商標が図形や文字を組み合わせた「結合商標」の場合、商標全体ではなく、一部分だけを取り出して他人の商標と比較することがあります。これを「分離観察」といいます。
もっとも、どのような場合でも分離観察が認められるわけではありません。
今回は、商標全体にまとまりがあると判断され、一部分だけを抜き出した類否判断が否定された事例をご紹介します。
事件の概要
問題となった登録商標はこちらです。
本件商標
「
」
(登録第6880090号)
これに対し、原告が使用していた表示は、
「恐竜検定」
でした。
原告は、「恐竜検定」の文字部分が本件商標の要部であり、自らの表示と類似するとして、商標権侵害に基づく差止めなどを請求しました。
しかし、東京地方裁判所はこの請求を認めませんでした(令和7(ワ)70439号)。
裁判所の判断
裁判所は、本件商標について、
- 上段の「恐竜検定」
- 下段の「一級 恐竜博士」
という2つの部分から構成されているものの、
両者は上下にバランスよく配置され、書体や大きさも統一されており、全体として一つの検定名称・資格名称として理解されると判断しました。
そのため、
「恐竜検定」だけを取り出して商標の類否を判断することは相当ではない
としています。
つまり、
「恐竜検定/一級 恐竜博士」全体で一体不可分の商標
として把握される以上、一部分だけを抽出して比較することはできないという結論です。
「Coco!事件」との違い
以前ご紹介した「Coco!事件」では、
- 犬・猫の図形
- 「Coco!」の文字
が上下に配置されていました。
しかし、この事件では、
- 図形部分と文字部分は意味上のつながりがなく、
- 図形から称呼や観念も生じない
ことから、文字部分だけが独立した識別標識として機能すると判断されました。
その結果、「Coco!」の文字部分だけを抽出して引用商標「COCO」と比較することが認められています。
※参考記事:「図形付き商標でも安心できない?文字部分だけで類似と判断された「Coco!」事件」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/6760/
一方、本件では、
「恐竜検定」と「一級 恐竜博士」が互いに関連し、一つの検定・資格制度を表すものとして自然に理解されるため、商標全体が一体として認識されると判断されました。
同じ結合商標でも、
- 構成要素が独立して識別機能を果たすのか
- それとも全体として一体的に認識されるのか
によって結論が大きく変わることが分かります。
この事件から分かること
商標では、
「一部分だけ似ているから類似になる」とは限りません。
結合商標については、
- デザイン上のまとまり
- 配置
- 書体
- 構成要素同士の意味のつながり
- 全体としてどのように認識されるか
といった事情を総合的に考慮して、商標全体を見るべきか、それとも一部だけを比較すべきかが判断されます。
逆に言えば、
商標をデザインする際に、各要素を有機的に組み合わせて全体として一つのブランドイメージを形成できれば、一部だけを抜き出して類否判断されるリスクを減らせる場合もあります。
もちろん、すべてのケースでそうなるわけではありませんが、結合商標を採用する際には重要な視点といえるでしょう。
まとめ
本件は、
結合商標であっても、全体としてまとまりのあるデザインであれば、一部分だけを抽出して類否判断されない場合がある
ことを示した事例です。
一方で、「Coco!事件」のように、図形と文字が独立して識別機能を有すると判断されれば、文字部分だけを比較対象として類否判断が行われることもあります。
結合商標の類否判断は、商標全体の構成や取引の実情を踏まえて個別具体的に判断されるため、商標の採択や出願に当たっては慎重な検討が必要です。
商標の類否判断でお悩みの方へ
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商標の構成や過去の審決・裁判例を踏まえながら、登録可能性や侵害リスクについて分かりやすくアドバイスいたします。
