「AI○○」というネーミングは、生成AIサービスの普及とともに非常に増えています。
しかし、「AI○○」という商標は、内容によっては商品の品質やサービスの内容を説明しているだけと判断され、商標登録が認められないケースが増えています。
今回は、「AIアナウンサー」の商標が無効と判断された知財高裁判決をご紹介します。
事件の概要
本件で問題となったのは、登録商標
「AIアナウンサー」(登録第6152270号)
です。
この商標は一旦登録されていましたが、その後無効審判が請求され、特許庁は
- 商標法第3条第1項第3号(商品の品質・役務の質を表示する標章)
- 商標法第4条第1項第16号(品質の誤認を生じるおそれ)
の両方に該当するとして登録を無効と判断しました(無効2024-890029号)。
商標権者はこの審決を不服として知財高裁に提訴しましたが、裁判所も特許庁の判断を支持しました(令和7年(行ケ)第10115号)。
裁判所の判断
裁判所は、
- 「AI」は人工知能を意味する一般的な略語
- 「アナウンサー」は職業名として一般的な言葉
であることを前提に、
「AIアナウンサー」
という文字全体から、
AIによるアナウンス機能やAIアナウンサーに関する商品・サービス
程度の意味しか需要者は理解しないと判断しました。
つまり、
サービス名やブランド名ではなく、その内容を説明しているだけ
と評価されたのです。
そのため、自他商品・役務を識別する標識としては機能せず、商標登録を受けることはできないとされました。
「AI〇〇」は近年、拒絶例が急増
実は、この判断は今回だけではありません。
近年はAI関連サービスが急増したことから、
「AI○○」という名称について、
品質・内容を表示するだけ
として識別力が否定される事例が数多く出ています。
例えば、
- 「AI店長」(商願2025-020227号)
- 「AIプライベートバンカー」(商願2025-014331号)
- 「AI上司」(商願2025-013059号)
- 「AI校長」(商願2025-012222号)
- 「AI炎上チェッカー」(商願2025-008682号)
- 「AI ジュエリーデザイナー」(商願2025-006481号)
- 「AI超時短術」(商願2024-138806号)
- 「AIテレアポ」(商願2024-138313号)
- 「AIグランプリ」(商願2024-135791号)
などはいずれも、同様の理由で登録が認められませんでした。
「AI」の文字が後ろにくる「〇〇AI」も同様で、以前当ブログでも「エキスパートAI」事件をご紹介しています。
※参考記事:「「〇〇AI」は説明的?「エキスパートAI」は識別力がないとして登録NG(「エキスパートAI」事件)」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/6714/
この事件から分かること
生成AIブームの影響もあり、
「AI○○」
「○○AI」
というネーミングは非常に多く採用されています。
しかし、後ろ(または前)の言葉が商品・サービスの機能や用途、対象分野などをそのまま表している場合には、
「AIによる○○」「AIの○○」「○○によるAI」「○○のAI」
という意味しか理解されず、商標登録は難しくなる可能性があります。
もちろん、すべての「AI○○」「○○AI」が登録できないわけではありません。
造語性がある場合や、全体として独自のブランド名として認識される場合には登録されるケースもあります。
一方で、
- AIアナウンサー
- エキスパートAI
- コンサルAI
のように、需要者がそのままサービス内容を理解してしまう名称は、識別力がないと判断される可能性が高いでしょう。
AI関連サービスは競争が激しい分野だからこそ、後からブランドを守れなくならないよう、ネーミングの段階で商標登録可能性を検討しておくことが重要です。
まとめ
「AI」という言葉が一般化した現在では、
「AI○○」
「○○AI」
という名称は、単なるサービス内容の説明と判断されやすくなっています。
せっかくサービス名を考えても、商標登録できなければ、他社との差別化やブランド保護が難しくなることがあります。
AIサービスの名称を検討する際は、「分かりやすさ」だけでなく、「商標として守れるか」という視点もぜひ意識してみてください。
サムライツ知財事務所では
AIサービスやSaaS、Webサービスのネーミングについて、
- 商標登録できる可能性があるか
- 他社商標との抵触リスクはないか
- ブランドとして育てやすい名称になっているか
といった観点からアドバイスを行っています。
新サービスの立ち上げ前や名称変更をご検討中の方は、お気軽にサムライツ知財事務所までご相談ください。
