商標のトラブルというと、「似た名前のせいでお客さんが間違える(混同)」をイメージしがちです。
でも、著名なブランドほど怖いのは、必ずしも“混同”だけではありません。
それが ダイリューション(希釈化) です。
ダイリューションは、ざっくり言うと 「著名商標の強さ(独自性)や良いイメージが、周辺の使用によって薄まったり傷ついたりする現象」 を指します。
つまり、「間違えて買われるかどうか」とは別に、ブランドの“特別感”そのものが削られる というダメージです。
目次
希釈化の代表的な3類型
ダイリューションは、実務的には次の3つに整理すると理解しやすいです。
1)ブラーリング(Blurring)
著名商標の独自性が薄まる(ぼやける) タイプです。
本来なら、その商標を見ただけで「特定の一社」を強く思い出せるのに、周辺で似た標章が増えていくことで、
- 「あのブランド名、他にもあるよね」
- 「唯一無二の感じが弱くなった」
という状態になっていきます。
“ブランドとしての輪郭がぼやける”のが、ブラーリングです。
例えば、清涼飲料水に「Tesla」という商標が付されていた場合、「Tesla」を電気自動車のブランドとしてのみ関連づけていた消費者が、清涼飲料水にまで「Tesla」を関連づけ始めるような状態が該当します。
2)ターニッシュメント(Tarnishment)
著名商標のイメージが毀損される(汚される) タイプです。
たとえば、下品・不衛生・低品質・反社会的な文脈で似た標章が使われると、需要者側の感情として
- 「なんか嫌な印象がついた」
- 「高級感や清潔感が落ちた気がする」
という反応が起こり得ます。
“良いイメージが傷つく”のが、ターニッシュメントです。
日本では「ポリューション(pollution)」と呼ばれることが多いです。
例えば、「NIKE」というブランド名を、スポーツブランドの「NIKE」と競合するジャンクフードのブランド名として使用するような状態が該当します。
3)フリーライディング(Free-riding)
もう一つ、整理として押さえておきたいのが フリーライディング です。
これは、混同がなくても、著名商標が積み上げてきた信用・吸引力・ブランド力に “ただ乗り” するタイプです。
- 「あの有名ブランドを思い出させれば売れる(得する)」
- 「評判やイメージの“おいしいところ”だけ借りたい」
という発想で、周辺分野で似た標章が使われる状況を問題にする考え方です。
ブラーリングが「独自性の希釈」、ターニッシュメントが「イメージ毀損」だとすると、フリーライディングは 「名声・吸引力の収奪(不当な利益)」 に焦点があるイメージです。
例えば、ラグジュアリーホテルの商標として「Rolex」を無断で使用するような状態が該当します。
※参考:「Trademark Dilution (Intended for a Non-Legal Audience)」(INTA)
https://www.inta.org/fact-sheets/trademark-dilution-intended-for-a-non-legal-audience/
ダイリューション対策としての「防護標章登録」も有効
ここで、著名商標の守りをもう一段厚くする手段として押さえておきたいのが 防護標章登録 です。
(特に「非類似分野で“寄せてくる”動き」への備えとして、実務上とても重要になります。)
防護標章登録で何ができる?
防護標章登録は、ざっくり言うと、
- 著名な登録商標 について
- 他人が 非類似の商品・役務 に使うことで
- 出所の混同を生じさせるおそれ があるとき
その“混同のおそれがある範囲”まで、禁止的効力を拡張できる 制度です。
※参考記事:「著名な商標をより手厚く保護するための「防護標章登録」とは?」
なぜダイリューション対策になる?
希釈化(特にブラーリング/フリーライディング)は、現場感として
- 周辺分野で似たネーミングが増え、著名商標の“特別感”が薄れる
- 非類似分野で“寄せる”ことで、知名度や信用にただ乗りされる
という形で起こりやすいです。
このとき、防護標章登録があると(要件を満たす範囲で)
「非類似だからセーフ」という逃げ道を狭める設計 ができ、著名ブランド側の守りが一段強くなります。
もちろん、防護標章登録は「著名性」など要件のハードルがあり、誰でも使える万能策ではありません。
ただ、著名段階に到達したブランドでは、“後追いの保険”として検討価値が高い 施策です。
まとめ:希釈化は「混同がないから安心」では起こる
- ダイリューションは、混同がなくても ブランドの強さやイメージが削られる リスク
- 代表的な整理は ブラーリング/ターニッシュメント/フリーライディング
- 著名商標の防衛策として 防護標章登録 が有効に働き得る(要件は要注意)
防護標章登録の出願をご検討の方へ
もし、すでにブランドが一定の知名度を持ち、非類似分野からの“寄せ”や便乗が気になってきたなら、
防護標章登録は「守りの厚み」を一段上げる選択肢になり得ます。
著名性の整理(根拠資料の作り方)から、指定範囲の設計、出願手続までサポートできますので、
「うちは防護標章の要件を満たしそうか?」という段階から、お気軽にご相談ください。

