文字自体に識別力がないと、デザインの違いが決め手になる。「Gomi」と「GOMI」は非類似(「Gomi」事件)

文字自体に識別力がないと、デザインの違いが決め手になる。「Gomi」と「GOMI」は非類似(「Gomi」事件)

結論:「Gomi」や「GOMI」のように、役務内容を直接示すため文字部分の識別力が弱い場合、称呼や観念よりも外観上のデザインの違いが重視され、同じ読み・同じ意味でも非類似と判断されることがあります。

今回の「Gomi」事件では、本願商標「Gomi」と引用商標「GOMI」が、いずれも「ゴミ」と読まれ、「ごみ(廃棄物)」という同じ意味合いを持つにもかかわらず、非類似と判断されました。

ポイントは、「Gomi」「GOMI」という文字自体が、廃棄物処理関連の役務との関係で識別力が極めて弱いと評価されたことです。

その結果、取引者や需要者は文字の意味や読みではなく、商標の見た目の違いによって出所を識別すると判断されました。

事案の概要

本願商標は「」(商願2024-106938)です。

引用商標は「」(登録第5995850号)です。

拒絶査定不服審判は、不服2025-17100です。

本願商標の指定役務には、

  • 廃棄物の処理
  • 廃棄物の再生

などが含まれていました。

引用商標の指定役務にも、

  • 廃棄物の収集・分別及び処分
  • 廃棄物の再生

などが含まれていました。

役務自体は近いものでしたが、審決では商標が非類似であるとして、原査定は取り消されています。

理由1 「Gomi」は役務内容を表す語と認識された

本願商標は、デザイン化された「Gomi」の文字からなる商標です。

しかし、廃棄物処理関連の役務との関係では、「Gomi」は日本語の「ごみ」を欧文字で表記したものと容易に理解されます。

実際に業界では、

  • ごみ
  • ゴミ
  • GOMI

などの表記が一般的に使用されています。

そのため、審決は、「Gomi」の文字部分について、

廃棄物に関する役務であることを示す表示

として認識されると判断しました。

つまり、「Gomi」という文字自体には、出所識別標識としての機能がほとんど認められないということです。

理由2 引用商標「GOMI」も同様に識別力が弱かった

引用商標も、「GOMI」の文字を白抜きで表示した商標でした。

こちらも廃棄物処理関連の役務との関係では、「ごみ」を意味する語として理解されます。

審決は、引用商標についても、

  • 「GOMI」の文字自体は識別力がないか極めて弱い
  • 需要者は文字の意味ではなく商標全体の見た目で出所を識別する

と判断しました。

つまり、本願商標と引用商標の双方について、文字そのものよりも外観が重要になるという前提が置かれたわけです。

理由3 同じ「ゴミ」でも外観が大きく異なっていた

通常であれば、

  • Gomi
  • GOMI

は同じ「ゴミ」と読まれます。

また、観念も同じです。

しかし本件では、「Gomi」「GOMI」という文字部分の識別力が極めて弱いとされたため、称呼や観念の一致は重視されませんでした。

審決は、

  • 本願商標はデザイン化された独特の「Gomi」
  • 引用商標は赤色の長方形内に白抜きで表示された「GOMI」

であり、両者の見た目は明確に異なると判断しました。

その結果、

同じ読み方・同じ意味であっても、外観上区別できる以上、非類似

と結論付けられました。

理由4 識別力が弱い語ほどデザインの違いが重要になる

本件で興味深いのは、一般的な商標類否判断とは少し異なるアプローチが取られている点です。

通常は、

  • 外観
  • 称呼
  • 観念

を総合的に比較します。

しかし、本件では文字自体が役務内容を示すにすぎず、識別力が極めて弱いとされたため、

「ゴミ」という読みや意味ではなく、

どのようなデザインで表示されているか

が重視されました。

これは、識別力の弱い語を商標に採用する場合の重要なポイントです。

同じ語を使っていても、デザインの差異によって非類似と判断されることがある一方で、文字部分だけでは権利範囲が広く認められにくいことも意味しています。

類似になりにくい場合

この事件からすると、次のような場合には非類似と判断される可能性があります。

文字自体の識別力が弱い場合

役務内容や商品内容を直接示す語は、識別力が弱く評価されやすくなります。

双方とも識別力の弱い語を含む場合

本件では、「Gomi」も「GOMI」も「ごみ」を意味する語でした。

双方とも識別力が弱いことが前提となっています。

デザインに大きな違いがある場合

需要者が外観で出所を識別すると考えられる場合には、デザイン上の差異が重視されます。

文字の共通性以外に共通点が少ない場合

単に同じ語を含むだけでは、類似と判断されないことがあります。

逆に類似と判断されやすい場合

一方で、次のような場合には類似と判断される可能性があります。

文字部分に十分な識別力がある場合

造語や独創的な語であれば、称呼や観念の共通性が重視されます。

デザイン差異が小さい場合

見た目が近い場合には、外観上も類似と判断されやすくなります。

共通する文字部分が要部として機能する場合

需要者がその部分に注目すると考えられる場合には、文字部分の共通性が重視されます。

商品・役務分野で識別力を有している場合

業界で一般的に使用される語ではない場合には、通常どおり称呼・観念も重要な判断要素になります。

この事件から分かること

この事件が示しているのは、識別力の弱い語については、文字の一致だけで類似になるとは限らないということです。

本件では、

  • 「Gomi」と「GOMI」は同じ意味を持つ
  • 読み方も同じ
  • 指定役務も近い

という事情がありました。

それでも、「Gomi」「GOMI」という文字部分が廃棄物関連役務を示す語として理解されるため、需要者はその文字自体ではなく、デザインの違いによって出所を識別すると判断されました。

商標実務では、識別力の強い語が共通している場合には類似と判断されやすい一方で、本件のように識別力が弱い語の場合には、外観上の差異が大きな意味を持つことがあります。

次の判断に進むために見るべきポイント

廃棄物処理事業やリサイクル事業などで名称を検討する場合は、次の順番で確認すると判断しやすくなります。

まず、その語が業界で一般的に使われていないか確認する

商品や役務の内容を直接示す語は、識別力が弱く評価される可能性があります。

次に、文字部分だけで権利化できるか検討する

識別力が弱い場合には、文字だけでは十分な保護を受けられないことがあります。

さらに、ロゴやデザインに独自性を持たせる

本件のように、デザインが類否判断を左右することがあります。

最後に、文字商標とロゴ商標を分けて検討する

どの範囲で権利を確保したいのかを整理して出願方針を決めることが重要です。

まとめ

「Gomi」や「GOMI」のように、役務内容を直接示すため文字部分の識別力が弱い場合、称呼や観念よりも外観上のデザインの違いが重視され、同じ読み・同じ意味でも非類似と判断されることがあります。

「Gomi」事件では、

  • 「Gomi」「GOMI」はいずれも「ごみ」を意味する
  • 廃棄物関連役務との関係で識別力が極めて弱い
  • 需要者は文字よりもデザインに着目すると判断された
  • 外観上の特徴が大きく異なっていた
  • その結果、非類似と判断された

という点がポイントでした。

この事例は、識別力の弱い語を商標として採用する場合には、文字部分だけでなくロゴデザインの重要性が高まることを示しています。

サムライツ知財事務所では、記述的・説明的な語を含む商標について、登録可能性の検討や先行商標との類似判断、ロゴを含めた出願戦略のご相談も承っています。
出願前にどの部分が権利範囲の中心になりそうか整理しておくことで、その後のブランド展開や権利活用を進めやすくなります。