造語は外観の違いより称呼の同一性が重視される(「ウェルなび」vs「うぇるなび」事件)

造語は外観の違いより称呼の同一性が重視される(「ウェルなび」vs「うぇるなび」事件)

結論:「ウェルなび」と「うぇるなび」のように、特定の意味を持たない造語同士の場合、片仮名と平仮名の違いがあっても、称呼が同一であれば類似と判断されやすくなります。

今回の「ウェルなび」事件では、本願商標「ウェルなび」と引用商標「うぇるなび」が類似すると判断されました。

ポイントは、「ウェルなび」「うぇるなび」がいずれも辞書に載っている既成語ではなく、特定の意味を持たない造語と認定されたことです。

そのため、外観上の違いよりも、「ウェルナビ」という称呼の同一性が重視されました。

事案の概要

本願商標は「」(商願2025-018845)です。

引用商標は「うぇるなび」(登録第5818745号)です。

拒絶査定不服審判は、不服2025-18677です。

本願商標は、

  • 六角形状に配置された図形
  • 「ウェルなび」の文字
  • 「Wellness & Navi」の文字

から構成されていました。

これに対し、引用商標は「うぇるなび」の標準文字商標です。

審決では、本願商標中の「ウェルなび」部分が要部として抽出され、引用商標との比較が行われました。

理由1 「ウェルなび」が要部と認定された

本願商標には図形や英文字も含まれていました。

しかし、

  • 図形部分
  • 「ウェルなび」
  • 「Wellness & Navi」

は視覚的に分離して把握できる構成でした。

また、

「ウェルなび」と「Wellness & Navi」との間に、需要者が当然に略称関係を認識するような事情も認められませんでした。

さらに、

「Wellness & Navi」を含めた全体の称呼である

「ウェルナビウェルネスアンドナビ」

は13音に及びます。

そのため審決は、需要者は大きく目立つ「ウェルなび」の部分に着目すると判断しました。

結果として、「ウェルなび」が出所識別標識として強い印象を与える要部と認定されています。

理由2 「ウェルなび」も「うぇるなび」も造語だった

審決は、「ウェルなび」も「うぇるなび」も辞書に掲載された既成語ではないと認定しました。

また、

  • 一般に知られた語
  • 特定の意味を持つ語

として使用されている事情も見当たりませんでした。

そのため両商標は、

特定の観念を持たない造語

として理解されると判断されています。

結果として、

  • 本願商標 → 「ウェルナビ」の称呼
  • 引用商標 → 「ウェルナビ」の称呼

が生じる一方、観念比較はできないとされました。

理由3 片仮名と平仮名の違いは決定打にならなかった

請求人としては、

  • ウェルなび
  • うぇるなび

では見た目が異なるため区別できると考えたのかもしれません。

しかし審決は、商標実務上、

  • 平仮名
  • 片仮名
  • ローマ字

などを相互に変換して使用することは一般的であると指摘しました。

たとえば、

  • サクラ
  • さくら
  • SAKURA

のような表記変更は日常的に行われています。

そのため、

「ウェルなび」と「うぇるなび」の文字種の違いは、需要者に強い差異として認識されるほどのものではないと判断されました。

理由4 造語では称呼の一致が重視されやすい

本件で特に参考になるのは、前回紹介した「Gomi」事件との違いです。

「Gomi」事件では、

  • 「Gomi」
  • 「GOMI」

という文字が廃棄物を意味する記述的な語であり、識別力が弱いと判断されました。

そのため、称呼や観念ではなく、ロゴの見た目の違いが重視されました。

※参考記事:「文字自体に識別力がないと、デザインの違いが決め手になる。「Gomi」と「GOMI」は非類似(「Gomi」事件)」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/6751/

一方、本件の「ウェルなび」は造語です。

造語は文字自体が出所識別機能の中心になります。

そのため、

外観上多少の差異があっても、称呼が完全に一致する場合には類似と判断されやすい

という実務上の傾向がよく表れています。

類似になりやすい場合

この事件からすると、次のような場合には類似と判断されやすくなります。

文字自体に識別力がある場合

造語や独創的なネーミングは、文字部分自体が強い識別力を持ちます。

称呼が完全に一致する場合

本件のように「ウェルナビ」で一致すると、類似判断に大きく影響します。

観念比較ができない造語の場合

観念による差別化ができないため、称呼の重要性が高まります。

平仮名・片仮名の違いしかない場合

文字種の違いだけでは十分な差別化にならないことがあります。

逆に非類似の余地がある場合

一方で、次のような事情があれば非類似と判断される可能性があります。

称呼が異なる場合

語尾や語頭が異なれば、称呼上区別される可能性があります。

全体として異なる語感を生じる場合

造語であっても、聞いたときの印象が大きく異なれば非類似となる余地があります。

共通部分の識別力が弱い場合

記述的な語や一般名称であれば、その部分の共通性は重視されにくくなります。

外観差異が極めて大きい場合

ロゴ化の程度や構成によっては、外観が強く作用するケースもあります。

この事件から分かること

この事件が示しているのは、造語の商標では、表記の違いよりも称呼の一致が重視されやすいということです。

本件では、

  • 「ウェルなび」
  • 「うぇるなび」

という外観上の違いがありました。

しかし、

  • どちらも造語である
  • どちらも「ウェルナビ」と読まれる
  • 特定の観念を生じない

という事情から、称呼の同一性が強く評価されました。

前回の「Gomi」事件のように文字自体の識別力が弱いケースでは外観が重視されますが、本件のように文字自体が識別力を持つ造語の場合には、称呼の一致が類否判断の中心になることがあります。

次の判断に進むために見るべきポイント

新しいサービス名やアプリ名を検討するときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。

まず、その名称が造語かどうか確認する

造語であれば識別力が強く認められやすくなります。

次に、同じ読みの先行商標がないか調査する

表記が異なっていても称呼が同じであれば類似となる可能性があります。

さらに、平仮名・片仮名・ローマ字も含めて検索する

文字種の違いだけでは安全とはいえません。

最後に、ロゴではなく文字商標ベースでも確認する

ロゴが違っていても、文字部分が類似すると拒絶されることがあります。

まとめ

「ウェルなび」と「うぇるなび」のように、特定の意味を持たない造語同士の場合、片仮名と平仮名の違いがあっても、称呼が同一であれば類似と判断されやすくなります。

「ウェルなび」事件では、

  • 「ウェルなび」が要部として抽出された
  • 「ウェルなび」「うぇるなび」はいずれも造語と認定された
  • 両者とも「ウェルナビ」と称呼された
  • 観念比較はできなかった
  • 平仮名と片仮名の違いは大きな差異と評価されなかった

ことから、商標法4条1項11号に該当すると判断されました。

この事例は、造語を採用する場合には、見た目の違いだけでなく、同じ読み方になる先行商標の有無まで確認することの重要性を示しています。

サムライツ知財事務所では、アプリ名やサービス名、ブランド名について、称呼類似まで含めた先行商標調査や出願戦略のご相談も承っています。
全体の見た目が違うから大丈夫と考える前に、読み方まで含めて整理しておくことで、出願後のリスクを減らしやすくなります。