他人の著作物なのに日本で自由に使えるもの

他人の著作物なのに日本で自由に使えるもの

2021年8月18日

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これまで何度か、
「著作権フリー」と書いてあっても、注意しましょうとか、
「著作物」には定義があって、「アイディア」は著作物じゃないから著作権で保護されない
といったお話をしてきました。

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今回は、他人の著作物ではあるけども、
日本の著作権法では保護されないため、
自由に使えるものについて、お話をいたします。
「日本で保護されない著作物」と「権利の目的とならない著作物」の
2種類があるので、順番にお話します。

★日本で保護されない著作物

まずは、「日本で保護されない著作物」です。

「日本で保護される著作物」は、法律で決まっていて、
それ以外のものは保護されませんので、
裏を返せば、日本で自由に使えるということです。

では、「日本で保護される著作物」は、なんなのか?
それは、次の3つのどれかに当てはまるものです。

1.「日本国民が創作した著作物」です。
日本国民には、日本の法律に基づいて設立された法人や、
日本国内に主な事務所を有する法人も含まれます。

2.「最初に日本国内で発行された著作物」です。
これは、外国で最初に発行されたけれども、
発行されてから30日以内に日本国内で発行されたものも含まれます。
なんか、飴とか落とした時の3秒ルールに似てますね。

3.「条約によって、日本が保護の義務を負う著作物」です。
日本は「ベルヌ条約」「万国著作権条約」「TRIPS協定」などの条約に加盟しているので、
これらの条約に基づいて、著作物の保護の義務を負うケースでは、
日本でも保護されます。

ただ、ほとんどの国が条約加盟国で、
こちらに該当するため、
あまり考える意味は少ないですね。

一応、この3つのうちのどれにも当てはまらない著作物に関しては、
日本では保護されないため、自由に利用できるということです。

★権利の目的とならない著作物

それでは、「他人の著作物なのに日本で自由に使えるもの」の2つ目。
こちらの方が重要なのですが、
「権利の目的とならない著作物」は、
著作権はあるけど、権利の目的とはならないため、
保護の対象になりません

①まず、憲法や、法律、行政機関の命令といったものです。
これは、地方自治体の条例や規則も含まれます。
もちろん、条約も含まれるし、
外国の法律も含まれます。

まだ批准されていない条約や、
廃止された法令も含まれるので、
結構広い範囲が含まれるんですね。

ただし、民間の企業や団体が作成した規約だとか、
ガイドラインみたいなものは含まれません

なので、スタエフのガイドラインなんかを紹介するときは、
必ず「引用」の形を取って、
著作権を侵害しないように気をつけましょう。

②次に、国や地方公共団体、独立行政法人等が発する告示や訓令や通達といったもの、
これらも権利の目的にはなりません。
告示とか訓令って、ちょっと難しくてイメージしづらいと思いますが、
国や地方自治体などの公的な機関が、
国民や住民に対してする、決定事項のお知らせとかです。

③それから、裁判所の判決、決定、命令なども権利の目的になりません。
これには、裁判所だけじゃなくて、特許庁が出した審判の審決なども含まれます。
なので、法律の解説する時に、判決文や審決文を全文載せたって問題ないわけです。

④最後に、今挙げたものの翻訳物や編集物で、国とか地方公共団体、独立行政法人自身が作成するもの
これも権利の目的にはなりません。
逆に言えば、国などの職員や、民間人や民間企業等が作成したものは、
権利の目的になるので、保護の対象になり得えます。

これらがなぜ保護の対象にならないかといいますと、国民一般に内容を知らしめることを目的としているので、
基本的には国民に広く開放されて、利用されるべき公共の財産であるからなんですね。

★公的機関が発行した著作物でも、権利の目的になるもの

ただし、国や地方公共団体等が発行したものでも、
白書や学術的な書籍等は著作物の対象になり得ます。

したがって、たとえ公的な資料であっても、
全部が全部、自由に利用していいわけではない点に、ご注意ください。

この場合は、説明の材料として刊行物に転載したり、
一般の著作物のように「引用」をしたりして、
安全に利用してくださいね。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。