知財高裁は、「リッキー」という文字商標と、キャラクター図形に「リッキー」の文字を組み合わせた商標との類否が争われた事件において、両商標は類似すると判断しました(令和7年(行ケ)第10102号)。
キャラクターをブランド展開する企業にとって参考になるだけでなく、「結合商標の要部認定」を考える上でも興味深い判決です。
事案の概要
本願商標は、標準文字による
「リッキー」
という文字商標(商願2023-100400号)でした。
これに対し、引用商標は、キャラクター図形と、その下に「リッキー」の文字を組み合わせた
商標「
」です(登録第6517882号)。
出願人は、
「引用商標はキャラクター全体として認識されるのであり、『リッキー』の文字だけを取り出して比較すべきではない」
と主張しました。
しかし、特許庁は両商標を類似と判断し、拒絶査定を維持しました(拒絶査定不服審判:不服2024-12999号)。
出願人はこれを不服として知財高裁に審決取消訴訟を提起しました(令和7(行ケ)10102号)。
裁判所の判断
知財高裁も、特許庁の判断を支持しました。
裁判所はまず、引用商標について、
- 図形部分
- 「リッキー」の文字部分
は視覚上分離して認識できると判断しました。
さらに、
図形部分は特定の称呼や観念を生じさせるものではなく、我が国で広く知られたキャラクターであるとも認められないため、需要者は文字部分にも独立した出所識別標識としての機能を認識するとしました。
その結果、引用商標については、
「リッキー」の文字部分を抽出して、本願商標と比較することができる
と判断されています。
そして、本願商標と引用商標の文字部分は、
- 外観は同一
- 称呼も「リッキー」で同一
- 観念についても同様
であることから、両商標は類似すると判断されました。
「Coco!事件」との共通点
以前ご紹介した「Coco!事件」では、
- 本願商標:図形+「Coco!」
- 引用商標:文字商標「COCO」
という組み合わせでした。
そして、図形部分と文字部分は不可分ではないとして、本願商標の文字部分だけを抽出して類否判断が行われています。
※参考記事:「図形付き商標でも安心できない?文字部分だけで類似と判断された「Coco!」事件」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/6760/
一方、本件も
- 本願商標:文字商標「リッキー」
- 引用商標:図形+「リッキー」
という構成でしたが、引用商標について文字部分が独立した識別標識として機能すると判断され、やはり文字部分だけを抽出して比較されました。
両事件の共通点から考えると、図形と文字が不可分に結合しているといえるか、文字部分が独立した識別力を有しているかという点が重要になるといえます。
この事件から分かること
本件から分かるのは、
キャラクター図形が付いていても、その名前まで自由に使えるわけではない
ということです。
商標実務では、図形と文字を組み合わせた商標であっても、
- 図形と文字が視覚上分離している
- 図形部分から称呼や観念が生じない
- 文字部分が独立した識別標識として機能している
といった事情があれば、文字部分だけを抽出して他人の商標と比較することがあります。
そのため、
「イラストは違うから大丈夫」
と考えていても、キャラクター名が同一又は類似であれば、商標が類似すると判断される可能性があります。
逆に、キャラクターをブランドとして展開する側にとっては、イラストだけでなく、キャラクター名そのものにも商標として大きな価値があることを示した判決ともいえるでしょう。
キャラクタービジネスでは、イラストの著作権だけでなく、キャラクター名についても商標登録を取得しておくことで、より強固なブランド保護につながります。
まとめ
「リッキー」事件は、
図形付き商標であっても、文字部分が独立した識別標識として機能する場合には、その文字部分を要部として抽出し、文字商標との類否を判断できることを改めて示した事例です。
結合商標では、「図形が付いているから非類似」と単純に判断されるわけではありません。
図形と文字の結び付きの強さや、それぞれが需要者にどのように認識されるかが重要であり、本件はそのことをよく示した判決といえるでしょう。
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