一見良さげに見える「スカイベリー」商標、3つの惜しい点

一見良さげに見える「スカイベリー」商標、3つの惜しい点

2021年7月15日

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https://stand.fm/episodes/6063e687b5b866111809e375

前回の記事では、「スカイベリー」の優れた点を挙げてきましたが、

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商標登録の取り方の点では、
ちょっと惜しいなと思うところが3点あるので、
それについてお話いたします。

★惜しい点①「余計な費用がかかってる」点

まず、「本来かけなくてもよかった費用がかかっている」という点です。
栃木県は、カタカナの「スカイベリー」の商標について、
2012年に29,30,32,33類で商標登録しました(登録第5519465号)。
その後2014年にも、同じ分類でカタカナの「スカイベリー」の商標登録をしています(登録第5686275号)。

1番目の方をA、2番目の方をBとします。

ここで、なぜBの出願をして、2倍もお金がかかることをしたのかというと、
Aの出願で指定してなかった「乳製品」だとか「飲料用野菜ジュース」「酎ハイ」といった商品を、
権利に含める必要があったからです。

商標は、区分を指定すれば、その区分の中全部権利範囲になるわけではなく、
権利を取りたい商品・サービスを1つ1つ指定しないといけません。
指定から漏れてしまったところは、誰でも使うことができるし、
先に出願したもの勝ちになって、自分が使えなくなることもあります。

しかし、こういったものは、本来最初の出願の時に気づいて含めることができれば、
余計にお金がかかることはなかったので、やはり惜しいなと思います。

★惜しい点②「更新の手間・費用が2倍」な点

2つ目の惜しい点は、
Bの出願を、Aの出願を包括する形で出せばよかったのに、
という点です。
きっと、Aの方を補う形で出したかったのでしょうが、
このままだと、権利が2つに分かれてしまっているので、
10年ごとの更新手続の手間も費用も2倍になってしまいます。

無駄ですよね。

それなら、Aの内容を取り込んだ形で、
仕切り直しでBを出せばよかったのではと思います。
もちろん、そのまま出すと、
BはAの存在を理由に拒絶理由が出る可能性があるのですが、
その時はAを権利放棄すれば良いですね。
権利の空白期間は生じるので、多少リスクはありますが、
AとBは2年くらいの差しかないので、
さほど問題は生じないと考えられます。

★惜しい点③「図形の方は権利範囲が狭い」点

3つ目の惜しい点は、
図形の商標登録は権利範囲が狭い」点です。

栃木県は、「スカイベリー」の図形のロゴについても
商標登録しており(登録第5757603号)、
そのことは素晴らしいのですが、
第29,30,31類の商品しか指定しておらず
32,33類は権利範囲外となってしまっています。

指定してない32,33類は、
清涼飲料とかジュースとかお酒の分野ですね。
つまり、
清涼飲料とかジュースとかお酒の分野では、
このロゴマークの権利を取っていないから、
基本的には誰でも使用できるし、
誰でも先に商標登録できる状態です。
(ロゴが周知商標などと判断されたら別ですが)

先に商標登録されてしまったら、
こちらが使えなくなるので、
ちょっと問題ですよね。

ちなみにこの件は、栃木県が権利者ということで、
カタカナの「スカイベリー」については、弁理士が代理でついておりません。
また、図形の方については弁理士がついていますが、
なぜこんな取り方をしたのか、費用の予算の面で32,33類を指定できない事情があったのか、
ちょっとわからないですね。

いずれにしても、
やはり最初の時点で、
どの商品・サービスに使うのかについて、
ある程度広めに考えて出願するのが望ましいということです。

ちょっと余計なお世話かもしれませんが、
どうしても言いたかったので、
共有させていただきました。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。