ビックリマンに学ぶ「キャラクター商標」戦略|弁理士が教える“偽物対策”と商標出願の勘所

ビックリマンに学ぶ「キャラクター商標」戦略|弁理士が教える“偽物対策”と商標出願の勘所

40〜50代の方なら、子どもの頃に一度は集めた(そして親に怒られた)「ビックリマンシール」。
ロッテ公式のシール検索サイトでは、検索対象だけでも2483枚が表示されています。
https://www.lotte.co.jp/products/brand/bikkuri_man/bmsearch/

そして今、驚くことに「自分の顔写真をAIでビックリマン風キャラクターにして名刺を作れる」公式サービスまで登場しています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002560.000002360.html

ここで今日の本題です。

キャラクター(絵柄)も、商標登録で守れることがある。
ロッテのように「キャラクター=ブランド資産」な企業ほど、ここを厚くしています。


なぜ“キャラクター商標”が効くのか:偽物はロゴだけ真似するとは限らない

ビックリマンには、かつて偽物(いわゆる「ロッチ」)が出回り、社会問題化したことがあります。報道等でも触れられており、発売元(メーカー側)が訴訟などのダメージを受けて解散した旨が紹介されています。
https://bunshun.jp/articles/-/8403

偽物・便乗が厄介なのは、こんな形で“逃げ道”を作る点です。

  • ロゴは少し変える(例:「ロッテ」→それっぽい別表記)
  • キャラ名は変えるが、絵柄の雰囲気は寄せる(ロッチの場合は丸パクリでしたが)
  • 「公式ではない」旨を書いて、グレーで売る

だからこそ、ロゴや社名だけでなく、「見た目(キャラ)」まで権利で囲う発想が効いてきます。


しかも今は“AIで量産できる時代”。境界があいまいになりやすい

上述の通り、公式でさえ「AI×ビックリマン世界観」の名刺サービスを期間限定で出しています(2025/12/16開始〜2026/1/25終了予定等)。

AI時代は、悪意がなくても

  • 「この絵、どこかで見た…」が大量発生
  • 外注デザイナーが“寄せたつもりはない”と言い張れる
  • 炎上したとき、説明コストが跳ね上がる

という状況になりがちです。

守る側は、“止める根拠”を先に用意しておくのが強いです。


キャラクターの「何を」商標出願するべきか(実務の勘所)

キャラクター周りは、だいたいこの4つに分解して考えると設計がラクです。

1) キャラ名(文字商標)

まずは王道。
グッズやSNS、イベント名に使われるなら特に重要です。

ビックリマンで言えば、「シャーマンカーン」(登録第5352398号)、「スーパーゼウス」(登録第6267360号)などのキャラ名が商標登録されています。

2) キャラの絵柄(図形商標)

ここが今日のポイント。
“見た目”で覚えられるキャラほど、図形(絵柄)の権利化が効きます。

3) キャラ名+絵柄(結合商標)

「名前だけ」「絵だけ」を少しずつ変えて逃げる相手に対して、守りを厚くできます。

ビックリマンは、まさにこのキャラ名+絵柄で多数のキャラクターを商標登録しています。


(登録第5823410号他)

(登録第5823411号他)

(登録第5823412号他)

(登録第5823413号他)

(登録第5833913号他)

(登録第5833916号他)

4) 決め台詞・シリーズ名(文字商標)

拡散されやすいフレーズ、イベント名、サービス名にも効きます。

※商標の検索・確認は、特許庁が案内している通り J-PlatPat で無料閲覧できます。


“区分(指定商品・役務)”で失敗すると、止めたい相手が止まらない

キャラクター商標は、何に使うかで指定範囲(区分)が決まります。

たとえば、よくある使い方はこんな感じです。

  • グッズ化(Tシャツ、ステッカー、キーホルダー等)
  • SNSアイコン/YouTubeサムネ等の運用
  • 店頭の看板キャラ(飲食・工務店・美容系)
  • イベント、コミュニティ、オンライン講座
  • アプリ、Webサービス、会員サイト

ここを外すと、「登録はあるのに、肝心の模倣に刺さらない」ことが起きます。
“将来やりたい展開”まで含めて棚卸ししてから出願設計するのがコツです。


キャラクター商標が「特におすすめ」なケース

次のどれかに当てはまるなら、キャラクター商標は検討優先度が上がります。

  • キャラが売上の柱(グッズ、イベント、ライセンス)
  • ファンがついていて“二次創作風”が増えてきた
  • 外注デザイナー・制作会社に発注している(権利帰属がブレやすい)
  • 海外展開/越境ECも視野にある
  • 「うちの顔」になるマスコットを作ったばかり

弁理士としての提案:最低限セットと、攻めのセット

最低限セット(まず守る)

  • キャラ名(文字)
  • キャラ絵(図形)※メインビジュアル

攻めのセット(伸ばす前提で囲う)

  • キャラ名(文字)+絵柄(図形)+結合
  • シリーズ名/イベント名/サービス名
  • 展開予定の区分まで設計(グッズ・広告・デジタル等)

「どこまでやるべき?」は、予算と使い方(ビジネスモデル)で最適解が変わります。ここが、まさに弁理士の腕の見せどころです。


相談の入口:まずは「棚卸し」だけでも価値があります

もし今、

  • マスコットを作った
  • いい感じのキャラが育ってきた
  • パクリっぽいのを見かける
  • これからグッズや講座に広げたい

という状況なら、最初にやるべきはシンプルです。

「キャラの要素」×「使い方」×「優先順位」を整理する。
その上で、先行商標の確認(調査)と、区分設計→出願方針まで落とし込みます。

その際は弊所サムライツ®︎がお力になれるかと思いますので、ぜひご相談ください。

※サムネ画像は、商標登録第5833916号公報より引用