使用して学習塾の運営を続けたことについて、商標権侵害が認められました。

さらに、「meiko」を含むドメイン名の使用や、現在も明光義塾のフランチャイズ傘下にあるかのような表示についても、不正競争防止法上の問題が認められています。

本件は、FC契約が終了した後に、看板、ウェブサイト、商号、ドメイン名などをどのように処理すべきかを考える上で参考になる事例です。

事案の概要

原告は、「明光義塾」の名称で個別指導型の学習塾を全国展開する株式会社明光ネットワークジャパンです。

原告は、「明光義塾」「個別指導」などについて複数の商標権を保有していました。

被告側の会社は、原告とのフランチャイズ契約に基づき、九州地方などにおけるエリアフランチャイザー又はフランチャイジーとして、「明光義塾」の名称を使用して学習塾を運営していました。

しかし、原告は、ロイヤルティの過少申告や生徒数の不正確な報告、競業避止義務違反など、複数の契約違反があったとしてFC契約を解除しました。

被告側は解除の有効性を争いましたが、解除後も「明光義塾」などの標章を表示したまま学習塾の運営を続けていました。

そこで原告は、商標権侵害、不正競争防止法違反、契約違反などを理由として、標章の使用差止め、看板やウェブサイトからの表示の抹消、ドメイン名の抹消、損害賠償などを求めました。

第一審は原告の請求を一部認め(令和3(ワ)18742号)、被告側が控訴しました。

知財高裁は、令和8年5月14日、被告側の控訴を棄却しました(令和7(ネ)10053号)。

理由1 FC契約の解除が有効と判断された

本件で最初に問題となるのは、そもそもFC契約の解除が有効であったかという点です。

フランチャイジーが商標を使用できるのは、通常、FC契約によって商標の使用を許諾されているためです。

そのため、契約が存続していれば、商標権者の許諾に基づく適法な使用となります。

一方、契約が有効に解除されれば、その使用許諾も終了します。

本件では、被告側が解除の有効性を争い、FC契約上の地位が現在も存在することの確認を求めました。

しかし、裁判所は、ロイヤルティの過少申告、生徒数の不正確な報告、競業避止義務違反、支援システム費の不適切な使用、守秘義務違反などを踏まえ、契約解除を有効と判断しました。

したがって、被告側は、解除後に「明光義塾」などの商標を使用する権限を失ったことになります。

理由2 解除後も看板やウェブサイトで標章を使用していた

被告側は、契約解除後も、学習塾の運営に関して「明光義塾」などを含む標章を使用していました。

使用されていたものには、「個別指導 明光義塾!」などの表示も含まれていました。

裁判所は、これらの標章の使用について、原告の登録商標に係る商標権を侵害すると判断しました。

その結果、被告側に対して、標章の使用差止めだけでなく、次のような措置も認められています。

・教室の正面看板や袖看板などからの標章の抹消
・販促物、広告、価格表、取引書類などの廃棄
・ウェブサイトその他の営業表示物件からの標章の抹消
・標章を付した物品を用いた役務提供の差止め

特に、ウェブサイト上の表示について、知財高裁は、将来も学習塾の広告や取引情報に使用される可能性があるとして、その抹消を「侵害の予防に必要な行為」と認めました。

単に新たな使用をやめるだけではなく、既存の看板やウェブサイトに残っている表示も取り除く必要があるということです。

理由3 「meiko」を含むドメイン名も問題となった

被告側は、「v-meiko.co.jp」というドメイン名を保有し、そのドメイン名を使用したウェブサイトを運営していました。

裁判所は、このドメイン名について、不正競争防止法2条1項19号に該当すると判断しました。

同号は、不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的で、他人の商品等表示と同一又は類似するドメイン名を取得、保有又は使用する行為を規制しています。

本件では、「meiko」の文字を含むドメイン名について、取得、保有及び使用の差止めが認められました。

さらに、ドメイン名の登録抹消申請手続も命じられています。

FC契約終了後は、ウェブサイトからロゴを消すだけでは足りません。

ブランド名を含むドメイン名自体についても、移転、廃止又は抹消が必要になることがあります。

理由4 現在もFC傘下にあるかのような表示も不競法違反となった

被告側のウェブサイトなどでは、運営する学習塾が、現在も原告の「明光義塾」ブランドのフランチャイズ傘下にあるかのような表示が行われていました。

裁判所は、このような表示について、不正競争防止法2条1項20号に該当すると判断しました。

同号は、商品や役務、その広告などに、その原産地、品質、内容その他の事項について誤認させるような表示をする行為を規制するものです。

FC契約が終了しているにもかかわらず、従前と同じブランドの加盟教室であるかのように表示すれば、保護者や生徒は、本部との関係が現在も続いていると誤解する可能性があります。

そのため、本件では、営業や広告などにおける誤認表示の差止めと、ウェブサイト上の表示の削除が認められました。

商号については会社法8条が適用された

被告側の会社は、契約解除後も、

「株式会社明光ネットワーク九州」
「株式会社明光義塾九州」

という商号を使用していました。

知財高裁は、この商号の問題については、会社法8条に基づいて使用差止めなどを認めました。

同条は、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用することを禁止しています。

裁判所は、FC契約が終了した後も「明光義塾」などを含む商号を使い、明光義塾の運営を続けていた事情から、不正な活動を行う積極的な意思があったと判断しました。

その結果、商号の使用差止めに加え、商号変更登記の抹消登記手続も認められています。

この事件から分かること

本件から分かるのは、FC契約終了時のブランド使用の処理は、看板を外すだけでは終わらないということです。

確認すべき対象は広範囲に及びます。

例えば、

・店舗や教室の看板
・ウェブサイトやSNS
・チラシ、パンフレット、申込書
・教材、文房具、販促物
・会社の商号
・ドメイン名
・既存顧客への案内やメール
・FC加盟中であることを示す表現

などです。

これらのうち一部でも旧ブランドの表示が残れば、商標権侵害や不正競争防止法違反が問題となる可能性があります。

また、「長年使ってきた名称だから」「自社の地域では広く知られているから」という事情があっても、それだけで契約終了後の使用が正当化されるわけではありません。

商標を使用できる根拠がFC契約にある以上、契約が有効に終了すれば、原則として使用権限も終了します。

フランチャイザー側にとっては、契約書に、終了後の商標使用停止、看板の撤去、ドメイン名の処理、商号変更、顧客への告知方法などを具体的に定めておくことが重要です。

フランチャイジー側にとっても、契約終了後のブランド変更に必要な期間、費用、ウェブサイトやドメイン名の処理方法を事前に確認しておく必要があります。

まとめ

「明光義塾」事件では、FC契約の解除が有効であることを前提として、解除後も「明光義塾」などの標章を使用した行為が商標権侵害と判断されました。

また、「meiko」を含むドメイン名の保有・使用や、現在も明光義塾のFC傘下にあるかのような表示については、不正競争防止法に基づく差止めなどが認められました。

さらに、「明光義塾」などを含む商号についても、会社法8条に基づいて使用差止めと登記の抹消手続が認められています。

FC契約が終了したときは、商標、商号、看板、ウェブサイト、ドメイン名などを一体として整理しなければなりません。

契約終了後も従前のブランド表示を残したまま営業を続けると、商標権侵害だけでなく、不正競争防止法や会社法上の責任まで問題となる可能性があります。

サムライツ知財事務所では、フランチャイズ契約に伴う商標の使用許諾、契約終了後のブランド管理、商標権侵害への対応などのご相談を承っています。

FC本部として商標管理の体制を整えたい場合や、契約終了後の商標・商号・ドメイン名の処理にお悩みの場合は、ご相談ください。