人のモノマネは著作権侵害?

人のモノマネは著作権侵害?

2021年6月8日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/6013808a8ba7e153081eaa42

今回の話は、人のモノマネをしたら著作権侵害になるのか?と言うお話です。

★モノマネとは

辞書サイト「weblio」によりますと、「物真似」とは
「人や動物などの身ぶり・しぐさ・声音などをまねること。また、その芸。」
「能・狂言その他の芸能で、ある役に扮(ふん)してその所作をまね、それらしく演技すること。」
と定義されています。
https://www.weblio.jp/content

笑いをとろうと思ってやる場合もあれば、
リスペクトする人をモデリングするためにやる場合も、
一種のモノマネですね。

人の所作を模倣することから、
著作権を侵害するのではないか?
というのが問題になります。

★侵害ではないけど、いくつか注意が必要

結論から言うと、人の声や表情などをモノマネすることが、
すべて著作権侵害になるわけではありません。
声や表情そのものに著作権が発生しているわけではないからです。

ただし、いくつか注意が必要です。
例えば、歌や振り付け、特徴的なセリフを真似する場合は、
これらの著作権が問題になるので、
許諾を得るなりした方がいいでしょう。
そのモノマネの本人と言うよりも
歌や振り付けなどを創作した人に対する配慮ですね。
アカペラであっても同様です。
歌詞に著作権がありますからね。
スタエフでは「楽曲申請」ができるので、
そちらから申請をしてください。

★音楽や映像等の使用は要注意

それから、モノマネする本人の音源や映像等を使う場合は、
「著作権」とは別に「著作隣接権」と「実演家人格権」も問題になります。

例えば、CDやストリーミングサービスの音源を複製して、それを配信などで流すと、
音楽を創った人に対しては、「著作権」の中の「複製権」「公衆送信権」「演奏権」などが問題になりますし、
レコード会社に対しては、「著作隣接権」の中の「複製権」や「送信可能化権」などが問題になります。
これはスタエフでも認められていないので、注意してください。
また、TVで放送したライブの様子を録画して、動画サイトなどで流すと、
テレビ局に対しては、「著作隣接権」の中の「複製権」や「送信可能化権」などが問題になります
実演しているアーティストに対して「著作隣接権」の中の「録音権」や「録画権」、「送信可能化権」などが問題になります。

このように、結構この辺の音楽や映像等の権利は複雑になっています。

★画像の使用

説明のために、モノマネ本人の画像を使う場合はどうでしょうか?
これは、写真を撮った側に対しては「著作権」の問題が、
被写体である本人に対しては「肖像権」と「パブリシティ権」の問題があります。
本人の写真を使って集客して、お金を稼ぐなどの悪質なケースじゃないと、揉め事にはならないと思いますが、
一応権利侵害をしている可能性が高い点だけは意識されてみて下さい。

★デフォルメのしすぎ

なお、モノマネは面白くするためにデフォルメ、誇張して表現されるのが通常ですよね。
それがもし、本人の名誉を傷つけるほどひどい場合は、
不法行為や名誉毀損で訴えられる可能性があります。
判断基準が難しいですが、第三者がみてもやりすぎと思うようなケースは注意した方がいいです。

★実際の事件

歌手の矢沢永吉さんのものまねタレントが、
矢沢さんの名前や写真を出して広告宣伝行為を繰り返していたところ、
所属事務所から訴えられたことがあったそうです。
この件はものまねタレントが、詫び状と50万円を支払うことで和解になったのですが、
その後矢沢さんが「俺の名前で商売しやがって」とネットの記事で発言したところ、
今度はそのものまねタレントから逆に訴えられた、ということがありました。
流石にこの訴えは棄却されましたが、
モノマネする側は、本人あってこその活動であるという点で、
分をわきまえる必要はあるんじゃないかなと思います。

モノマネを本格的にやっていきたいなら、
きちんと本人の所属事務所に話を通すこと、
これが大事ですよね。

自分の利益だけでなく、他人の利益も考えられるようになりたいなと思いました。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。