【スタエフガイドライン】音痴や替え歌は権利侵害?

【スタエフガイドライン】音痴や替え歌は権利侵害?

2021年7月9日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/605a9c82307f05466d457dfd

皆さんはカラオケとかよく行かれますか?
私はここ数年は行ってないのですが、
高校生の時は、それこそ毎日のように放課後にカラオケボックスに行ってました。
あと、大学でバンドをやっていたときに、ギターとボーカルをやってたこともあるんですよ。
あんまり歌唱力はないですけどね。

stand.fm(スタエフ)なんかでも、聴いていると、
歌をとっても上手に歌っていらっしゃる方がいて、
いつも「すごいな〜」と感心してしまいます。

★著作者人格権の同一性保持権

スタエフ内で音楽を演奏したり、歌ったりする場合は、
「楽曲申請」をすれば、大丈夫です。

しかし、コミュニティガイドラインを見てみると、

オリジナルの曲に大きな変更を加えて歌唱などを行った場合、 権利者から著作者人格権に基づく権利主張をされる可能性がありますのでご注意ください(「stand.fmコミュニティガイドライン」より)

と書いてあります。
https://help.stand.fm/community-guideline

この「著作者人格権」というのは、
以前の記事にも出てきましたが、
「著作権」とは別に発生するものです。

[cardlink url=”https://samuraitz.com/?p=1846″]

著作権は財産的価値を守る権利ですが、
著作者人格権は人格的な価値を守る権利で、
創作した本人にのみ認められます。

その中に、「同一性保持権」という、
自分が創作したものの内容を、
自分の意思や意図に反して勝手に改変されない権利があります。
だから、ガイドラインの中で注意喚起しているのですね。

★替え歌は権利侵害?

では、ガイドラインで言う
「オリジナルの曲に大きな変更を加えて歌唱などを行った場合」というのは、
どんな場合が当てはまるでしょうか?

例えば、オリジナルの曲の歌詞を変えて歌う「替え歌」がありますね。
じゃあ「替え歌」が、すべて作詞者の著作者人格権侵害に該当するかというと、
そうとも限りません。

なぜなら、作詞者の「意に反して」勝手に改変されない権利なので、
本人が認めてくれたり、黙認してくれたりすれば、
「意に反して」とは言えないからです。

結局、本人のさじ加減なので、どちらとも言えないということになります。
したがって、安全策を取るなら、替え歌はやらないのが正解で、
少しリスクを背負いながらするなら、
作詞者の名誉を傷つけるような替え歌は差し控えて、
もし何か言われたらすぐさま謝罪する、
というのが適切な対応になるのかなと思います。

★実際の事件

実際にあった事件で、
童謡の「森のくまさん」の替え歌を無断で販売した芸人さんに対して、
日本語訳詞者の方が、販売差し止めや慰謝料を求めて抗議文を送ったことがありました。
替え歌の方には、歌詞カードがあるのですが、
その中に訳詞者の方の名前はあるけど、改変したものであることは記載されておらず、
著作者人格権を侵害されたと思われたんですね。
幸い、この件は訴訟にまでは至らず、両者で合意のもと円満に解決したとのことです。

ちなみに、下品な歌詞に替え歌することで、
作詞者ではなく作曲者の名誉を傷つけることになる場合は、
作曲者の著作者人格権侵害が認められる場合も、一応考えられます。
例えば、社会からの作曲者の客観的評価が貶められるようなケースです。
この場合は、作詞者がOKと言っていても、
作曲者がNGならNGですので、ご注意ください。

★原型をとどめないほど改変されている場合

ここで、オリジナルの曲の歌詞が原型をとどめないほど改変されている場合はどうなのか?が問題になります。
というのも、曲と詞は別々の権利なので、
いくら曲のメロディに載っているといっても、
元の歌詞の要素がまったく見当たらないような場合にまで、
著作者人格権侵害に該当するとは言い難いからです。

これは、元の歌詞の「表現上の本質的な特徴が残っていない」場合は、
著作者人格権侵害とはなりません
この場合は、創作者の本質的な創作部分が残っていないわけですから、
いくらなんでも同一性を保持してくれという権利がないからですね。

一方、「表現上の本質的な特徴が残っている」場合は、
作詞者が認めない限り、著作者人格権侵害となる可能性があります。
この点はご注意ください。

★音痴は権利侵害?

また、音痴の場合も、程度問題はありますが、
場合によっては、
オリジナルの曲に大きな変更を加えて歌唱などを行った場合
に該当します。
これに該当してしまうと、
ある意味、権利侵害どうこうよりも気の毒な感じはしますけれども。

では、著作者人格権侵害になる可能性ですが、
音痴の場合は、音程の改変に当たるので、
作曲者の意に反して勝手に改変されたと言えるかどうかですね。

ここで、「著作物の性質や利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる改変
については、著作権法上、例外として認められています。
すなわち、音痴の場合も、この「やむを得ないと認められる改変」と考えられるので、
たぶん、問題ないでしょう。

以上より、替え歌に関しては、もしやるなら、作詞者や作曲者の気を害さないような配慮が必要で、
音痴に関しては、権利侵害を気にしなくてもいいけど、
できれば歌唱力の向上に努めた方がいい、
ということでまとめさせていただきます。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。