無許可で朗読配信しても大丈夫なケース

無許可で朗読配信しても大丈夫なケース

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前回、著作権者に無許可で朗読配信してしまった場合に使用料を払うべき?
というテーマでお話をしました。

でも、できれば無許可で朗読配信したいじゃないですか。
いちいち許可とるのめんどくさいですしね。

そんな虫がいい話があるんですか?
というそこのあなた。
あるんです。

前回の冒頭で、無許可での朗読配信は、「「引用」にあたる場合を除いて」
権利侵害になりますとお話したのを覚えているでしょうか?

つまり、「引用」にあたれば、無許可で朗読配信しても大丈夫ということになります。

ただ、この「引用」という条件を、
自分勝手に解釈して、
「出典を示せばいいんだ」と誤解をしている様子が
いろんなSNSで見受けられます。

決してそうではありませんので、
今回は朗読配信における引用の仕方について、
ご説明します。

著作権法の第32条第1項には、引用についてこう記載されています。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

大きく3つの要件が含まれていて、
2つ目については、さらに4つのポイントが含まれているので、
順番に説明していきます。

まず1つ目が「公表された著作物」であることですね。
すでに一般に発行された書籍から引用して朗読するなら問題ありません。
逆に、未公表の作品は朗読できないことになります。

次に2つ目が「公正な慣行に合致するもの」であることです。
こちらは、過去の判例から4つのポイントがあります。

まず1つ目のポイントは、
引用部分がサブで、自分のコンテンツ部分がメインであること」です。

どういうことかというと、
朗読したら、それについての自分なりの解説だとか感想を必ず入れて、
そちらをメインにするということです。

もはや朗読配信というより、
解説とか読書感想配信みたいな感じですが、
朗読メインではダメということですね。

あくまで、報道とか批評とか研究といった目的で、
自分の主張や感想を話すための補強として、
サブ的に引用して朗読するということですね。

具体的にパーセンテージが決まっているわけではないですが、
気持ち自分の意見や考えを多めに話すことを意識すれば、
問題ないと思います。
全体が10分だとしたら、せめて6分くらいは解説とか感想を話す、
みたいな感じです。

2つ目のポイントは、「引用した部分とその他の部分を区別できること」です。
引用して朗読する部分については、解説や感想の部分と話し方を変えたり、
間を空けたり、効果音とかジングルを入れたり、BGMを変えたりすると、
わかりやすいですね。

3つ目のポイントは、「出典を表示すること」です。
引用して朗読に使う本の、タイトル、著者名、発行元など出典を示すことです。
できれば公式サイトとかECサイトのURLも載せてあげたら、
いいのではないかと思います。

4つ目のポイントは、「勝手に表現を変えないこと」です。
引用して朗読する部分は、
わかりやすく言い換えたり、表現を付け足したり省いたりせず
そのまま抜き出すということですね。

勝手にアレンジすると、引用の要件を満たさないというのもありますが、
著作者人格権の中の「同一性保持権」という権利の侵害になってしまう可能性があるからです。

最後3つ目の要件が「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」であること
です。

ここは学説が分かれていますが、
個人的には、引用に「必要な範囲」であればいいと考えています。

さっきも説明したように、
自分の解説だとか感想といったコンテンツ部分がメインなので、
それに必要な範囲だけ抜き出して朗読するということですね。

したがって、本の中の全文を読むのではなく
あくまで一部にとどめておいてください。
そうでないと、引用と認められない場合があります。

以上の点に気をつければ、
無許可で朗読配信しても大丈夫ですので、
ぜひ意識されてみてください。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。