結論:「〇〇製法」は、後ろの「製法」が弱いと見られると、要部である「〇〇」が共通するため、先行商標「〇〇」と類似すると判断されやすいです。
今回の「ウルトラファインバブル製法」事件では、本願商標「ウルトラファインバブル製法」は、引用商標「ウルトラファインバブル」と類似すると判断されました。
しかも本件では、単に4条1項11号の類似だけでなく、3条1項3号、つまり品質表示にすぎないという理由でも登録が否定されています。
この事例は、説明的な語を後ろに足しただけでは、先行商標との距離を十分に取れないことがあると示したものとして、かなり実務的です。
目次
事案の概要
本願商標は「ウルトラファインバブル製法」(商願2023-33981号)です。
引用商標は「ウルトラファインバブル」(登録第5936099号)で、不服2024-7177において類否が争われました。
審決では、
- 商標法3条1項3号該当
- 商標法4条1項11号該当
の両方が認められ、登録は否定されています。
つまり、本願商標は
- そもそも品質表示にすぎず識別力が弱い
- さらに先行商標とも類似する
という二重の意味で厳しい判断を受けたわけです。
結論に至った理由1――「ウルトラファインバブル製法」は品質表示と理解される
まず審決は、3条1項3号について、「ウルトラ」「ファイン」「バブル」「製法」の各語の意味を丁寧に分解しています。
そのうえで、本願商標全体からは、「超微細な泡の製造方法」ほどの意味合いが容易に認識されるとしました。
さらに、
- 「ウルトラファインバブル」がファインバブル技術に関する用語として定義されていること
- 「ウルトラファインバブル製法」という語が、ウルトラファインバブル技術を使った製造方法という意味で使われていること
- 酒類分野でも、ウルトラファインバブル技術やナノバブル技術を用いた商品が実際に存在していること
といった実情を踏まえ、本願商標を酒類等に使った場合、取引者・需要者は
「ウルトラファインバブル技術を使った製造方法による商品」
と理解するにとどまると判断しました。
つまり、ブランド名としてではなく、商品の品質や製造方法を表す説明として受け取られるということです。
結論に至った理由2――「製法」は識別力が極めて弱い
次に4条1項11号の判断です。
審決は、本願商標「ウルトラファインバブル製法」が、
- 「ウルトラファインバブル」
- 「製法」
から成るものと容易に認識できるとしました。
ここで重要なのが「製法」の評価です。
審決は、「製法」は「製造の方法」を意味する一般語であり、商品の製造方法を表す語として広く使われている以上、自他商品識別標識としての機能が極めて弱いか、ほとんど機能しないと判断しています。
つまり、商標全体の中で「製法」は出所識別の中心にはなりにくく、需要者の印象に残りやすいのは前半の「ウルトラファインバブル」部分だと見たわけです。
結論に至った理由3――要部が引用商標とそのまま共通していた
審決はさらに、本願商標全体の称呼「ウルトラファインバブルセイホウ」は14音と長く、冗長であることから、これを常に一体不可分に把握するとは言えないとしました。
そのため、本願商標の中でも「ウルトラファインバブル」の部分が強く支配的な印象を与え、そこだけで取引に当たることも少なくないとして、この部分を要部として分離抽出することを認めました。
その結果、
- 本願商標の要部:「ウルトラファインバブル」
- 引用商標:「ウルトラファインバブル」
となり、称呼も観念もそのまま共通します。
外観全体では「製法」の有無という差はあるものの、本願商標13文字中11文字を共通にしているため、外観上も相当程度近似した印象を与えるとされました。
つまり、本件はかなりシンプルで、
弱い後半語を除くと、先行商標と中核部分が丸ごと一致していた
という構造です。
条件1――「〇〇製法」が類似になりやすい場合
今回の事例を一般化すると、次のような場合は「〇〇」と「〇〇製法」が類似と判断されやすいです。
「製法」が一般的な説明語にすぎない場合
「製法」は、商品の作り方を意味するごく一般的な語です。
そのため、特定の商品分野で普通に使われているなら、識別力はかなり弱くなります。
前半の「〇〇」部分が需要者の印象の中心になる場合
商標全体の中で、取引者・需要者が主に注目するのが前半部分であるときは、そこが要部と認定されやすくなります。
全体の称呼が長く、後半語を省略して把握されやすい場合
「ウルトラファインバブルセイホウ」のように長い称呼だと、実務上は前半部分だけで把握・記憶される可能性が高くなります。
この点も、要部抽出を後押しします。
引用商標と要部がそのまま一致する場合
要部が先行商標とそのまま同じなら、称呼・観念の共通はかなり強くなります。
その場合、後半に説明語を足した程度では類似回避は難しいです。
条件2――逆に、結論が変わる余地があるのはどんな場合か
もっとも、「〇〇製法」が常に類似になるわけではありません。
次のような事情があれば、結論が変わる余地はあります。
「製法」を含めた全体が一体の造語として把握される場合
たとえば、前半と後半が自然に結び付いて独自のブランド名として理解される場合には、後半部分を単なる説明語と見ることが難しくなります。
前半部分自体が品質表示的で弱い場合
前半の「〇〇」部分も一般技術用語や説明語にすぎないなら、その部分だけを要部として強く把握することが適切でない場合があります。
「製法」以外の付加部分に独自の識別力がある場合
たとえば「〇〇式」「〇〇ラボ」「〇〇メソッド」などでも、付加部分が単なる説明語ではなく、全体の印象形成に強く寄与する場合は、要部認定が変わる可能性があります。
指定商品・役務との関係で「製法」が直ちに説明語といえない場合
商品・役務分野によっては、「製法」が一般的な品質表示として理解されにくいこともあります。
その場合は、後半部分の弱さの評価も少し変わります。
この事例から分かること
この事例が示しているのは、要部が共通している商標は、後ろに説明的な語を付けただけでは類似を回避しにくいということです。
しかも本件では、「ウルトラファインバブル製法」という全体が、酒類等との関係で製法・品質を示す語として理解されると判断されています。
つまり、
- 3条1項3号で識別力が弱い
- 4条1項11号で要部が引用商標と共通する
という形で、両面から厳しく見られています。
ここは実務上かなり重要です。
説明的な語を足すと、差別化したつもりになりやすいですが、実際にはその部分が弱く評価され、むしろ元の部分だけが要部として強く見られることがあります。
次の判断に進むために見るべきポイント
この種の名称を検討するときは、次の順番で考えると判断しやすいです。
まず、後半語が説明語ではないかを確認する
「製法」「方式」「工法」「メソッド」「システム」などは、分野によっては非常に弱く見られます。
ここが弱いと、前半が要部になりやすいです。
次に、前半部分だけで先行商標がないかを見る
全体だけでなく、前半部分だけで先行登録がある場合は要注意です。
後半語が弱ければ、そこが比較の中心になる可能性が高いからです。
さらに、全体が説明的になりすぎていないかを確認する
先行商標との類似以前に、そもそも全体が品質表示・製法表示にすぎないと見られると、3条1項3号でも止まります。
まとめ
「〇〇」と「〇〇製法」は、後ろの「製法」が弱く、前半の「〇〇」が要部として把握される場合、類似と判断される可能性が高いです。
「ウルトラファインバブル製法」事件では、
- 「製法」は製造方法を表す一般語で識別力が弱い
- 本願商標全体は品質表示として理解される
- 要部である「ウルトラファインバブル」が引用商標と共通する
という理由から、3条1項3号と4条1項11号の両方に該当すると判断されました。
この事例は、説明的な後半語を足しただけでは、先行商標との距離は十分に取れないことをよく示しています。
出願前には、全体を見るだけでなく、「どこが要部として見られるか」まで含めて検討することが大切です。
サムライツ知財事務所では、こうした結合商標の類否や、説明語を含むネーミングの登録可能性についてもご相談いただけます。
問い合わせる前に比較したい、比較したうえで出願すべきか検討したいという段階でも、整理しておくと判断しやすくなります。
