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★アイディアに価値はない
よく「アイディアに価値はない」「行動が大事」「アウトプットが大事」
という言葉を色々なところで聞きますよね。
キングコングの西野さんや、ホリエモンさんも言っていますし、
調べると、Googleの創業者のラリー・ペイジ氏も、そのようなことを言っていたそうです。
彼らは、なにもアイディアを出すことが無価値と言っているのではなく、
アイディアは実行に移してこそ、形にしてこそ価値がある、
という意味で言っているのですね。
そしてそれは、法律の世界でも同じようなことが言えます。
よく個人の方から相談でいただくのが、
「こういうビジネスのアイディアを思いついたから、著作権で保護したい」
といった内容です。
ところが、実は「アイディアを著作権で保護することはできない」んですね。
なぜかというと、著作権法でいう「著作物」の定義に当てはまっていないからなんです。
★「著作物」の定義
では「著作物」の定義はなんなのか?これについて解説します。
著作権法に書いてある定義によると、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
が著作物として保護されると書いてあります。
これだけではわかりづらいので、定義を3つに分けて順番に解説していきます。
ちなみに、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」については、説明を省きます。
①思想又は感情
これは、「人間の精神的な活動全般」を指しています。
「人間」なので、例えば、AIが作った小説とか曲が話題になりますが、あれは人間が作ったものではないので、著作物ではありません。
猿が撮った写真も著作物にはなりません。
また、「精神的な活動」なので、例えば、コロナウイルスの陽性者数のような単なる事実やデータも著作物ではありません。
②創作的に
これは、「創作者の何らかの個性」が現れていれば足ります。
創作の程度が優れているかどうかは関係ないので、子供が描いた絵でも著作物になり得ます。
それから、他人の著作物の「単なる模倣」は著作物にはなりません。
模倣した人の個性が表現されていないからですね。
また、ありふれた表現や、誰が表現しても似たような表現になるものも、著作物になりません。
冒頭の「アイディアに価値はない」という言葉も、今やありふれているので、著作物とは言えないでしょう。
③表現したもの
これは、文字や図形や記号や色など、具体的な形で外部に表現されたものをいいます。
今日の本題の「アイディア」は、まだ表現されていない、頭の中の考え・発想・思いつきですよね。
つまり「表現」されていないので、著作物にならないということになります。
★実際の事件
釣りのゲームの著作権を侵害したとの理由で、グリーがDeNAを訴えた事件があります。
これは、両社が携帯でやる釣りのゲームをリリースしていたのですが、
DeNAの「釣りゲータウン2」の魚を釣り上げる時などの画面の動きが、
グリーの「釣り★スタ」の画面の動きに似てるんじゃないか、
という点が争いになりました。
裁判所はどう判断したかというと、
「釣りゲームなら、そういう画面の動きはありふれてるものだよね」
「共通するインターフェースはアイディアであって、保護できないよ」
と判断したのです。
つまり、訴えた部分については著作物ではないとして、
グリーの訴えを棄却したのですね。
この事件は、何が表現で何がアイディアか、線引きが曖昧な部分もあるのですが、
仮にこれを著作権で保護してしまうと、
釣りゲームをつくる時に表現の選択の余地が狭まって困る
というぐらい、釣りゲームとしては当たり前のものだから、
このような判断を下したのだと思いました。
★特許で保護される場合あり
アイディアは著作権で保護できないといいましたが、
実は「特許」で保護できる余地はあります。
特許で保護される「発明」の定義は、
「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」
なので、
「技術的思想の創作」
であるアイディアそのものが保護対象になるからです。
ただし、特許で保護できるアイディアは、
「自然法則を利用」していないといけないので、
単なる思いつきのアイディアでは足りません。
ハードルはかなり高いので、
アイディアは特許で保護だ!と早合点しないようにご注意ください。
以上、アイディアは、著作権では保護されないので、
特許になるようなものでないと、法律上保護はされない、
それ自体に価値があるとは言えないということになります。
ある意味特許にさえ気をつければパクリ放題ではありますが、
今の時代は、あからさまなパクリはネットで叩かれて炎上する、
という法律とは違ったリスクもあるので、
パクる時は慎重にやるようにしてください。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。