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★交通事故の発生件数と死者数
人によって長さは異なりますが、
免許の更新の際には必ず講習を受けることになりますよね。
今年受けた講習の中で言っていたのですが、
昨年の交通事故による人身事故の発生件数は、
309,178件で、一昨年の381,237件に比べて、
72,059件も減ったそうです。
パーセンテージで見ると、18.9%減ですね。
それから、死者数も、
昨年は2,839名で、
一昨年の3,215名から、11.7%減となりました。
聞くところによると、1948年の統計開始以来、過去最低の数字で、
初めて3,000人を下回ったそうです。
もちろん1人も死者が出ないような社会にしなければいけませんが、
統計上はいい傾向と言えるのではないでしょうか。
★「統計上の数値データ」に著作権はある?
そして今、統計の数字をシェアしましたが、
こういった「統計上の数値データ」には、
著作権があるのかどうか?
無断で使用して、SNSとかにシェアしていいのか?
気になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実は「統計上の数値データ」は、
著作物ではないため、著作権がありません。
なので、著作権法上は、無断で使用しても問題ないということになります。
そもそも「著作物」とは、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、芸術又は音楽の範囲に属するもの」
と、法律の条文で定義されています。
「統計上の数値データ」は、単なる事実なので、
「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではないですよね。
だから、著作物には当てはまらないので、
著作権は発生していないということになります。
★データをグラフ化したものに著作権はある?
それでは、統計上の数値データを「グラフにしたもの」に著作権はあるのでしょうか?
ここでも、「思想又は感情を創作的に表現したもの」という定義に照らし合わせてみると、
簡単な図表やグラフであれば、著作物には該当しないと考えられます。
したがって、この場合も一応、無断で使用しても大丈夫ということになります。
もちろん、よほど創作的に表現された図表やグラフは、無断使用NGです。
実際の事件で、とある研究者の図表が、大学の学位論文の中に含まれていて、
著作権侵害を訴えたけれども、そもそも著作権がないと判断されてしまったケースがあります。
(知財高裁平成17年4月25日判決 平成17年(ネ)10038号著作権侵害差止等請求事件)
グラフの表し方には、だいたいパターンが決まっていて、
棒グラフや折れ線グラフ、円グラフなどで表されることが多いですよね。
したがって、あくまでも創作的な表し方がされていないと、
著作権はないと判断されてしまいます。
これは、どれだけ苦労してデータを集めたとか、
まとめるのに苦労したといった事情は、
考慮されませんので、ご注意ください。
★「編集著作物」「データベースの著作物」
あとは、データを元にした場合であっても、
それが「編集著作物」や「データベースの著作物」に該当する場合は、
著作権が発生しています。
「編集著作物」は、素材の選択や配列に工夫をした結果、創作性を有すると判断されたものをいいます。
つまり、データを集めて、新しい視点で選んで並べたものは、
個別のデータには権利がなくても、全体としては創作性があるので、
その全体で著作権が認められるということですね。
この場合は、無断で使用してはいけません。
「データベースの著作物」も似たようなものですが、
こちらはコンピュータで検索できるものですね。
データには、論文や数値、図形、その他の情報が含まれますが、
これらの情報の選択や体系的な構成によって、
全体として創作性があれば、
著作権が認められるということです。
この場合も同様に、無断で使ってはいけないということですね。
つまり、個別の部品としてのデータには、権利がないけれど、
部品を組み合わせた全体で、著作権が認められることがあるよ、
というお話でした。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。