「飲める〇〇」は商標登録されづらい?――“流行りフレーズ”が刺さる落とし穴

「飲める〇〇」は商標登録されづらい?――“流行りフレーズ”が刺さる落とし穴

生成AIで商標名を考えると、つい「特徴が伝わる言い方」に寄せたくなります。
食べ物系で言えば、たとえば「飲める〇〇」。
柔らかさや新しさが一瞬で伝わるので、マーケ的には強い表現です。

でも、商標の世界ではこの“分かりやすさ”が、そのまま拒絶理由になりやすい
ネーミングとしては良いのに、商標としては通らない」という典型にハマりがちです。


実例:「飲めるフレンチトースト」は3条1項6号で拒絶→裁判でも覆らず

「飲めるフレンチトースト」(商願2023-110765)を「フレンチトースト,飲食物の提供」等の分野で商標出願したところ、特許庁は次のように判断しました(不服2024-009943)。

  • 「飲める○○」は、商品の特性や優位性を示す語として用いられている表現の一類型
  • そのため、出所表示としては理解されず、商標法3条1項6号(識別力なし)に該当し得る

出願人はこの判断を不服として裁判で争いましたが、結論は覆りませんでした(令和7(行ケ)10040)。
裁判所は、「飲める〇〇」というフレーズが、食品の特性や優位性を表す比喩的表現として取引上普通に採択・使用されている以上、同種食品の取引において必要適切な表示として、特定人に独占使用を認めるのは公益上適当でない、と整理しています。

「『飲める〇〇』は直ちに特性を表すものではない」「登録例もある」「取引実情を示す例が少ない」などの主張もされましたが、認められませんでした。

ちなみに、別の出願人が後日出願した「飲めるクリームパン」(商願2024-024072)も、同様の理由で商標法3条1項3号違反(識別力なし)として拒絶されています。過去には「飲める〇〇」の登録例が多数存在しているのですが、2021年あたりから厳しくなり始めているので、今後この傾向は続くものと考えられます。


なぜ「飲める〇〇」は弱くなりやすいのか:強みがそのまま弱点になる

商標登録の場面で問われるのは、「他社の商品・サービスと区別する目印になっているか」です。
ところが「飲める〇〇」は、言葉の役割が“目印”ではなく“説明”に寄りやすいのですね。

  • 食感や状態(飲めるくらい柔らかい)を伝える
  • 体験価値(新しい・手軽)を伝える
  • 優位性(他と違うポイント)を伝える

こうした「伝わりやすさ」があるほど、審査では「商品の特徴を言っているだけ」と見られやすくなります。
結果として、「この言葉を見たときに、特定の事業者を思い浮かべるか?」という点で弱くなってしまうのです。


生成AIでネーミングすると、同じ罠に落ちやすい

ここは、狙っていないのに起きがちです。

生成AIは、基本的に「伝わる言い回し」「魅力が一発で伝わる表現」を優先して提案します。
コピーの優秀さは、商標の優秀さと一致しません。

むしろAIは、次の方向に寄せるのが得意です。

  • 一発で意味が伝わる
  • 形容が強い
  • 流行りの言い回しを拾う

これらはマーケでは武器ですが、商標では「説明的」「識別力が弱い」と評価されやすい要素でもあります。
「飲める〇〇」は、その典型に入ります。


どうするのが現実的?――「ネーミング」と「権利化」は分けて考える

「飲める〇〇」を商品コピーとして使うこと自体は、必ずしも悪くありません。
問題は、それを“商標の本体”として取りにいく設計です。

実務的には、たとえば次の方針が現実的です。

  • 取るべき商標(権利の核)は別に用意する(造語/独自の屋号/識別力の強い語)
  • 「飲める〇〇」はコピー寄りの表現として運用し、権利は別の看板で押さえる
  • どうしてもフレーズを押さえたいなら、使用実績(周知性)も含む戦い方が必要になる可能性を織り込む

要するに、「売れる言い方」=「登録できる商標」ではない、という前提で設計することです。


最後に:登録可能性を上げたいなら、最初の設計に投資する

「飲める〇〇」のように、魅力が伝わる表現ほど、商標としては“説明”に寄って落ちることがあります。
出願してから気づくと、時間もコストも余計にかかりやすい。

商標の登録可能性を高めるなら、最初の段階で、権利の取り方(どの名称を核にするか、指定商品・役務をどう設計するか)を整理しておくのが近道です。

もし「このネーミングでいけるのか不安」「拒絶のリスクを減らしたい」という段階であれば、
20年以上のキャリアを持つ商標専門のサムライツ知財事務所にご相談ください。