品番・型番を語頭に付けた商標は、識別力を失っていない?(「G-2らくらくパンツ」事件)

品番・型番を語頭に付けた商標は、識別力を失っていない?(「G-2らくらくパンツ」事件)

結論:「G-2」のような品番・型番に見える表示と、「らくらくパンツ」のような説明的な語を組み合わせた商標でも、その組み合わせ全体が一体の造語として認識される場合には、識別力が認められることがあります。

今回の「G-2らくらくパンツ」事件では、本願商標について、当初は、

  • 「G-2」は商品の品番・型番等を表す
  • 「らくらくパンツ」は商品の品質を表す

として、全体として識別力がないと判断されました。

しかし、拒絶査定不服審判では、実際の取引の場で、
「品番・型番+らくらくパンツ」
という表示が一般的に使用されている事情は確認できないとして、商標全体が一種の造語として認識されると判断されました(不服2026-005197)。

事案の概要

本願商標は、「G-2らくらくパンツ」です(商願2025-61441号)。

指定商品は、補正により第25類の、

  • ズボン
  • パンツ

に限定されました。

原査定では、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当するとして拒絶。

これに対し、審判では原査定が取り消され、登録可能と判断されています。

原査定は「品番+品質表示」と理解した

原査定は、本願商標を二つの部分に分けて捉えました。

まず、「G-2」については、欧文字1字と数字1字をハイフンで結合した表示であり、商品分野において品番、型番、種別等を表すものとして一般に使用されると判断しました。

また、「らくらくパンツ」については、履き心地が楽であったり、容易に着脱できたりするズボン・パンツを表す語として使用されていることから、
「負担を感じさせないズボン・パンツ」
ほどの意味を認識させると判断しました。

そのため、本願商標全体についても、

品番・型番等を表す「G-2」と、商品の品質を表す「らくらくパンツ」とを組み合わせたもの

として認識されるにすぎず、出所識別標識として機能しないと判断されました。

一方、審判では下記の理由で識別力が認められたのです。

理由1 商標全体がまとまりよく表されていた

まず、本願商標の外観が重視されました。

「G-2らくらくパンツ」の各文字は、

  • 同じ書体
  • 同じ大きさ
  • 等間隔

で表されており、視覚上まとまりよく一体的に看取されると判断されています。

つまり、「G-2」と「らくらくパンツ」が、見た目の上で明確に分離されているわけではありませんでした。

標準文字の商標であっても、文字列全体のまとまりや一連性は、需要者がどのように認識するかを判断する上で重要になります。

理由2 「G-2」が品番に見えるだけでは足りなかった

審判も、欧文字1字と数字1字をハイフンで結合した表示が、商品分野によって品番・型番等として使用される場合があること自体は否定していません。

しかし、それだけで本願商標中の「G-2」が、直ちに品番・型番であると認識されるとは判断しませんでした。

重要なのは、実際の取引の場で、「G-2らくらくパンツ」のような構成が、品番と商品名の組み合わせとして一般に使われているかどうかです。

審判では、

「品番、型番が○○のらくらくパンツ」
「○○らくらくパンツ」

のような表示が一般に使用されている実情は確認できないとされました。

そのため、「G-2」を品番、「らくらくパンツ」を商品説明と機械的に分解するのは適切でないと判断されたものといえます。

理由3 全体として特定の意味を持たない造語とされた

本願商標は、「G-2」と「らくらくパンツ」を組み合わせたものではあります。

しかし、その組み合わせ全体から、「品番・型番がG-2のらくらくパンツ」という意味が直ちに理解されるとはいえないと判断されました。

その結果、「G-2らくらくパンツ」は、全体として特定の意味を認識させない一種の造語として把握されるとされました。

ここが本件の中心です。

構成する各部分に識別力がない、又は弱い要素が含まれていても、その組み合わせが取引上一般的でなく、全体として一つの名称のように認識されるのであれば、商標全体として識別力が認められることがあります。

この事件から分かること

この事件から分かるのは、品番・型番に見える表示を含むだけで、商標全体の識別力が直ちに否定されるわけではないということです。

判断では、次の点が重要になります。

語頭の表示が実際に品番・型番として理解されるか

「G-2」のような形式が品番に使われる場合があるとしても、当該商標全体との関係で、本当に品番として理解されるかが問題になります。

後半部分との組み合わせが一般的か

「品番+商品名」「型番+品質表示」という構成が、当該商品分野で一般に使われている場合には、識別力が否定されやすくなります。

一方、そのような使用実態がなければ、全体として一つの造語と認識される余地があります。

商標全体にまとまりがあるか

文字の大きさ、書体、間隔などが統一され、全体として一連に看取される場合には、一体の商標として評価されやすくなります。

どのような場合に識別力が否定されやすいか

本件とは反対に、次のような場合には、品番・型番と説明語の組み合わせとして理解されやすくなります。

  • 「型番」「品番」などの語が併記されている
  • 記号部分と商品名部分の書体や大きさが明確に異なる
  • 記号部分が独立して表示されている
  • 業界で同じ構成が品番表示として一般的に使用されている
  • 後半部分が商品の普通名称や品質表示にすぎない
  • カタログや商品一覧で同じ形式の記号がシリーズ番号として使われている

このような事情がある場合には、需要者が商標全体を一つのブランド名ではなく、単なる商品情報として受け取る可能性が高くなります。

この判断を実務にどう生かすか

品番、型番、シリーズ番号のような表示を含む名称を商標出願する場合には、まず次の点を確認する必要があります。

実際の使用方法を確認する

商品パッケージ、ウェブサイト、カタログ上で、どのような配置や大きさで使うのかを確認します。

出願商標が一体的でも、実際の使用では記号部分だけを品番欄に表示している場合、ブランドとしての認識が弱くなる可能性があります。

業界の表示実態を調べる

同じ分野で、「英数字+商品名」という構成がどのように使われているかを確認します。

品番として一般的な形式なのか、ブランド名として使われる形式なのかによって、判断が変わります。

全体を一つの名称として設計する

単に説明語の前に英数字を付けるのではなく、全体として独自の語感やまとまりを持たせることが重要です。

まとめ

「G-2らくらくパンツ」事件では、「G-2」が品番・型番に見え、「らくらくパンツ」が説明的であるとしても、その組み合わせ全体が直ちに商品情報を示すとはいえず、一種の造語として識別力が認められました。

審判では、

  • 商標全体が同書・同大・等間隔で一体的に表されている
  • 「品番・型番+らくらくパンツ」という表示が一般的に使われている実情がない
  • 全体から特定の意味が直ちに生じない

ことが重視されました。

品番や型番に見える英数字を含む商標であっても、その構成や取引の実情によっては登録できる可能性があります。

一方で、英数字部分が実際に品番として使われていたり、全体が商品情報として理解されたりする場合には、識別力が否定されることもあります。

サムライツ知財事務所では、英数字を含む商標、品番・型番に見える商標、説明的な語を含む商標について、識別力の検討や出願方針、拒絶理由への対応をご相談いただけます。

「この名称はブランドとして登録できるか」「品番のように見えて拒絶されないか」とお悩みの場合は、実際の使用態様や業界の取引実情も含めて、早めに検討することをおすすめします。