「チバニアン」事件に学ぶ商標の価値とは?

2017年6月8日

持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

市原市出身の私としては、看過できないニュースです。

「チバニアン」が、無関係の第三者によって、商標登録されていたとのこと。
(参照:http://www.sankei.com/life/news/170607/lif1706070048-n1.html

「チバニアン」とは、千葉県市原市田淵の養老川沿いにある地層の名称で、約77万年前に地球の磁場のN極とS極が最後に逆転した痕跡がわかる、重要な地層です。
「千葉時代」に由来しており、国際地質科学連合に申請すると発表されています。
地球史に日本の名前が刻まれることになれば史上初とのことで、期待が高まっています。

そんな盛り上がりに水を差すかのようなこのニュース。
「チバニアン」が通ったら、この名称で町おこしを…という算段もあったことでしょう。
その「チバニアン」が、同県市川市の男性によって、「キーホルダー」や「時計」、「文房具類」に「印刷物」、「おもちゃ」や「人形」といった分野で商標登録を受けたというのです。
また、「チバニあん」という商標も、「コーヒー」や「菓子」などの分野で、
同県千葉市の別の男性によって商標出願されています(審査中で未登録)。

そこで、国立極地研は、前者の商標登録に対して、「登録異議申し立て」を行いました。
これを取り消さないと、「チバニアン」という名称を用いた「キーホルダー」や「時計」の販売等ができないからです。

商標が原則「早い者勝ち」の制度である以上、
このような”先取り”リスクを想定しなければなりません。
「PPAP」でも問題になりましたが、
一番の対策は、法改正を待つことではなく、
自社が一番先に出願すること
なのです。

とはいえ、すべての商品・役務分野を指定するわけにもいかない。
コストがかかりすぎます。
この選定もなかなか難しいところですが、
基本的には現在使用しているものか、将来使用することが確実なものを優先に選びます。

また商標制度では、
「造語」そのものの価値を認めているのではなく
その「造語」が他者の商品・役務と「見分けがつくこと」に価値を認めています。
その「見分けがつくこと」の判断基準の一つが、
先に出願・登録されていないか?、ということなのです。
他にも、すでに世の中で有名な商標と同じか似ていないか?も判断基準の一つです。
この場合は、先に出願・登録されていなくても、登録できないとされることがあります。

そして、「商標」は単に「言葉」や「図形」等のことではなく
他者の商品・役務と「見分けをつける」言葉や図形等のことをいいます。
だから、その言葉や図形等が、他者のものと見分けをつけるために
どの程度、商品や役務に使用されているのかが、判断のポイントになります。

「見分けがつくこと」の価値を認めて商標登録していいのかどうかの最終関門として、
社会的に問題があるもの(公序良俗違反)でないか?
という判断基準があります。
やはり「けしからん」商標登録を認めていないという点では、
原則”早い者勝ち”とはいえ、
良心が残っているわけです。

今回の異議申し立てでは、おそらくここも主張しているかと思います。
(そうでないと勝つのが難しいと思われます)

結果は6~7か月後くらいでしょうか。
さあ「チバニアン」商標はどうなるでしょう?

参考動画: