国旗損壊罪の施行と、中小企業が知っておきたい「国旗の使い方」——マーケティング・商標の観点から整理

国旗損壊罪の施行と、中小企業が知っておきたい「国旗の使い方」——マーケティング・商標の観点から整理

日本の国旗を対象とした「国旗損壊罪」が施行されました。ニュースでは処罰の対象範囲や表現の自由をめぐる議論が中心に取り上げられていますが、中小企業の経営者の方から実務で気になるのはむしろ、「うちのパッケージや広告で国旗を使っても大丈夫なのか?」というところではないかと思います。

このタイミングで、事業者にとっての「国旗の使い方」を、マーケティング・商標の観点から整理してみます。

国旗損壊罪、何が処罰されるのか

新しい法律(正式名称は「国旗の損壊等の処罰に関する法律」)で処罰されるのは、「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法・状態」で公然と国旗を損壊・除去・汚損する行為です。罰則は2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金とされています。

一方、以下のようなものは対象外と説明されています。

  • お子さまランチの旗
  • 絵画の一部として描かれた旗
  • アニメ・漫画・ゲーム・生成AIによる創作物
  • 実写映画の損壊シーン
  • 損壊映像の報道・リポスト

法案の審議段階では「処罰対象の定義が曖昧で、表現の自由を萎縮させるおそれがある」との指摘もありました。境界線に不明確さが残っている点は、事業者としても意識しておきたいところです。

日常のマーケティング利用は基本的に対象外

まず結論から言うと、パッケージや広告で日章旗をデザインとして使う、キャンペーンで国旗モチーフを使う——といった日常的なマーケティング利用は、この法律の対象ではありません。処罰の対象は、あくまで「著しく不快・嫌悪の情を催させる方法」での損壊等の行為に限定されています。

とはいえ、SNSキャンペーンや広告のクリエイティブによっては、「見る人によって印象が大きく変わる」ものもあります。広告として国旗を扱う際には、「外形的にどう見えるか」を一度立ち止まって確認しておくと安心です。

生成AI創作物は対象外、でも別のリスクは残る

商業実務で気にしておきたいのが、生成AI創作物の扱いです。今回の法律では、生成AIで作成した動画等は処罰対象外と整理されました。表現の自由や創作活動への配慮からの整理と説明されています。

ただし、これは「AIで作ったものなら何でもOK」を意味しません。刑事罰は避けられても、SNSでの炎上、企業への信用毀損、内容によっては名誉毀損など、別の法的・実務的なリスクは残ります。

中小企業がAI生成物を発信する場面では、「法的にセーフか」だけでなく「社会的にどう受け止められるか」まで含めて判断したいところです。

ちなみに、弊所は知的財産法を専門とする事務所ですので、「国旗損壊罪(国旗の損壊等の処罰に関する法律)」に関するお問い合わせには応じることができません。何卒ご了承ください。ご不明な場合は、下記のサイトを参考に、弁護士の先生にご相談いただければと思います。

※参考:「国旗の損壊等の処罰に関する法律 Q&A」(法務省)
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00243.html

商標・ブランドの観点:「使用」と「登録」は別の話

ここからは、商標の専門家として補足しておきたいポイントです。

日章旗そのものの”使用”を規制する法律は、実はありません。

商品のパッケージ、店頭ディスプレイ、広告、Webサイトなどで日章旗のモチーフを使うこと自体は、原則として自由です。国旗損壊罪の対象にも当たりません。

一方、参考として押さえておきたいのが、外国国旗の扱いは日本とは違うという点です。

不正競争防止法16条により、経済産業省令で定められた外国の国旗については、原則としてその国の政府の許可なく”商標として使用する”ことが禁止されています。これは日本が批准しているパリ条約(6条の3)を国内で実現するための規定です。海外国旗をパッケージやロゴに使う商品を展開する場合には、こちらの規制のほうが気をつけるべきポイントになります。

そして、日本の国旗については”使用”は自由ですが、“登録”は別の話です。

商標法4条1項1号により、日章旗と同一・類似の商標や、日章旗を含む商標は、そもそも商標登録することができません。

つまり、「日章旗をデザイン要素として使うことはできるが、その部分を独占するかたちで登録し、他社に使わせないようにすることはできない」ということです。ロゴマークの中に日章旗のモチーフを組み込みたい、というご相談を受けることがありますが、この点は最初の設計段階で押さえておく必要があります。

まとめ:実務目線での整理

今回の国旗損壊罪の施行にあたって、中小企業として押さえておきたいポイントを整理すると、次のようになります。

  • 日常のマーケティングで国旗を使うこと自体は、国旗損壊罪の対象ではない
  • ただしSNSや広告での扱いは、「外形的にどう見えるか」を一度確認しておく
  • 生成AI創作物は対象外だが、炎上・信用毀損など別のリスクは残る
  • 日章旗の”使用”を規制する法律はなく、マーケティングでは自由に使える
  • ただし日章旗と同一・類似の商標、日章旗を含む商標は登録できない(商標法4条1項1号)
  • 外国国旗については、不競法16条により無許可の商標としての使用が原則禁止で、こちらのほうが規制は厳しい

ロゴやブランド、パッケージの設計は、後から作り直すコストが大きい領域です。「これって使っていいのかな」「登録できるのかな」と迷う場面があれば、早い段階で一度確認しておくと、安心してブランドを育てていけるのではないかと思います。