はじめに
商標出願を検討する際、
「同じ文字の商標が登録されていても、図形を付ければ区別できるのではないか」
と考える方は少なくありません。
しかし、実際の商標実務では、図形が付いていたとしても文字部分だけが取り出されて比較されるケースがあります。
今回は、その典型例といえる「Coco!」事件を紹介します。
事件の概要
本願商標:「
」(商願2024-36122)
引用商標1:「COCO」(登録第1094477号)
引用商標2:「COCO」(商願2023-063986)
出願された商標は、犬と猫の顔をモチーフにした図形の下に、「Coco!」という文字を配置したものでした。
これに対し、先に出願されていた「COCO」という商標との類似が問題となりました。
出願人は、
- 図形と文字を一体として使用している
- 図形部分も含めて全体で判断すべき
- 「Coco!」だけを取り出して比較するべきではない
と主張しました。
しかし、拒絶査定不服審判(不服2025-650098)ではこの主張は認められませんでした。
審判所の判断
審判所はまず、本願商標の構成に注目しました。
図形部分と文字部分は、
- 上下に分かれて配置されている
- 重なり合っていない
- 図形と文字という異なる要素から構成されている
という特徴がありました。
そのため、需要者は両者を容易に分離して認識できると判断されました。
さらに、
- 図形部分からは特定の称呼や観念が生じない
- 文字部分からは「ココ」の称呼が生じる
と認定されました。
その結果、
文字部分である「Coco!」が独立して出所識別機能を有する
と判断されたのです。
「Coco!」と「COCO」の比較
審判所は、本願商標の文字部分である「Coco!」と引用商標「COCO」を比較しました。
外観
完全に同一ではありません。
しかし、
- 「COCO」の綴りが共通
- 大文字・小文字の違いのみ
- 感嘆符(!)が付加されているだけ
という事情から、近似した印象を与えると判断されました。
称呼
どちらも「ココ」と称呼されます。
称呼は完全に同一です。
観念
審判所は、「Coco」について「ココヤシ」を意味する英単語であると認定しました。
そのため、「ココヤシ」という観念も共通すると判断しています。
結論
審判所は、
- 外観が近似する
- 称呼が同一
- 観念も共通する
ことから、
「Coco!」と「COCO」は類似商標である
と判断しました。
結果として、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとされ、登録は認められませんでした。
この事件から分かること
この事件で特に注目したいのは、
図形が付いていても文字部分だけで類否判断されることがある
という点です。
商標実務では、
- 図形部分と文字部分が容易に分離できる
- 図形部分から称呼や観念が生じない
- 文字部分が独立して識別機能を有する
と判断される場合、文字部分だけを取り出して比較することがあります。
これは「結合商標」の判断において頻繁に見られる考え方です。
過去の裁判例・審決との共通点
最高裁判例でも、
結合商標については、
- 一部が強く支配的な印象を与える場合
- 他の部分が識別標識として機能しない場合
- 各部分が不可分一体といえない場合
には、一部のみを抽出して類否判断することが認められています。
今回の審決も、その考え方に沿ったものといえるでしょう。
実務上のポイント
商標出願の際、
「図形を付けたから大丈夫」
と考えるのは危険です。
むしろ重要なのは、
- 図形と文字がどの程度一体的に見えるか
- 文字部分だけでも識別標識として機能するか
- 需要者がどこに注目するか
という点です。
図形付き商標であっても、文字部分が先行商標と同じであれば、今回のように類似と判断される可能性があります。
出願前には、図形全体だけでなく、文字部分単独でも先行商標との抵触がないかを確認しておくことが重要です。
まとめ
「Coco!」事件は、
図形付き商標であっても、文字部分が独立して識別機能を有すると判断されれば、その文字部分だけで類否判断される
ことを示した事例です。
商標の類否判断では「商標全体を見る」が原則ですが、常に全体だけで判断されるわけではありません。
図形を追加するだけで先行商標との抵触を回避できるとは限らないことを示す、実務上参考になる審決といえるでしょう。
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初期段階で適切な調査・検討を行うことで、登録可能性を高めることができます。
