商標権のライセンスにおけるロイヤルティ料率について

商標権のライセンスにおけるロイヤルティ料率について

結論

商標権ライセンスのロイヤルティ料率は、実務上はまず売上高の2〜4%前後を出発点に見ることが多いですが、ブランド力、業種、独占性、販路、最低保証の有無で大きく動きます。
商標権のアンケート調査では全体平均3.0%、中央値2.0%、裁判例ベースでは全体平均4.8%でした。裁判例の方が高めなのは、侵害後の事後的算定であることや、競業関係・悪質性などが上乗せ考慮されるためです。

※参考:「令和6年度 知的財産のライセンスに関する調査報告」(経済産業省)より
https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/guideline/list21.html

理由1 まず見るべき相場感

アンケート調査ベースでは、商標権のロイヤルティ料率は全体平均3.0%、中央値2.0%、最小0.1%、最大60.0%です。平均値は外れ値の影響を受けやすいので、実務感覚としては中央値2.0%もかなり参考になります。

一方、裁判例調査では、商標権関連23件の平均料率は4.8%、最小0.15%、最大20%でした。報告書自体も、裁判例の方がアンケート結果より高いのは、一般的な料率に加えて、訴訟に至った背景事情を加味しているためだと整理しています。

理由2 裁判所は「相場」だけで決めていない

裁判例調査では、商標権の実施料率算定で特に考慮されやすい要素として、商標表示の優位性、一般的な相場、競業関係が上位に挙げられています。加えて、既存ライセンス、利益率、侵害態様の悪質性なども総合考慮されるとまとめられています。

実際の裁判例でも、たとえば4%、3.8%、5%、2%、0.5%などかなり幅があります。たとえば東京地裁令和6年5月22日判決では4%、東京地裁令和6年3月19日判決では飲食関連で3.8%、東京地裁令和6年1月26日判決では5%、大阪地裁令和5年12月14日判決では2%、東京高裁令和4年11月30日判決では0.5%が認定されています。

理由3 業種でかなり差が出る

アンケート調査では、商標分類ごとの平均値にも差があります。たとえば、第25類(被服・履物)は平均3.7%、第30類(加工食品・調味料)は2.0%、第5類(薬剤)は1.3%、第43類(飲食・宿泊)は3.5%でした。なお、第35類は平均15.8%ですが、件数4件・中央値1.6%なので、平均値だけで見るのは危険です。

条件1 通常の任意ライセンスならどう見るか

任意の商標ライセンス契約なら、まずは次のように考えると整理しやすいです。

  • 無名〜中程度のブランドで、非独占、国内限定、商標のみの許諾なら、1〜3%台から入ることが多いです。全体中央値2.0%、平均3.0%が一つの目安になります。
  • 一定のブランド力がある商標で、販促上の貢献が見込めるなら、3〜5%前後は十分射程に入ります。裁判例でも3%、3.8%、4%、5%はよく出るレンジです。
  • 著名ブランド、強い顧客吸引力、独占ライセンス、広い地域、サブライセンス可、品質管理ノウハウ込みなら、さらに上振れし得ます。20%認定の例もありますが、これは悪質性など特殊事情込みで、通常契約の相場としてそのまま使うべきではありません。

条件2 商標だけか、パッケージ付きかで変わる

ライセンス対象が商標だけなのか、ノウハウ、店舗運営、トレードドレス、品質管理、マニュアルまで含むのかで、料率の意味が変わります。
裁判例調査でも、フィットネスジムの事例では第1店舗5%、第2店舗4%、第3店舗以降3%という契約がありましたが、そこでは商標だけでなく、名称使用やノウハウも含まれていたため、裁判所は商標部分だけの価値とは切り分けて見ています。

条件3 侵害訴訟上の「相当使用料率」と、通常契約の料率は同じではない

ここは実務でかなり重要です。
裁判所が商標法38条3項で認定する「侵害を前提とした事後的な相当使用料率」は、通常の平時ライセンスより高くなりやすいです。判決文でも、侵害を前提に合意するなら通常より高くなり得ると述べるものがあります。なので、訴訟の4%をそのまま平時契約の標準料率に置き換えるのは危険です。

実務で次に判断するための見方

料率を決めるときは、次の順番で見ると整理しやすいです。

  1. 基準売上
    総売上か、正味売上か、対象商品売上だけか。
  2. 商標の強さ
    周知性、顧客吸引力、ネーミングの独自性、使用実績。
  3. ライセンスの範囲
    独占か非独占か、地域、期間、EC可否、サブライセンス可否。
  4. 商標以外の付随資産
    ロゴマニュアル、品質管理、販促素材、ノウハウ、店舗運営支援の有無。
  5. 最低保証・前払金
    率を下げて最低保証を置くか、率を上げて最低保証なしにするか。

実務上の目安

かなり単純化すると、商標のみの通常ライセンスなら、まずは2〜4%をたたき台にして、そこからブランド力や独占性で上下させるのが比較的使いやすい考え方です。
根拠としては、アンケート全体平均3.0%・中央値2.0%、裁判例全体平均4.8%、そして実際の裁判例の多くが2〜5%帯に分布していることです。

商標ライセンスは、料率だけで決まるものではありません。
実際には、独占か非独占か、最低保証を置くか、対象商品をどこまで広げるかで、契約全体のバランスが大きく変わります。サムライツ知財事務所では、こうしたロイヤルティ料率の相場感の整理から、契約条件の比較、実際のライセンス条件の設計までご相談いただけます。問い合わせる前に相場を把握したい段階でも、比較したうえで具体的に検討したい段階でも、整理しておくと次の判断に進みやすくなります。