QRコードの知財戦略

QRコードの知財戦略

※2019年5月28日配信メルマガVol.21より、一部加筆修正の上抜粋

世の中の”キャッシュレス化”が広がり、
QRコード決済を利用するシーンも街中で頻繁に見かけるようになりました。
今や私達の生活になくてはならないものになってきていますよね!

「QRコード」は、「Quick Response」の頭字語に由来しており、
高速で情報を読取れるのが特徴ですが、
日本の㈱デンソー(現:㈱デンソーウェーブ)が開発したということをご存知でしょうか?

デンソーの自動車部品工場において、多品種・少量生産化が進み、
部品の生産や出荷に係る情報がどんどん増える一方、
これまで使っていたバーコードでは情報量が多く入らず、
生産効率が悪いという現場作業員からの声が上がったのです。

そこで、より多くの情報を盛り込めて、
より正確かつ速く読み取れる新しいコードの開発に着手し、
1994年に「QRコード」が誕生しました。
その開発は、なんとたった2人からスタートしたそうです。

「QR コード/QR Code」はデンソーウェーブの登録商標(商標登録第4075066号他)ですし、
特許も何件か取得(特許第2938338号他)しました。
しかし、これらをデンソーだけで独占せずに、
基本仕様をISO化(国際標準化)し、
ライセンス料無償で一般にオープンにしたのです。
元々、バーコードに置き換わる存在として、製造・流通の現場向けに開発されたものでしたが、
この無償化によって、広く一般にも用いられるようになったのですね。

では、デンソーウェーブはどこで儲けているのでしょうか?
実は、「QRコード」の認識やデコード部分はクローズ(ブラックボックス)にして、
他社との差別化を図っているのです。
つまり、高速で読み取れる「QRコードリーダー(読み取り機)」やソフトウェアを有償で販売して収益を上げています。
もちろん、国内ではトップシェアです。

つまり、「QRコード」が普及すればするほど、
「QRコードリーダー」が売れるから、
収益を上げることができるビジネスモデルになっているのですね。

この「QRコード」はさらに進化しており、
「SQRC」という、コード情報に公開・非公開の設定ができ、
機械の種類によって読み取れる情報を制限できるものも誕生しています。
https://www.denso-wave.com/ja/system/qr/product/sqrc.html
従来なら個人情報や機密情報も一緒に表示されてしまい、
セキュリティ面で不安がありましたが、
これなら特定の人や機械でないと非公開部分を表示できず、
非公開情報の有無も開示されない点で安心です。

知財と標準化を組み合わせ、
オープンにする部分と、クローズにする部分を上手く使い分けることで、
社会に大きな価値をもたらしつつ、優れた事業を生み出すことができたわけですね。

※参照
・「QRコード」生みの親に聞いてみた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190520/k10011922461000.html

 

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