元号の略を並べただけでは登録できない?――「明大昭平令」は識別力なし(「明大昭平令」事件)

元号の略を並べただけでは登録できない?――「明大昭平令」は識別力なし(「明大昭平令」事件)

結論:「明大昭平令」のように、一般に使われている元号の略称を時代順に並べただけの文字列は、需要者に単なる元号表示として認識され、商標としての識別力がないと判断されることがあります。

今回の「明大昭平令」事件では、本願商標「明大昭平令」について、商標法第3条第1項第6号に該当するとして、登録が認められませんでした。

ポイントは、「明大昭平令」という5文字が、独自の造語やブランド名としてではなく、
「明治・大正・昭和・平成・令和」の略を順に並べたもの
として容易に理解されると判断された点です。

出願人が独自の文化的・歴史的な意味を込めていたとしても、その意図を需要者が認識できなければ、識別力の根拠にはならないとされました。

事案の概要

本願商標は、標準文字の「明大昭平令」です(商願2024-7753号)。

審査で拒絶されたため、拒絶査定不服審判を請求したところ、
審判官は、「明」「大」「昭」「平」「令」の各文字が、それぞれ、

  • 明治
  • 大正
  • 昭和
  • 平成
  • 令和

の略として一般に使用されていることを認定しました。

その上で、「明大昭平令」は、各元号の略称を時代順に列記したものと理解されるにすぎず、需要者が特定の事業者の商品・役務を示す商標として認識することはできないと判断したのです。

理由1 各文字が元号の略として一般に使われていた

審決では、「明」「大」「昭」「平」「令」の各文字について、元号の略称として広く一般に使用されていると認定されています。

例えば、役所への提出書類、商品の注文書、サービスの申込書、問診票、会計ソフトなどでは、生年月日を記入する欄に、
「明・大・昭・平・令」
のような表示が用いられることがありますよね。

このような表示に接した人は、それぞれの文字を独立したブランド名として理解するのではなく、
元号を選択するための略号
として認識します。

そのため、「明大昭平令」を一続きに表示しても、元号の略を順に並べたものという理解を超えないと判断されました。

理由2 組み合わせても独自の造語とは認識されなかった

出願人は、「明大昭平令」は単なる略称の列記ではなく、日本の近現代史に連なる5つの時代を象徴する文化的・歴史的意義を反映した造語であると主張しました。

しかし、審決はこの主張を採用しなかったのです。

商標の識別力は、原則として、商標の構成そのものに接した需要者がどのように理解するかによって判断されます。

出願人が、

  • 時代の継承
  • 時代の連続性
  • 文化的なメッセージ

といった意味を込めていたとしても、その創作意図は商標を見ただけでは分かりません。

需要者が実際に認識するのが「元号の略を並べたもの」にとどまるのであれば、出願人による独自の意味づけだけで識別力を認めることはできないとされました。

理由3 使用場面が事務的でも一般性は否定されなかった

出願人は、元号の略称が使われているのは、申込書や問診票などの狭い事務的な場面に限られ、「明大昭平令」が一般的な表現として流通しているわけではないとも主張しました。

しかし、審決は、

  • 役所への提出書類
  • 問診票
  • 商品の注文書
  • 各種サービスの申込書
  • 会計ソフト

など、元号の略称が日常的に使われている実情を重視しました。

使用場面が主に日付の記入欄であったとしても、需要者が「明」「大」「昭」「平」「令」を元号の略として理解することに変わりはありません。

また、商標法第3条第1項第6号では、その文字列が商品・役務の普通名称として広く使われていることまで必ずしも必要ではありません。

商標に接した需要者が、それを出所表示として認識できないのであれば、同号に該当する可能性があります。

商標法第3条第1項第6号とは

商標法第3条第1項第6号は、
需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できない商標
を登録できないとする規定です。

同項第1号から第5号には、

  • 商品・役務の普通名称
  • 慣用商標
  • 品質等を表示する商標
  • ありふれた氏
  • 極めて簡単でありふれた標章

などが個別に定められています。

第6号は、これらに明確には当てはまらなくても、全体として出所識別標識として機能しない商標を対象とする規定です。

本件では、「明大昭平令」が商品の品質や役務の内容を直接表示するというよりも、一般に知られた元号の略称を並べただけであり、特定の事業者を示すものとして認識されないことから、第6号が適用されました。

この事件から分かること

この事件から分かるのは、一般に使われている略称や記号を組み合わせても、それだけで識別力のある造語になるとは限らないということです。

例えば、

  • 年号や元号の略称
  • 曜日の略称
  • 都道府県名の略称
  • 商品分類や規格の略号
  • 業界で一般に用いられる記号

などを順番に並べた商標は、需要者に単なる情報表示や記号の列として理解される可能性があります。

重要なのは、出願人がその文字列にどのような意味を込めたかではありません。

商標に接した需要者が、
「これは特定の事業者の商品・サービスを示すブランドだ」
と認識できるかどうかです。

登録可能性を高めるために考えられる方法

「明大昭平令」のような文字列をブランドとして使用したい場合には、標準文字による出願だけでなく、別の保護方法も検討する余地があります。

特徴的なロゴとして出願する

独自性の高い書体、図形、配置などを組み合わせ、全体として特徴的なロゴにすれば、商標全体に識別力が認められる可能性があります。

ただし、一般的な書体や単純な枠を加えただけでは、識別力が認められないこともあります。

識別力のある語を追加する

一般的な略称だけではなく、独自の造語やブランド名を組み合わせる方法も考えられます。

その場合でも、どの部分が需要者に強く認識されるかを検討する必要があります。

使用による識別力を立証する

長期間かつ広範囲に使用され、特定の事業者の商品・役務を示すものとして全国的に認識されるようになった場合には、商標法第3条第2項による登録が検討できることがあります。

もっとも、十分な売上、広告、使用期間、認知度などの証拠が必要になります。

まとめ

「明大昭平令」は、「明治・大正・昭和・平成・令和」の略称を時代順に並べたものと容易に理解されるため、商標としての識別力がないと判断されました。

本件では、

  • 「明」「大」「昭」「平」「令」が各元号の略として一般に使われている
  • 書類や問診票などで元号の略を並べる表示が広く使用されている
  • 全体を見ても、元号の略を順に列記したものと認識される
  • 出願人独自の文化的・歴史的な意味づけは需要者には分からない

ことから、商標法第3条第1項第6号に該当すると判断されました。

一般的な略称を組み合わせた名称を商標出願する場合には、その組み合わせが本当にブランドとして認識されるかを、出願人の意図ではなく需要者の視点から検討することが重要です。

サムライツ知財事務所では、略称、数字、記号、短い文字列など、識別力が問題となりやすい商標について、登録可能性の検討や出願方法のご相談を承っています。

「造語のつもりだが識別力が認められるか」「標準文字とロゴのどちらで出願すべきか」といった段階でも、早めに整理しておくことで、より適切な出願戦略を検討しやすくなります。