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★ご質問
★結論
今回は、「書籍の引用」に関してピンポイントでお聞きいただいているので、
それについて詳しくお答えいたします。
結論としては、引用のルールは、事実上あります。
ただ、法律では、引用のルールについて、抽象的に記載されているだけです。
詳しく「この場合はOK」「この場合はNG」と取り決められているわけではありません。
過去の判例などから、概ねこういう要件が必要なのではないかという通説があるので、
それに基づいて個別のケースを判断することになります。
ちなみに、過去にも引用について何度か解説していますので、
よかったらそちらもご参考ください。
★「引用」の要件
それでは「引用」の要件について解説します。
著作権法の中では、第32条第1項に記載されています。
まさにその部分を引用させていただきますと、
と書いてあります。
この中に大きく3つの要件が含まれていて、
1つ目が「公表された著作物」であること、
2つ目が「公正な慣行に合致するもの」であること、
3つ目が「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」であること
です。
①「公表された著作物」であること
まず1つ目が「公表された著作物」であることです。
すでに一般に発行された書籍なら問題ありません。
逆に言えば、未公表のものは含まれないので、引用できないことになります。
②「公正な慣行に合致するもの」であること
次に、「公正な慣行に合致するもの」であることです。
ここが曖昧ですが、過去の判例から4つのポイントがあります。
前回の話とも重なりますが、
(i) 「引用部分とその他の部分を区別できること」
まずは「引用部分とその他の部分を区別できること」が必要です。
例えば、引用する他人の著作物の部分を、
クオーテーションマークなどの引用符やカギカッコで囲むなどですね。
noteには引用表示できる機能がありますし、他のwordpressなどにもありますので、
そういう機能を利用されると良いでしょう。
子育てパパさんは、noteでは引用とわかるように表示をしているということなので、
この点は問題ないと思います。
(ii) 「引用部分がサブで、自分のコンテンツ部分がメインであること」
また、「引用部分がサブで、自分のコンテンツ部分がメインであること」が必要です。
あくまで、自分の主張や論説の部分の補強として、
サブ的に引用部分を用いるということですね。
具体的にパーセンテージが決まっているわけではないですが、
意識的に子育てパパさんのご意見やお考えを多めに書くことを意識すれば、
問題はありません。
逆に、引用部分を紹介することを目的とする記事は、
こちらの要件を満たさない可能性があります。
実際の事件で、元サッカー選手の中田英寿さんが中学生の時に書いた詩を、
短いコメントを付けただけで書籍に掲載した行為が、
引用には当たらないと判断されたケースがあります。
(東京地裁平成12年2月29日判決 平成10年(ワ)5887号事件)
これは、詩を紹介することが目的だったので、
引用が認められなかったのですね。
したがって、本のレビューをする時は、
自分はこう思うとの主張を厚めに書くと良いと思います。
(iii) 出典を表示すること
それから、どこから引用したのか、書籍やサイトなどの出典を示すことです。
注意した方がいいのは、
引用元は、なるべく一次情報にさかのぼることです。
なぜかというと、二次情報以降だと、
もしかしたら、オリジナルを無断で掲載した文章や画像を、
引用しているかもしれないからです。
そうすると、出典を示すことが、
違法コンテンツへの誘導になってしまうかもしれません。
ちゃんと然るべき権利を持っているところから引用して、
その出典を示すことです。
したがって、どこかのネットで適当に拾ってきたり、
Wikipediaから拾ってくるよりも、
公式サイトや公式が載せているECサイトの画像などから
引用するのがいいと思います。
その方が記事の信頼性も増します。
(iv) 勝手に表現を変えないこと
さらに、引用した部分は、勝手に表現を変えないことです。
こちらは前回と同様ですが、
わかりやすく言い換えたり、表現を付け足したり省いたりせず、
そのまま抜き出すということです。
③「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」であること
最後に、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」であることです。
ここは結構学説が分かれているところで、
「必要最低限」でないといけないとする説もありますが、
私は、そこまで厳しくなくても、引用に「必要な範囲」であればいいと考えています。
例えば、本題や本文の説明に関係のある画像を挿入したりサムネに使うのは、
「必要な範囲」と考えてもいいと思いますが、
本題や本文とは関係のない画像を使うのは、
「必要な範囲」を超えていると考えられます。
この「必要な範囲」の見極めは結構複雑です。
実際の事件で、西洋画の美術の歴史についての論文が記載された書籍に絵画が載っていて、
これが引用に当たるか争ったケースがあります。
該当の絵画については、元々それ自体が鑑賞の対象になっていて、
論文に結びつかない絵画も含まれているから、
論文を理解するためだけとはいえない、
つまり論文のための引用には当たらないと判断されました。
(東京高裁昭和60年10月17日判決 昭和59年(ネ)2293号事件)
ここから画像の引用について言えることは、
あくまで本文に対応した画像を引用するということですね。
イメージ画像的に、本文で触れられてもいない画像を、
許可なく引っ張ってきてはいけないということです。
そう考えると、
例えば、SNSのプロフィール写真や、カバー画像など、
本文とは独立して用いる画像については、
出典を示せば勝手に使っていいと思いがちですが、
そうではないので、気をつけていただきたいところです。
質問者さんの場合、
「スタエフのサムネイル画像は自分で購入した書籍を撮影して掲載している」
とのことですが、
こちらも書籍の表紙などに著作権がある場合があります。
そうすると、前回と合わせてこれまで説明してきたように、
原則は著作権侵害だけど、引用なら問題ないといえます。
つまり、画像内の本のレビューをするのであれば、
引用の形でサムネ画像にしてもOKということです。
ちなみに、noteやブログ等の機能で、
リンクを貼ると画像が表示されることがありますが、
あれは法律上問題ないことになってますので、
ご安心ください。
以上、長くなりましたが、参考にされてみてください。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。