「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。
医療関係の方から時々いただくのが、
人間を手術、診断、治療する方法(いわゆる”医療行為”)は、
特許を取ることができますか?
というご質問です。
実は、上記のような”医療行為”は、基本的には特許の対象となっていません。
医療行為の研究開発は、大学や大病院で医学研究の対象となっており、
特許を付与するニーズが少ないのと、
そもそも営利目的で行うものでないので、
研究開発競争になじまないからです。
また、緊急の事態に、特許付与した医療行為を権利者の許諾なしで行えないとすると、
患者の生命や身体を危険に陥れる可能性があるからです。
しかし、まったくなんの権利も取れないとすれば、
社会貢献としてはいいかもしれないけど、
開発した人の苦労が報われません。
そこで特許の代わりに使える方法として、「商標」を活用する方法があります。
オリジナルで開発した治療法に、何かユニークな名前をつけるとすれば、
「商標権」を取ることができるのです。
例えば、「3Mix-MP法」という、抗菌剤を使って口腔内の病巣を無菌化する治療法があります。
麻酔注射を使わずに歯科治療できるということで、多くの歯科医院で採用されているようです。
http://www.3mix-mp.com/registered/official_link.htm
この「3Mix-MP法」の文字は、医業の分野で商標登録されています(登録第5333828号)。
そして、「3Mix-MP法」は、認定制度を設けており、
認定された医師でしか使用できないようです。
(ちなみに、「3Mix-MP法」は、治療用組成物や治療用キットで特許も取得しています。”モノ”であれば、医療分野でも特許の対象になりますし、権利化したモノは独占的に販売することができるのですね。)
認定制度は、
セミナーで同治療法を学ぶCDRG友の会、
1年以上同治療法を行ってきた認定医、
認定マーク登録された認定医、
一定水準以上の治療技術をクリアし、より高度な治療ができる専門医、
同治療法を指導することができる指導医、
といった階層になっています(「3Mix-MP法」HPより参照)。
このように、優れた治療法の名前を商標登録し、
決められた人だけに使用させることで、
その治療法の価値が高まりますし、
会員ビジネスとしても収益を上げることができるのです。
その収益を、また新たな研究開発に投じることだって、できるわけですね。
それで医療がどんどん発展していくなら、よいことなのではないでしょうか。
もちろん、そのためにはきちんと会員組織や制度を構築し、
さらに医院や患者にも認知度を高めていく必要がありますが、
その制度設計の中に、「商標」が大変重要な役割を果たしているのです。
逆に言えば、商標登録がなければ、そもそも他者に無断で使用され放題なので、
会員ビジネス自体が成り立たないのですね。
医療関係者に限らずとも、
何か自分にしかない技術を持っている方は、
それにオリジナルな名前を付けて商標登録にチャレンジされてみてはいかがでしょうか?
意外なビジネスチャンスが広がるかもしれません。