商標の価値が0になる「普通名称化」を防ぐ方法

商標の価値が0になる「普通名称化」を防ぐ方法

2021年7月20日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/606ada3d276954d519a93f81

先日、せっかく取った商標が、
使い方・使われ方によっては「普通名称化」してしまうリスク
についてご説明しました。

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★普通名称化とは?

「普通名称化」というのは、
本来は「特定の人や企業の商品やサービスのブランド」を示す商標だったのが、
その商品やサービスの一般的な名称」であると認識されてしまった状態を言います。

具体例として、「エスカレータ」「正露丸」「巨峰」「ホッチキス」「サニーレタス
雷おこし」「うどんすき」「招福巻」「ポケベル」などがあります。
どれも聞いたことがあると思いますが、
これらは元々、特定の企業のブランド名だったのが、
みんなが使える一般的な名称になってしまったというわけです。

これって、商標としての価値は0になることなので、
せっかくお金と手間をかけてきたのが水の泡になってしまうんですよね。
それどころか、自分の商品と他人の商品との識別ができなくなって、
「どっちも同じじゃん」と思われてしまうので、
結構怖いことなんです。

★「普通名称化」を防ぐ方法

そこで、「普通名称化」をいかに防ぐかですが、
ざっくり説明すると、
「不特定多数の人が、商品・サービスについて見境なく商標を使用してしまう」
のを防ぐということになります。

ではそのための具体的な方法は?
と言った時に、3つあります。
①「登録商標であることをお知らせする」こと
②「商標の力が発揮されるよう、使い方に気をつける」こと
③「無断使用に対して、使用中止のお願いや警告や法的手段をとる」こと
です。

以下、順番に説明していきます。

★①登録商標であることをお知らせする

まず1つ目は、「登録商標であることをお知らせする」ことです。
「お知らせし続ける」と言った方が正確かもしれません。

具体的には、登録商標に ®︎ マークをつけることや、
「〇〇」は株式会社××の登録商標です」といった表記を付け加えること
などがあります。
また、ウェブサイト等に商標の取扱についてのページを設けておくことも重要です。
®︎ マークについては、以前にもご説明しましたので、
そちらもぜひご参考にされてみてください。

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例えば、ちょっと思い出して欲しいのですが、
こけて膝擦りむいたり、包丁で指切ったりしたときに、
絆創膏って貼りますよね。
でも絆創膏のことを「バンドエイド」って言ってしまったことってありませんか?
まるで「絆創膏」の英語が「バンドエイド」であるかのように。
でも「バンドエイド」は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの登録商標なんですね。
こういうのを防ぐために、
「バンドエイド」のHPや検索結果のページでは、
バンドエイド®︎」「BAND-AID®︎」というように表記をして、
「バンドエイド」「BAND-AID」は登録商標ですよと、
認識してもらう努力をしているというわけです。

★②商標の力が発揮されるよう、使い方に気をつける

2つ目は、「商標の力が発揮されるよう、使い方に気をつける」ことです。
「商標の力が発揮される」とは、
自分と他人の商品やサービスを見分けられる状態を保つということです。

例えば、英文字の場合は、大文字と小文字の別をきちんとルール化して、
下手にカタカナ表記しないとか、
変形しないとか、
漢字・ひらがな・カタカナがバラバラにならないようにするとか、
他の文字や図形等と混ざらないようにする
といったところです。
そのために、商標の部分をカギカッコでくくるとか、
太字にするとか、書体を変える
といった工夫をしているところもあります。

また、その商品やサービスの一般名称と、登録商標を、
きちんと併記することも大事な工夫です。

先程の「BAND-AID(バンドエイド)」の例で言えば、
英文字表記の場合は
「BAND」と「AID」の間にハイフン「-」を忘れないとか、
小文字を入れないとか、
救急絆創膏の「BAND-AID」」のように表現するとかですね。

★③無断使用に対して、使用中止のお願いや警告や法的手段をとる

3つ目は、「無断使用に対して、使用中止のお願いや警告や法的手段をとる」ことです。

結局のところ、普通名称化の防止は、
「不特定多数の人が、商品・サービスについて見境なく商標を使用してしまう」
のを防ぐことですよね。
なので、取引先や消費者、同業他社、マスメディア、出版社などにより、
無造作に使われないように、ちゃんと注意喚起して、
誤った使い方は正していくことが大事です。

例えば、自分の登録商標が、
さも一般名称であるかのように辞書に載っている
なんてことが起こり得るんですね。
マスメディアの報道とかでも、よく起こります。
その際に、出版社などに連絡して、
それは当社の登録商標だから、そのような使い方をしないようにお願いします
と、お願いをするといいと思います。

またまた「BAND-AID(バンドエイド)」の例で言えば、
うちのMacやiPhoneで
「バンドエイド」ってカタカナで打つと、
変換で絆創膏の絵文字🩹が出てきてしまいます。
また、辞書サイトでも、
「絆創膏」の英訳で「band aid」が出てきたりします。
こういうのは、本当はやめさせた方がいいんですよね。

当然、同業他社が使っている場合は、
厳しく指摘して構いません。

このように、普通名称化は、商標の価値が0になってしまう、
とても怖いものですが、
それを防ぐためには、商標登録された後も、
きちんと管理していく必要があるということなんですね。

特に斬新な商品やサービスを提供されている方は、
普通名称化のリスクが高いので、
ぜひ覚えておいていただければと思います。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。