デザイン特許(意匠権)と著作権が切れても、半永久的に残る最強の権利

2016年11月29日

持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

先日の記事の続きです。
「ジェネリック家具」ってなんだ?
デザインの権利が切れても、デザインが使えない?!

その前に復習。
新しいデザインは、出願して意匠権という20年間の権利を取れるけど、
その後は意匠権がないので、
同じデザインを使ってもOKということになります。
弊所の椅子がこれにあたり、「ジェネリック家具」なんて呼ばれています。

しかし、作者の何らかの個性が発揮された、創作性のあるデザインは、
著作権でも保護されてしまうのです。
すべてのデザインに著作権が発生するわけではないし、
独自創作には及ばない著作権は意匠権より弱いのですが、
作者の死後50年も権利が続くので、同じデザインを使いたい人にとっては厄介ですね。

ここまでが復習です。

しかし実は、半永久的に同じデザインを他社が使えなくなる可能性もあります。
それが「商標権」。
商標というと、文字や図形が思い浮かびますが、
立体物も商標を取ることができます。

商標は「自社と他社の商品・サービスを見分ける力」を保護します。
例えば、ペコちゃんの人形を見れば不二家、カーネルサンダースおじさんはケンタッキー、とすぐわかりますよね?

普通は、商品の形状そのものは、商標が取れません。
機能と見た目の美しさの観点からデザインが決まるのであって、
自社と他社の商品・サービスを見分ける力はない、と考えられているからです。

ところが、長年同じ形状のものを製造販売していくと、
多くの顧客が「この形状といえば、○○の商品だね」と認識します。
つまり、「自社と他社の商品・サービスを見分ける力」が発生していて、
例外的に商標権が認められることがあるのです。

まさに、「Yチェア」がそれにあたります。
http://www.sempre.jp/unit/10018/
商品「肘掛椅子」について立体商標で出願して、
いったんは審査で拒絶されたものの、
最終的に登録に至りました。

こうなるともう最強!
なぜなら商標は、10年ごとの更新を続ければ、
権利が半永久的に存続するからです。

もちろん、こういう商品形状で立体商標権がとれるのは、稀ですし、
よほど長年使用して、たくさん売れて、広く知られている、
という証明ができなければ、権利が認められません

Yチェアは、特徴的な形状であるうえ、
60年くらい基本形状が変わっていないし、
日本で10万脚以上売れてるし、
最も売れている輸入家具の一つだし。
ということで、立体商標が認められたのですね。

モノのデザインひとつ取っても、
いろんな権利が取り巻いているんですね。