「Dotディスプレイ」は「Dot」の使用になる?――説明語を加えても要部が共通すれば社会通念上同一(「Dot」事件)

「Dotディスプレイ」は「Dot」の使用になる?――説明語を加えても要部が共通すれば社会通念上同一(「Dot」事件)

結論:「Dotディスプレイ」「Dotコントロールセンター」のように、後半部分が商品の機能や構成を説明するにすぎない場合、識別力を発揮する「Dot」部分が要部とされ、登録商標「Dot」と社会通念上同一の商標の使用と認められることがあります。

不使用取消審判では、登録商標そのものを、指定商品・指定役務について使用していたかが問題になります。

もっとも、実際の使用態様が登録商標と完全に一致していなくても、社会通念上同一と認められる商標であれば、「使用」として扱われます。

今回の「Dot」事件では、登録商標が「Dot」であったのに対し、実際に使用されていた表示は、

  • 「Dotコントロールセンター」
  • 「Dot Control Centers」
  • 「Dotディスプレイ」

でした。

審決は、後半部分はいずれも商品の機能や構成を説明する語にすぎず、自他商品識別力を発揮する要部は「Dot」であるとして、登録商標「Dot」と社会通念上同一の商標の使用を認めました(取消2023-670053)。

事案の概要

本件商標は、「Dot」です(国際登録第1028877A号)。

取消請求の対象となった指定商品には、第10類の、
磁気共鳴断層撮影用の機器及び装置
が含まれていました。

被請求人側は、「MAGNETOM Sempra」と称する磁気共鳴断層撮影装置について、

  • 「Dotコントロールセンター」
  • 「Dot Control Centers」
  • 「Dotディスプレイ」

の表示をカタログやデータシートに付していたことを、使用証拠として提出しました。

問題となったのは、これらの結合表示が、登録商標「Dot」の使用といえるかどうかです。

理由1 「コントロールセンター」は機能を示す語にすぎない

「Dotコントロールセンター」及び「Dot Control Centers」は、磁気共鳴診断装置に設けられた操作部分について使用されていました。

カタログ等には、

  • 寝台のスピードや位置の調整
  • ボア内の通気や照明の制御
  • ヘッドフォンやスピーカーの音量調整

などを行う機能として説明されていました。

そのため、審決は、「コントロールセンター」又は「Control Centers」の部分について、当該商品がコントローラーの機能を有することを示すにすぎないと判断しました。

つまり、この部分は商品の内容を説明する語であり、出所を識別する力は弱いとされたわけです。

その結果、「Dotコントロールセンター」及び「Dot Control Centers」において、自他商品識別力を発揮する要部は「Dot」であると認定されました。

そして、その要部が登録商標「Dot」と同一であるため、社会通念上同一の商標と認められています。

理由2 「ディスプレイ」も商品の構成を示す語にすぎない

「Dotディスプレイ」は、磁気共鳴診断装置に設けられた表示部分について使用されていました。

カタログには、

  • 被験者の受け入れ状況
  • 心電波形などの生理学的情報
  • 寝台位置
  • 風量や明るさ
  • 検査準備状況
  • ガイダンス

などを表示するものと説明されていました。

このことから、審決は、「ディスプレイ」の部分について、当該商品がディスプレイを備えていることを示す語にすぎないと判断しました。

したがって、「Dotディスプレイ」においても、識別力を発揮する要部は「Dot」であるとされました。

その結果、「Dotディスプレイ」も登録商標「Dot」と社会通念上同一の商標と認められています。

理由3 他のブランド表示と併記されていても使用は否定されなかった

請求人は、「Dot」を含む表示が、

  • 「SIEMENS Healthineers」
  • 「MAGNETOM Sempra」

などの表示に比べて小さく、目立たないため、出所識別標識としての使用ではないと主張しました。

しかし、審決はこの主張を採用しませんでした。

「Dotコントロールセンター」「Dotディスプレイ」「Dot Control Centers」は、いずれもカタログやデータシート上で見出しとして表示されていました。

そのため、他の商標より小さいとしても、それだけで出所識別標識としての使用が否定されるものではないと判断されました。

一つの商品に複数の商標が使用されることは珍しくありません。

会社名、シリーズ名、商品名、機能名などが併記されていても、それぞれが商標として機能する場合があります。

理由4 カタログやデータシートの頒布も商標の使用に当たる

本件では、商標が商品本体に大きく表示されていたかだけでなく、カタログやデータシートが顧客に頒布されていたことも重視されました。

シーメンスヘルスケア社は、要証期間中である2022年4月、5月及び12月頃に、日本国内の顧客に対して、使用商標を付したカタログやデータシートを電子メールで送付していました。

審決は、これを、
商品に関する広告又は取引書類に商標を付して頒布する行為
として、商標法2条3項8号の使用に該当すると判断しました。

そのため、商品本体に直接表示された証拠が十分でなくても、カタログや取引資料の頒布によって使用が認められる場合があります。

社会通念上同一とは何か

不使用取消審判では、登録商標と全く同一の態様による使用だけが認められるわけではありません。

商標法50条では、社会通念上同一と認められる商標の使用も含まれます。

例えば、

  • 平仮名、片仮名、ローマ字の相互変更
  • 書体の変更
  • 大文字と小文字の変更
  • 識別力の弱い説明語の付加

などであっても、商標の同一性が損なわれていなければ、社会通念上同一と判断されることがあります。

もっとも、どのような語を付け加えても認められるわけではありません。

追加された部分にも強い識別力があり、全体で別の商標として認識される場合には、登録商標との社会通念上の同一性が否定される可能性があります。

「KIREI」事件との違い

以前の「KIREI」事件では、登録商標「KIREI」に対し、実際の使用商標は「舌キレイ」などの構成でした。

その事件では、「舌」と「キレイ」がまとまって「舌キレイ」と認識され、「キレイ」だけが分離独立して自他商品識別標識として把握されるものではないと判断されました。

そのため、使用商標は登録商標「KIREI」と社会通念上同一とは認められませんでした。

※参考記事:「商標を使ってるつもりでも、登録商標の使用とは認められない?(「KIREI」事件)」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/6629/

一方、本件では、

  • 「コントロールセンター」
  • 「Control Centers」
  • 「ディスプレイ」

が商品の機能や構成を表す説明語にすぎず、「Dot」が独立して識別力を発揮すると判断されています。

つまり、結論を分けたのは、付加された語と登録商標部分との関係です。

説明語を付け加えただけなのか、それとも全体で別のまとまりある商標を形成しているのかが重要になります。

この事件から分かること

この事件から分かるのは、登録商標に説明的な語を追加して使用していても、登録商標部分が独立した要部として認識される場合には、社会通念上同一の商標の使用と認められる可能性があるということです。

特に、

  • 商品の部位
  • 商品の機能
  • 商品の種類
  • システムの構成
  • サービスの内容

などを表す語が後ろに付加されている場合には、登録商標部分が要部として認定される余地があります。

ただし、判断は実際の表示態様や商品の性質によって変わります。

単に登録商標の文字列が含まれているだけでは足りません。

需要者が、その部分を独立したブランド表示として認識するかを確認する必要があります。

不使用取消を避けるために確認したいこと

登録商標を実際に使用するときは、次の点を確認することが重要です。

登録商標部分が独立して認識できるか

登録商標の前後に語を追加する場合、その部分が視覚上、意味上、独立して把握されるかを確認します。

付加語が説明的なものか

付加された語が商品の種類、機能、品質などを表すにすぎなければ、登録商標との同一性が認められやすくなります。

使用証拠を残しているか

カタログ、ウェブサイト、取引書類、電子メール、納品書などは、不使用取消審判で重要な証拠になります。

表示内容だけでなく、いつ、誰に、どの商品について頒布したかが分かる資料を保存しておく必要があります。

使用者の権限を説明できるか

商標権者自身だけでなく、通常使用権者や専用使用権者による使用も認められます。

グループ会社や販売会社が使用する場合には、ライセンス関係を明確にしておくことが大切です。

まとめ

「Dot」事件では、「Dotコントロールセンター」「Dot Control Centers」「Dotディスプレイ」が、登録商標「Dot」と社会通念上同一の商標の使用と認められました。

審決では、

  • 「コントロールセンター」は商品の操作機能を示す語である
  • 「ディスプレイ」は商品の表示部分を示す語である
  • いずれも識別力を発揮する要部は「Dot」である
  • カタログ等では見出しとして表示されていた
  • 要証期間中に顧客へ頒布されていた

ことが重視されました。

その結果、通常使用権者による登録商標の使用が証明され、商標登録は取り消されませんでした。

登録商標を少し変更して使用している場合には、社会通念上同一と認められるかを事前に確認しておくことが重要です。

サムライツ知財事務所では、不使用取消審判への対応、商標の使用態様の確認、使用証拠の整備、ライセンス関係の整理などのご相談を承っています。

登録商標と実際の使用表示が異なっている場合や、現在の使い方で商標登録を維持できるか不安がある場合は、早めにご相談ください。