はじめに
商標では、既存の商標に一般的な語を足せば登録できるのでは、と考えたくなることがあります。
今回の「Discover Japan TRAVEL」事件は、その発想が必ずしも通らないことをよく示しています。
本件は、審決取消訴訟・令和7年(行ケ)10086号です。
本願商標は「Discover Japan TRAVEL」で、指定役務は第39類の「旅行の企画・運営・実施・手配又は予約」等(商願2023-141919)。
これに対し、引用商標は「DISCOVER JAPAN」で、指定役務は同じく第39類の「企画旅行の実施」等でした(登録第5811472号)。
争点は、商標法4条1項11号、つまり先登録商標との類似に当たるかどうかです。
拒絶査定不服審判では、両商標は類似し、商標法4条1項11号に該当すると判断されました(不服2025-3339)。
本件は、この審決に対する審決取消訴訟になります。
この事件で問題になったこと
この事件のポイントは、本願商標全体を一体で見るのか、それとも「Discover Japan」と「TRAVEL」を分けて見るのか、という点にあります。
裁判所は、本願商標の構成中、「Discover Japan」と「TRAVEL」は外観上分離して認識、観察されるとしました。
そして、旅行に関する役務との関係では、「TRAVEL」は役務内容を表示する語として理解されるものであり、出所識別標識としての機能を果たさないと判断しました。
一方で、「Discover Japan」の部分からは、「ディスカバージャパン」の称呼と、「日本を発見する」又は「日本を発見しよう」との観念が生じ、旅行に関する役務との関係でも、出所識別機能を一定程度果たすとされました。
つまり、裁判所は「Discover Japan」の部分を本願商標の要部として把握したわけです。
なぜ類似すると判断されたのか
その上で、要部である「Discover Japan」と引用商標「DISCOVER JAPAN」を比較すると、称呼と観念は同一であり、外観についても大文字と小文字の差はあるものの近似すると判断しました。
そのため、両商標を同一又は類似の役務に使用した場合には、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあり、互いに類似すると認めるのが相当だとされました。
要するに、「TRAVEL」を付け加えたこと自体は事実ですが、その部分が旅行分野では役務内容を示す一般的な語として理解される以上、商標全体の印象を決定的に変えるものとは見てもらえなかった、ということです。
出願人の見方は通らなかった
出願人側としては、本願商標は全体として「ディスカバージャパントラベル」と一連に称呼され、「日本の旅を発見しよう」という一体的な観念を生じるのであって、分離観察は許されないと主張したと思われます。
しかし裁判所は、外観上の分離可能性と、「TRAVEL」が役務内容表示として理解される実情を重視し、その主張は採用しませんでした。
この事例から分かること
この事例から見えてくるのは、既存商標に一般的・説明的な語を付け足しても、必ずしも非類似にはならないということです。
特に、その追加部分が業種や役務内容をそのまま示す語である場合、商標の識別力の中心はもとの部分に残ると判断されやすくなります。
旅行分野で「TRAVEL」がそうであるように、他の分野でも「CAFE」「ACADEMY」「SYSTEM」「LAB」などの語が付いていても、前半部分が要部とされることは十分あり得ます。
今回の事例は、結合商標の中にあるどの部分が本当に商標として効いているのかを、裁判所がかなり実務的に見ていることを示しています。
名前を少し足しただけで先行商標を避けられるとは限らない。
商標実務では、その感覚を改めて確認させる事例だと思います。
まとめ
「Discover Japan TRAVEL」事件では、「TRAVEL」は旅行役務との関係で出所識別力が乏しく、「Discover Japan」の部分が要部と認定されました。
その結果、引用商標「DISCOVER JAPAN」と称呼・観念を共通し、外観も近似するため、類似商標と判断されています。
既存商標に一般語を足しただけで出願しようとすると、思った以上に要部が共通していると見られることがあります。
サービス名やブランド名の登録可能性が気になるときは、要部認定や指定役務との関係も含めて、事前に丁寧に検討しておくことが大切です。
サムライツ知財事務所では、こうした結合商標の類否や、出願前のネーミング検討についてもご相談いただけます。
気になる名称がある場合は、早めに相談しておくと安心です。
