「Tibetan Tiger」は品質表示?業界でデザイン名として使われている実情から登録が認められなかった事例(「Tibetan Tiger」事件)

「Tibetan Tiger」は品質表示?業界でデザイン名として使われている実情から登録が認められなかった事例(「Tibetan Tiger」事件)

商標が「商品の品質を表す言葉」に当たるかどうかは、辞書の意味だけで判断されるわけではありません。

実際の取引の場で、その言葉がどのように使われているかが重要になります。

今回は、「Tibetan Tiger(チベタンタイガー)」という商標について、知的財産高等裁判所が商標登録を認めなかった事例をご紹介します。

事件の概要

出願された商標は、

です(商願2021-102624号)。

指定商品は、

  • クッション
  • クッションカバー
  • じゅうたん
  • 敷物
  • マット
  • ラグ
  • ヨガ用マット
  • 織物製壁紙
  • 壁掛け

などでした。

これに対し特許庁は、

「Tibetan Tiger」は、取引者・需要者に「チベット風の虎柄」程度の意味合いを認識させるものであり、商品のデザインや品質を表示するにすぎないとして、商標法第3条第1項第3号に該当すると判断しました。

さらに、仮に虎柄ではない商品に使用された場合には、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第16号にも該当すると判断し、登録を拒絶しました(不服2024-19755号)。

出願人はこの判断を不服として知財高裁に訴えました(令和7(行ケ)10099号)。

裁判所の判断

知財高裁は、特許庁の判断を支持し、出願人の請求を棄却しました。

裁判所は、「Tibetan」が「チベットの」、「Tiger」が「虎」を意味することに加え、提出された多数の証拠から、
「Tibetan Tiger」がラグやカーペットなどの分野で、チベット風の虎柄を表す語として実際に使用されている
という取引の実情を認定しました。

判決では、国内外の販売サイトやブランドなどにおいて、

  • Tibetan Tiger Rug
  • Tibetan Tiger Mat

などの表示が、特定ブランド名ではなく商品の柄やデザインを示す名称として使用されている例が多数挙げられています。

そのため、「Tibetan Tiger」の文字をラグやクッションなどに使用した場合、需要者はブランド名ではなく、
「チベット風の虎柄の商品」
という品質・デザインを表示したものと理解すると判断しました。

したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとされました。

また、虎柄ではない商品について使用した場合には、
「チベット風の虎柄の商品である」
と誤認されるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号にも該当すると判断されています。

この事件から分かること

品質表示かどうかは「取引実情」が非常に重要

商標法第3条第1項第3号では、
その言葉が商品の品質や特徴を表示するものとして一般に認識されるかがポイントになります。

その判断では、

  • 辞書に載っている意味
  • 語句の組み合わせ
  • 実際の業界での使用状況

などが総合的に考慮されます。

本件では、「Tibetan Tiger」という語そのものが辞書に載っているわけではありません。

しかし、ラグなどの業界では、商品の柄やデザインを表す名称として広く使用されている実情が認定されたことが決め手となりました。

外国語だから識別力が認められるとは限らない

外国語を組み合わせた商標であっても、
日本の需要者が商品の特徴を表す言葉として理解するような実情があれば、品質表示と判断されることがあります。

近年ではインターネット通販の普及により、海外の商品名やデザイン名も容易に国内で流通しています。

そのため、外国語であることだけを理由に識別力が認められるケースは少なくなっています。

商標法第4条第1項第16号にも注意

品質表示に該当する商標では、指定商品によっては商標法第4条第1項第16号も問題になります。

例えば、本件のように、
「Tibetan Tiger」が「チベット風の虎柄」を意味すると理解されるのであれば、
虎柄ではない商品に使用した場合、
需要者は虎柄の商品だと誤認する可能性があります。

このような場合には、商標法第3条第1項第3号だけでなく、第4条第1項第16号にも該当する可能性があります。

まとめ

「Tibetan Tiger」事件では、
辞書的な意味だけではなく、実際の市場における使用実態が重視されました。

ラグやクッションなどの分野で「チベット風の虎柄」を示す語として広く使われていたことから、品質表示にすぎないと判断され、商標登録は認められませんでした。

商標の識別力は、言葉そのものだけではなく、その業界でどのように使われているかによって大きく左右されます。

外国語だから安心、造語だから登録できるとは限らず、出願前には取引実情まで踏まえた検討が重要といえるでしょう。


商標登録をご検討中の方へ

商標が登録できるかどうかは、辞書の意味だけでは判断できません。

業界での使用実態や過去の審決・裁判例によって結論が変わることも少なくありません。

サムライツ知財事務所では、

  • 商標登録の可能性調査
  • 出願前のネーミングチェック
  • 拒絶理由通知への対応
  • 拒絶査定不服審判や審決取消訴訟を見据えたサポート

まで幅広く対応しております。

「この商標は登録できそうか知りたい」「拒絶理由通知への対応で悩んでいる」という方は、お気軽にサムライツ知財事務所までご相談ください。