「あまおう」に学ぶ🍓ブランド名×商標登録のメリット

「あまおう」に学ぶ🍓ブランド名×商標登録のメリット

2021年7月3日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/60556810307f05bf6a4518b7

以前の記事で、
イチゴの「とちおとめ」は「品種登録」されている「品種名」で、
「あまおう」は「商標登録」されている「ブランド名」、
という法的な違いがあることをご説明しました。

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その最後に、
なぜ「あまおう」は、「とちおとめ」とは異なり、
ブランド名として商標登録したのかという問いかけをして終わりました。

今回はそれについてお話いたします。

★「あまおう」ブランド化の経緯

「あまおう」の品種名は「福岡S6号」ですが、
その前に福岡県が主力として売り出していたイチゴが「とよのか」でした。
かつては「西の横綱」とまで呼ばれ、
「東の横綱」の栃木の「女峰」とともに人気の品種だったんですね。

しかし、90年代後半あたりから次第に市場で競争力を失っていきました。
栃木から「とちおとめ」が登場したからです。
「とよのか」は特売用に安く売られるようになり、
ブランド力が低下してしまいました。
そこで、栃木よりも魅力のある新しい品種を開発しようと、
精力的に交配と選抜を繰り返して生まれたのが、「福岡S6号」です。

こうして得られた「福岡S6号」を、
福岡県は最初からブランド化しようと目指しました。
生産販売戦略」と「知的財産戦略」を打ち出して、
ブランド化を進めていったんですね。

その戦略の中で、
品種名の保護とブランド名の保護を分けて考えることにしたということです。

★「あまおう」の由来

こうしてブランド名に採用された「あまおう」の名前は、
実は公募により決定しました。
公募にしたのも、宣伝をかねてですから、
力の入れようが伝わってきますね。

名前の由来は、「あまおう」の特徴である
あかい・まるい・おおきい・うまい
の頭文字をとって名付けられています。
「あまい」ではなく、「あかい」である点に注意です。
実際にスーパーなどに並んでいるものを見てみると、
他のイチゴに比べて赤みが濃いのが一目瞭然ですね。

ひらがなにしたのも、子供にとってわかりやすいからです。
そして、1文字ずつに意味が込められているので、
これを説明するほど、消費者の記憶に残りやすい効果もあります。

★「あまおう」を商標登録するメリット①

そんな「あまおう」ですが、
果実などの分野で、JA全農(全国農業協同組合連合会)が商標登録しています。
品種を特定して商標登録しているわけではない、というのがポイントです。

一般的に品種を特定して商標登録することはないので、
当たり前のように思ってしまいがちですが、
これは「福岡S6号」以外の品種のイチゴにも、
「あまおう」を使うことができる、という意味です。

例えば、品種改良して新品種を開発した場合に、
元の品種名を使うことはできないですよね。
品種が異なるわけですから。

一方、冒頭でご説明したように、
「とよのか」が「とちおとめ」に市場シェアを奪われ、
「とちおとめ」が「あまおう」に押されて、
といった、これまでのイチゴの人気の変遷を考えてみても、
1つの品種の優位性は、未来永劫続くわけではないですよね。
消費者は飽きっぽいので、仕方ないことでもあります。

それから、生産者目線でも、
病気に強い品種の種や苗を扱いたいものですよね。
したがって、新しい病気に対応するような改良品種を開発し続けることは、
大事なことなんです。

そこで「商標」の出番です。
つまり、「あまおう」は「福岡S6号」以外の新品種のイチゴにも使えるので、
「あまおう」ブランドの認知度をずっと継続して利用しつつ、
新しい品種で生産者や消費者のニーズに応えることができるんですね。

★「あまおう」を商標登録するメリット②

品種登録で発生する育成者権は、
品種登録から25年で権利が消滅します。
木本性(もくほんせい)と呼ばれる樹木から育つものは30年ですが、
いずれにしても権利の長さに限りがあるんですね。

一方、商標権は、
以前の記事でもご説明したように、
10年ごとの更新により40年、50年…と
半永久的に権利を持つことができます。

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したがって、品種名として品種登録した場合は、
権利消滅後に他の人も自由に使える、共有財産となってしまいますが、
ブランド名として商標登録しておけば、
その名称は半永久的に、自分の財産として独占して使うことができるんですね。

これは、商標の場合は新しい品種にも使えるという、
先ほど説明したメリットとも親和性があります。

こういったメリットからも、
商標登録したことで、「あまおう」のブランド化に役立っていることがわかるかと思います。

以上のように、商標登録にはメリットがあるのですが、
残念ながらデメリットもお伝えしなければなりません。
それについては、また別の機会にお話いたします。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。