「ダブル〇〇」でも登録できる?(「ダブル冷感」事件)

「ダブル〇〇」でも登録できる?(「ダブル冷感」事件)

結論:「ダブル冷感」のように商品の特徴を連想させる表現でも、品質等を具体的に表示しているとまではいえない場合には、商標登録が認められることがあります。

今回の「ダブル冷感」事件では、本願商標「ダブル冷感」について、商標法3条1項3号及び4条1項16号には該当しないと判断され、拒絶査定が取り消されました。

ポイントは、「ダブル」と「冷感」という語から一定の意味合いは理解できるものの、その意味がなお漠然としており、商品の品質を具体的に表示しているとはいえないとされた点です。

事案の概要

本願商標は「ダブル冷感」(商願2024-95580)です。
拒絶査定不服審判は、不服2025-13340です。

原査定では、本願商標が商品の品質等を表示するものとして、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当すると判断されていました。

しかし審決では、「ダブル冷感」は商品の品質等を普通に用いられる方法で具体的に表示するものとはいえず、また商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないとして、原査定は取り消されています。

理由1 「ダブル冷感」の意味は理解できるが、具体性に欠ける

審決はまず、「ダブル」と「冷感」の各語の意味を確認しています。

「ダブル」は、「2重」「2倍」「複」などの意味を有する語です。
「冷感」は、「ひやりとつめたい感じ」を意味する語です。

そのため、「ダブル冷感」全体からは、
「2倍又は2重のひやりと冷たい感じ」
ほどの意味合いを理解し得るとされました。

ただし、審決はここで終わっていません。
その意味合いはあくまで漠然としており、商品の品質を具体的に表示・記述しているとはいい難いと判断しました。

つまり、「冷たそう」「ひんやり感が強そう」といった印象はあるとしても、具体的にどのような品質、成分、機能、構造を示すのかまでは明確ではない、ということです。

理由2 「ダブルの冷感」「W冷感」などの使用例はあった

原審では、本願の指定商品を取り扱う分野において、「ダブルの冷感」「Wの冷感」「W冷感」などの使用例が示されていました。

たしかに、このような使用例があると、「ダブル冷感」も業界で普通に使われている品質表示ではないか、と考えたくなります。

しかし審決は、それらの使用例について、共通して特定の意味合いを表すものとして一般的に使用されているとはいえないとしました。

さらに、これらの使用例が需要者にどのように受け取られているのかを具体的に把握することもできないとしています。

そのため、原審がいうように、「2種類の成分でひんやりとした冷たい感じ」を表現するものとして広く使用されているとはいい難いと判断されました。

理由3 「ダブル冷感」が一般的な品質表示として使われている事実は見つからなかった

審判段階では、職権調査も行われています。

その結果、本願の指定商品を取り扱う分野において、「ダブル冷感」の文字が、商品の品質等を具体的に表示するものとして一般的に使用されている事実は発見されませんでした。

また、本願商標に接する取引者・需要者が、「ダブル冷感」を商品の品質等の表示であると理解するというべき事実も見つからなかったとされています。

この点は重要です。

商標法3条1項3号に該当するかどうかは、単に語の意味だけでなく、指定商品との関係で、取引者・需要者がその表示をどのように理解するかが問題になります。

本件では、「ダブル冷感」は品質を連想させるものではあるものの、具体的な品質表示として一般に理解されるとまではいえないとされたわけです。

条件1 「ダブル〇〇」でも登録されやすい場合

この事件からすると、「ダブル〇〇」型の商標でも、次のような場合には登録可能性があります。

意味が漠然としている場合

「2倍の〇〇」「2重の〇〇」という印象はあっても、それが具体的にどのような品質、成分、機能、構造を示すのか明確でない場合です。

業界で一般的な品質表示として使われていない場合

同じ又は近い表現が多少使われていても、それが共通した特定の意味を持つ品質表示として一般化していなければ、識別力が認められる余地があります。

需要者が具体的な商品内容を直ちに理解しない場合

商標に接した需要者が、「こういう品質の商品だ」と具体的に理解するのではなく、やや抽象的な印象にとどまる場合です。

「ダブル」と後続語の組み合わせが成語化していない場合

「ダブル冷感」が一つの成語や業界用語として定着していないなら、単なる品質表示とはいえない方向に働きます。

条件2 逆に登録が難しくなる場合

一方で、「ダブル〇〇」が常に登録できるわけではありません。

具体的な品質や機能を直接示す場合

たとえば、「ダブル抗菌」「ダブル保湿」「ダブル吸収」などでも、指定商品との関係で、具体的な機能や品質を直接表示すると理解される場合には、3条1項3号に該当する可能性があります。

業界で同じ表現が広く使われている場合

同種の商品で「ダブル〇〇」が一般的に使用され、需要者も一定の品質表示として理解している場合には、識別力は否定されやすくなります。

「2種類の成分」「2つの機能」など内容が明確な場合

広告や商品説明の実情から、「ダブル」が具体的に何を意味するのか明確であれば、商品の品質や機能を表示するものとされやすくなります。

品質誤認を生じる可能性がある場合

仮に「ダブル冷感」と表示しながら、実際には冷感機能がない商品に使うような場合には、4条1項16号の品質誤認も問題になり得ます。

この事件から分かること

この事件が示しているのは、商品の特徴を連想させる表現でも、それだけで直ちに識別力が否定されるわけではないということです。

商標法3条1項3号で問題になるのは、商品の品質等を普通に用いられる方法で具体的に表示しているかどうかです。

そのため、需要者が何となく商品の特徴をイメージできる程度では、なお識別標識として機能し得る場合があります。

本件では、「ダブル冷感」から「2倍又は2重のひやりと冷たい感じ」ほどの意味合いは理解できるものの、それは漠然としていて、商品の品質を具体的に表示するものとはいえないとされました。

次の判断に進むために見るべきポイント

「ダブル〇〇」型の商標を検討するときは、次の順番で見ると判断しやすくなります。

まず、意味が具体的かどうかを見る

「ダブル〇〇」から、商品の品質、機能、成分、構造が具体的に分かるかを確認します。

次に、業界での使用実情を確認する

同じ表現や近い表現が、同種商品で一般的に使われているかを見ます。

さらに、需要者の理解を考える

需要者がその表示をブランド名として見るのか、それとも商品の説明として見るのかを考える必要があります。

最後に、品質誤認のリスクを確認する

仮に登録できるとしても、実際の商品にそのような品質や機能がない場合には、品質誤認の問題が生じ得ます。

まとめ

「ダブル〇〇」という表現でも、商品の品質等を具体的に表示しているとまではいえない場合には、商標登録が認められることがあります。

「ダブル冷感」事件では、

  • 「ダブル」は2重・2倍などを意味する
  • 「冷感」はひやりと冷たい感じを意味する
  • ただし「ダブル冷感」全体の意味は漠然としている
  • 「ダブル冷感」が品質表示として一般的に使用されている事実は見つからなかった
  • 需要者が商品の品質等の表示と理解する事実も確認できなかった

ことから、3条1項3号及び4条1項16号には該当しないと判断されました。

この事例は、説明的に見える商標でも、具体的に何を表示しているのか、業界でどのように使われているのかを丁寧に見れば、登録可能性が残ることを示しています。

サムライツ知財事務所では、こうした「ダブル〇〇」「W〇〇」型の商標について、識別力や品質誤認のリスクを含めた登録可能性の検討もご相談いただけます。
問い合わせる前に比較したい、比較したうえで出願を検討したいという段階でも、早めに整理しておくと次の判断に進みやすくなります。