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似ている部分があっても、結論は分かれます
商標の類否判断では、同じように一部の言葉が共通していても、結論が分かれることがあります。
最近の審決でも、その違いがよく表れた事例がありました。
一つは、「菁文堂手帳用紙」(商願2024-003403号)と「Seibundo」(登録第6779830号)の事例(不服2025-3937)です。
もう一つは、「忍者ラーメン」(商願2024-038420号)と「
」(登録第6452071号)の事例(不服2025-7951)です。
どちらも、出願商標の中に、引用商標と称呼が重なりそうな部分が含まれています。
しかし、前者は非類似と判断され、後者は類似と判断されました。
この違いは、商標を見るうえで大事な視点を教えてくれます。
「菁文堂手帳用紙」はなぜ非類似だったのか
まず、「菁文堂手帳用紙」の事件を見てみます。
本願商標は、「菁文堂手帳用紙」という文字を標準文字で表したものです。
引用商標は、「Seibundo」でした。
「菁文堂」の部分からは、「セイブンドウ」という称呼が生じる可能性があります。
引用商標の「Seibundo」も、「セイブンドウ」と読まれます。
そう考えると、一見すると似ているようにも見えます。
しかし、審決では非類似と判断されました(不服2025-3937)。
理由は、本願商標が「菁文堂手帳用紙」全体として、まとまりよく一連に表されていたからです。
文字の大きさや書体も同じで、特定の部分だけが強く目立つ構成ではありませんでした。
また、「手帳用紙」という語が含まれているものの、全体として直ちに特定の意味を認識させるものではないとされました。
そのため、「菁文堂」だけを切り出して比較するのではなく、「菁文堂手帳用紙」全体として見られました。
その結果、外観では、漢字と欧文字という文字種の違いがあります。
称呼でも、「セイブンドウ」と「セイブンドウテチョウヨウシ」では、語尾の有無によって全体の語調が異なります。
観念はどちらも特定の観念を生じません。
このように見ていくと、両者は紛れるおそれがないと判断されました。
「忍者ラーメン」はなぜ類似だったのか
一方で、「忍者ラーメン」の事件では、結論が違いました。
本願商標は「忍者ラーメン」。
引用商標は「
」です。
本願商標も、見た目としては「忍者」と「ラーメン」が一体に並んでいます。
「ニンジャラーメン」と無理なく一連に読むこともできます。
出願人側も、そのような主張をしていました。
しかし、審決では「忍者」の部分が要部として抽出されました(不服2025-7951)。
ポイントは、「ラーメン」という文字の性質にあります。
本願の指定商品には、「調理済みラーメン」「ラーメン用のスープ」「ラーメンの生麺」など、ラーメンに関する商品が含まれていました。
そのため、「ラーメン」の文字は、商品の内容や品質を表すものと見られました。
つまり、「ラーメン」は、その商品が何であるかを説明する言葉に近いものです。
そうなると、自他商品の識別標識としての働きは弱くなります。
これに対して、「忍者」は、ラーメンという商品との関係で、商品の具体的な品質を表す言葉ではありません。
そのため、「ラーメン」よりも出所を示す部分として強く印象に残ると判断されました。
結果として、本願商標からは、全体の「ニンジャラーメン」という称呼だけでなく、要部である「忍者」から「ニンジャ」という称呼や、「忍びの者」という観念も生じると判断されました。
引用商標は、「NINJA」と「忍者」を上下二段に表したものです。
ここからも、「ニンジャ」の称呼と「忍びの者」という観念が生じます。
そうすると、本願商標の要部である「忍者」と、引用商標の「NINJA\忍者」は、称呼も観念も共通します。
外観でも、「忍者」の文字を共通にしています。
そのため、両商標は類似すると判断されました。
境界線は「足した言葉の識別力」にあります
この二つの事件を比べると、類否判断の境界線が少し見えてきます。
単に、共通する音があるかどうかだけでは決まりません。
また、商標全体が一連に読めるかどうかだけでも決まりません。
大事なのは、商標の中の各部分が、指定商品との関係でどのような意味を持つかです。
「菁文堂手帳用紙」では、全体が一体の語として把握され、特定の部分だけが独立して強く印象に残るとはいえませんでした。
そのため、全体観察が重視されました。
これに対し、「忍者ラーメン」では、「ラーメン」が指定商品との関係で品質表示的な言葉でした。
その分、「忍者」の部分が出所識別標識として強く働くと見られました。
ここに、結論を分けた大きな違いがあります。
ネーミングでは「どこがブランドに見えるか」を考える
商標を考えるとき、つい語感や見た目の印象で「これは一体に見える」「これは違う名前に見える」と考えがちです。
もちろん、その感覚も大事です。
ただ、商標実務では、それだけでは足りません。
その言葉が、指定商品との関係で説明的なのか。
それとも、ブランドを示す部分として機能するのか。
ここを見落とすと、判断を誤りやすくなります。
特に、商品名にジャンル名を加える場合は注意が必要です。
たとえば、「〇〇ラーメン」「〇〇カレー」「〇〇手帳」「〇〇化粧水」のような構成では、後半部分が商品の内容を表す言葉と見られることがあります。
その場合、前半の「〇〇」が要部として取り出され、先行商標と比較される可能性があります。
もちろん、すべてのケースで機械的にそうなるわけではありません。
商標の構成、文字のまとまり、指定商品との関係、取引の実情などによって判断は変わります。
ただ、今回の二つの審決を見ると、「何を足したか」よりも、「足した言葉がどの程度識別力を持つか」が重要であることがわかります。
「Seibundo」に対して「手帳用紙」が付いたから非類似。
「忍者」に対して「ラーメン」が付いたから類似。
結論だけを見ると、少しわかりにくいかもしれません。
しかし、その背景には、足された言葉が商標全体の中でどのように機能するかという考え方があります。
商標出願前に確認しておきたいこと
商標を作るときには、響きのよさや覚えやすさだけでなく、どの部分がブランドとして見られるのかを考える必要があります。
そして、指定商品との関係で、説明的な言葉を加えただけでは、先行商標との差別化として十分でない場合があります。
この点は、ネーミングを考えるうえでも、出願前の調査をするうえでも、実務上とても大切な視点です。
商標の類否判断は、見た目の印象だけでなく、指定商品・指定役務との関係や、識別力の強弱を踏まえて検討する必要があります。
「この名前で出願して大丈夫か」「似た商標があるが登録できる可能性はあるか」と迷われる場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
サムライツ知財事務所では、商標調査、出願前のリスク判断、拒絶理由通知への対応まで、事業の実情に合わせてサポートしています。
商標のネーミングや出願でお悩みの方は、ぜひお気軽にサムライツ知財事務所までご相談ください。
