【朗報?】「偶然似てた」は著作権侵害になりません

【朗報?】「偶然似てた」は著作権侵害になりません

2021年6月13日

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★「偶然似てた」は大丈夫

例えば、自分で絵を描いたり、文章を書いたり、曲を作ったりしていて、
「もしこれが他の人のと似ていたらどうしよう?」
「著作権侵害で訴えられちゃうかな?」
「他の類似作品がないか、調べないといけないの?」
といった心配をされる方もいらっしゃるかもしれません。

安心してください。
自分で創作したものが、他人の創作したものに、
「偶然似ていた」としても、
著作権侵害にはなりません。

著作権侵害と言うためには、
単に「似てる」だけではなく、
それに「基づいてる」必要があります。
これを「依拠性」と言います。
「依頼する」の「依」に、
「根拠」の「拠」で、
「依拠」です。

つまり、「他人の作品に基づいて、自分の作品を作る」時に
「依拠」していると言えるのであって、
自分の作品が偶然他人の作品に似ていたとしても、
「依拠」にはならないので、問題ないということです。

これは法律で決まっているわけではないですが、
昔からの判例でそう解釈されています。
(最高裁昭和53年9月7日判決昭50年(オ)第324号著作権不存在等確認及び著作権損害賠償請求事件)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/243/053243_hanrei.pdf

★特許や商標との違い

ちなみに特許権や商標権等は、
偶然似ていてもアウトである点で、
著作権とは異なっています。

特許や商標は、出願手続をして、審査を受けて、
登録されて初めて権利になります。
かなりハードルが高いですよね。
お金も結構かかります。
そういったハードルを乗り越えて、
一番先に出願した人が勝つ制度だから、
偶然であっても似てたらダメなんですね。

それに対し、著作権は、創作した時点で権利が発生してしまいます。
手続も必要なければ、お金もかかりません。
まさに今この瞬間も著作権が誕生し続けているので、
あまりにも膨大な量だから、偶然似てしまうのも仕方ないですよね。
だから、偶然似てたとしても、
お互いが独自に創作したものなら、侵害にはならないのです。

こういった違いもあって、特許や商標は絶対的な権利、
著作権は相対的な権利とも言われています。

★無意識で似たものを作ってしまった場合

以上の話を聞いて、「ああよかった」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、以前に作品を見聞きしていて、無意識で似たものを作ってしまった場合、
どうなるでしょうか?
人間の潜在意識は、97%を占めるとも言われているので、
これが果たして「依拠」と言えるのかが問題になります。

結論として、無意識であったとしても、
一度は作品に触れている以上NGとなります。
この場合は「依拠性」が認められて、
著作権侵害になり得ると言うことですね。

「あまりにも厳しいじゃないか!」
と悲痛の声が聞こえてきますが、
依拠性が認められるほど類似のものを作ってしまった、
ご自身の脳の優秀さを呪うしかないのかもしれません。

依拠性がないと反論するのであれば、
原作品にアクセスする機会がなかったとか、
そもそもここが似ていないとか、
独自に創作したんだ、
といったことを立証する必要があります。

★自分の作品と似たものが後から出てきた場合

次に、誰もが何かしらの著作権者でもあるので、
権利者の立場からも考えてみましょう。

自分の作品に似たものが、後から出てきた場合を考えてみてください。
なんか”もやっと”しませんか?

しかも著作権侵害を主張するなら、
侵害されたと主張する側が、
「依拠」してるかどうかを証明しなければなりません。

相手が依拠してるかどうかは、
相手の内面の問題で、直接的に証明することはできないので、
他の客観的な証拠から、間接的に証明することになります。

ではどうしたらいいのでしょうか?
まずは、自分の作品と相手の作品が、これだけ似ていると言う客観的な証拠を出します。
あまりにも似ていたら、さすがに言い逃れできないよね?といったアプローチです。
それから、相手が自分の作品にアクセスできたであろうことを立証します。
SNSフォローしてたとか、いいねしてたなどですね。

このように、偶然似てたとしても著作権侵害にはなりませんが、
無意識で他人の作品に基づいて作っていた場合は、
著作権侵害になってしまう可能性があるので、
十分に注意してください。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。