周知・著名な「リニア」の文字を含む商標は登録できない?(「LINEAREXPRESS」事件)

周知・著名な「リニア」の文字を含む商標は登録できない?(「LINEAREXPRESS」事件)

「リニア」という言葉は、「リニアモーターカー」の略称として広く知られています。

では、「LINEAREXPRESS(リニアエクスプレス)」という商標を衣類などに使用しようとした場合、登録は認められるのでしょうか。

今回は、知財高裁が「リニア」の著名性を理由に商標登録を認めなかった「LINEAREXPRESS」事件をご紹介します。


事件の概要

本件で問題となったのは、

という商標です(商願2023-33926号)。

指定商品は第25類の「被服、帽子、履物」などでした。

これに対し、特許庁は、JR東海が計画・建設を進める

「リニア中央新幹線」

との関係で、商標法第4条第1項第15号(混同のおそれ)に該当するとして拒絶査定を行いました。

出願人は拒絶査定不服審判を請求しました(不服2024-9670号)が請求は成り立たず、その後、知財高裁へ審決取消訴訟を提起しました。

しかし、知財高裁も特許庁の判断を支持しました(令和7年(行ケ)第10119号)。


裁判所の判断

裁判所は、まず、
「リニア中央新幹線」について、

全国新幹線鉄道整備法に基づく国家的プロジェクトとして長年報道され、テレビ・新聞・インターネット等を通じて広く知られていることから、

「リニア」の文字自体が、

JR東海のリニア中央新幹線を想起・連想させるほど周知・著名になっている

と認定しました。

その上で、本願商標は、
「LINEAREXPRESS」及び「リニアエクスプレス」
から構成されており、

需要者はその中でも特に

「リニア」

の部分に着目すると判断しました。

そして、被服などの商品にこの商標が使用された場合でも、
JR東海やその関連会社の商品、あるいは公式ライセンス商品であるかのように誤認するおそれがあるとして、

商標法第4条第1項第15号(混同のおそれ)

に該当すると判断しました。


「鉄道会社が服を売っていない」ことは関係ない

興味深いのは、JR東海は本来、鉄道事業者であり、
衣類メーカーではありません。

それでも裁判所は、
近年では企業がライセンスビジネスを行うことが一般的であり、
鉄道会社の名称やブランドを用いたアパレル商品や雑貨が数多く販売されている実情を踏まえ、

需要者は
「JR東海の許諾商品なのではないか」
と考える可能性があると判断しました。

つまり、商品分野が異なっていても、
著名ブランドであれば混同が生じ得るということです。


この事件から分かること

商標法第4条第1項第15号は、
他人の周知・著名な商標と混同するおそれがある商標の登録を認めない規定です。

この混同とは、
「同じ会社の商品」
と誤解する場合だけではありません。

近年では、

  • ライセンス契約
  • グループ会社
  • コラボ商品

などが一般化しているため、
「何らかの関係がある会社の商品」
と思われる場合も混同に当たります。

そのため、商品・サービスが異なるから登録できるとは限りません。

特に、全国的に知られている名称やブランド名の一部を含む商標については、
著名部分が需要者に強く認識され、
混同のおそれが認められる可能性があります。

企業名や商品名を考える際には、
指定商品・指定役務が異なるから大丈夫と考えるのではなく、
著名なブランドとの関係でも十分な調査を行うことが重要です。


まとめ

本件では、「リニア」という文字が、
JR東海の「リニア中央新幹線」を想起させるほど周知・著名になっていることから、
「LINEAREXPRESS/リニアエクスプレス」は、
衣類などについて使用しても、JR東海との何らかの関係を需要者が想起するおそれがあるとして、登録が認められませんでした。

著名商標は、本来の商品・サービスだけでなく、そのブランドイメージやライセンス展開まで含めて広く保護される場合があります。

新しいブランド名を検討する際は、既存の著名ブランドとの関係にも十分注意したいところです。


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