国際デザイン賞を受賞した「イチクリップ」。シンプルな製品ほど知財戦略が光る

国際デザイン賞を受賞した「イチクリップ」。シンプルな製品ほど知財戦略が光る

結論:シンプルな製品だからといって、知的財産で守れないわけではありません。技術は特許、デザインは意匠、商品名は商標というように、複数の権利を組み合わせて保護することが重要です。

半年くらい前に、宮崎県の合同会社フードマークが開発した文房具「ichi-clip(イチクリップ)」が、ヨーロッパの国際デザイン賞「BIG SEE 2025」でグランプリを受賞したことが話題になりました。
https://www.umk.co.jp/news/selection/2025/11/ichi-clipbig-see-2025.html

見た目は非常にシンプルですが、その背後では知的財産を活用した戦略的な権利化が進められています。

「シンプルだけど便利」が評価された

「ichi-clip」は、紙に挟む際に簡単にセットできるだけでなく、本体を回転させることで挟む力を調節できる点が特徴です。


(合同会社フードマーク運営サイト「ひなたの商店」より画像引用)

無駄を削ぎ落とした美しいデザインと、高い機能性が評価され、国際デザイン賞でグランプリを受賞しました。

一見すると単純な構造にも見えますが、だからこそ細かな工夫やアイデアが製品価値を生み出しているといえます。

商品名は商標で保護されている

「ichi-clip」という名称は、商標登録されています(登録第6702513号)。

商標権は、商品名やブランド名を保護する権利です。

仮に同じようなクリップが市場に現れたとしても、他社が同一又は類似の商品について「ichi-clip」と似た名称を使用すれば、商標権侵害となる可能性があります。

良い商品を作るだけでなく、その名前をブランドとして育てていくためにも、商標登録は重要な役割を果たします。

シンプルな構造でも特許出願の対象になる

さらに、「ichi-clip」の構造については特許出願もされています(特願2022-160193号)。

現時点では審査中であり、最終的に特許権が認められるかどうかは分かりません。

しかし、この事例から分かるのは、一見すると単純に見える構造であっても、技術的な工夫があれば特許出願の対象になり得るということです。

「こんな簡単なものでは特許は取れない」と考えて出願を諦めてしまうケースもありますが、実際にはシンプルな発明ほど実用性が高く、権利化される例も少なくありません。

新商品「ichi-ring」でも知財を活用

フードマークは、新たな商品として「ichi-ring」というキーリングも展開しています。


(合同会社フードマーク運営サイト「ひなたの商店」より画像引用)

ばねの力を利用し、片手で簡単に着脱できることが特徴です。

この「ichi-ring」という名称についても商標出願がされています(商願2026-17471号)。

さらに、製品デザインそのものについては、すでに意匠登録(登録第1821982号)を受けています。

つまり、

  • 商品名は商標
  • 製品デザインは意匠
  • 技術的特徴は特許

というように、それぞれ異なる知的財産権を組み合わせて保護しようとしていることが分かります。

この事例から分かること

この事例が示しているのは、優れた製品ほど、一つの権利だけではなく複数の知的財産権で守ることが重要だということです。

「シンプルな製品だから模倣されやすい」と考えることもできますが、裏を返せば、知財による保護の効果が大きい製品ともいえます。

技術面は特許、見た目は意匠、ブランドは商標というように、それぞれの制度を組み合わせることで、模倣品への対抗力を高めることができます。

実際、「ichi-clip」や「ichi-ring」は、そのような知財戦略を意識した製品開発の好例といえるでしょう。

次の判断に進むために見るべきポイント

新商品を開発したときは、次のような視点で知的財産を整理してみると、自社の強みが見えやすくなります。

まず、技術的な工夫がないか確認する

構造や機能に新規性があれば、特許や実用新案の対象となる可能性があります。

次に、特徴的なデザインがないか確認する

見た目の形状やデザインに特徴があれば、意匠登録による保護を検討できます。

さらに、商品名やブランド名を確認する

ブランドとして長く使う予定がある名称であれば、早い段階で商標出願を検討することが重要です。

最後に、複数の権利を組み合わせられないか検討する

一つの制度だけに頼るのではなく、特許・意匠・商標を組み合わせることで、より強固な知財戦略を構築できます。

まとめ

シンプルな製品ほど、「誰でも思いつきそう」と思われがちですが、実際には細かな工夫やブランド価値が積み重なって成り立っています。

「ichi-clip」の事例では、

  • 商品名は商標登録されている
  • 構造については特許出願されている
  • 新商品の「ichi-ring」は名称を商標出願し、デザインは意匠登録されている

というように、複数の知的財産権を活用した保護が進められています。

この事例は、シンプルな製品であっても、「技術」「デザイン」「ブランド」の各側面から権利化を検討することの重要性を示しています。

サムライツ知財事務所では、新商品の開発段階から、特許・意匠・商標を組み合わせた知財戦略のご相談も承っています。
「このアイデアは権利化できるだろうか」「どの制度を使うのが適切だろうか」といった段階でも、早めに整理しておくことで、その後の事業展開をより有利に進めやすくなります。

※サムネ画像は、合同会社フードマーク運営サイト「ひなたの商店」より引用