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★ご質問
★ご質問①「朗読の試験やコンクールと著作権の利用許諾について」
まずご質問の1番目「朗読の試験やコンクールと著作権の利用許諾について」ですが、
試験がどういう形で行われるかで、関係する権利の種類が変わります。
今のコロナの時期だと、オフラインの試験ではなく、
オンラインの試験も考えられるからです。
オフラインの試験で読み上げる場合は、
まず「口述権」や「上演権」の侵害になるかどうかが問題になります。
「口述権」は「言語の著作物を公に口述する権利」(法24条)、
「上演権」は「公に上演する権利」(法22条)ですが、
kymさんのケースは「専門家に朗読の力量を審査して頂くもの」ということなので、これが「公に」に当たるのかどうかですよね。
「公に」というのは、「公衆に直接聞かせることを目的」としたものを言います(法22条)。
そして「公衆」には、「不特定の者」の他、「特定かつ多数の者」も含まれます(法2条5項)。
kymさんの試験は、「専門家に朗読の力量を審査して頂くもの」ということなので、特定の少数の人に対して読み上げる行為かと考えられます。
つまり、
「不特定の者」や「特定かつ多数の者」に対して、
「直接聞かせることを目的」として朗読している訳ではないから、
「公に口述」したことにならず、
許可を得なくてもいいのではないのではないかと、
私は考えています。
周りにギャラリーがいるような場合は、
一応、「公に口述」したことになりますが、
「営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合」は、公に口述できるという、
著作権の制限規定があるので、
こちらも問題ないと考えられます(法38条)。
次に、オンラインの試験で読み上げる場合ですが、
こちらは「公衆送信権」に該当するかどうかですね(法23条)。
こちらも「不特定の者」と「特定かつ多数の者」への
ネット通信が対象なので、
おそらく問題ないと考えられます(法2条7項の2)。
ただ、コンクールの様子が、ネットで配信されるような場合は、
「公衆送信権」侵害に該当する恐れがあるので、
利用許諾をもらう必要があります。
以上より、kymさんのケースでは、
基本的には、利用許諾をもらわなくても問題ないと思いますが、
朗読の様子がネットで公開されるようなケースは問題があるので、
許諾をもらっておくのが無難と言えます。
もちろん、著作権が切れている作品については、
許諾は不要です。
この辺りは、主催者側が取り扱いについて何かしら情報を出しているのが通常だと思いますので、主催者に確認を取るのもいいと思います。
もしかしたら、注意事項がアナウンスされているかもしれません。
★ご質問②「試験問題と著作権について」
続いてご質問の2番目「試験問題と著作権について」ですが、
当然著作権は関係してきます。
ただ、試験問題としての利用は、
通常よりも扱いがゆるく、
「試験又は検定の目的上必要と認められる限度において」は、
試験問題として「複製」したり「公衆送信」したりできます(法36条1項)。
この場合でも、「著作権者の利益を不当に害する」ような場合は認められません。
また、営利目的の場合は、
「通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない」
とされています(同2項)。
つまり、許可を取るための事前連絡はしなくてもいいけど、あとでお金払わなきゃダメってことですね。
それから、大前提として、すでに世の中に公表された著作物を使わなければなりません。
未公表のものは、著作者の「公表権」が問題になるからです(法18条)。
その他にも試験問題における著作権の扱いで注意すべきポイントはいくつかありますが、
ご興味がありましたら、ぜひご自身でお調べになってみてください。
回答は以上になります。
ご参考ください。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。