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商標が「識別力なし」として拒絶された…どうする?
「商標が『需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識できない』として拒絶されてしまった…」
「会社の理念やスローガンを商標にしたのに、なぜ登録できない?」
「意見書や再出願で登録の可能性を高める方法はある?」
✅ 商標法第3条第1項第6号は、需要者が特定の業者の商品・役務であると認識できない商標は登録できないと規定しています。
✅ しかし、適切な対応を取れば、登録できる可能性があります!
本記事では、拒絶理由を覆すための方法、意見書提出のポイント、そして再出願の戦略を解説します。
→ まずは、なぜ拒絶されたのかを理解しましょう。
商標法第3条第1項第6号とは?
商標法第3条第1項第6号では、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標は登録できない」と定められています。
つまり、消費者が「どの会社の商品・サービスなのか」を判別できない商標は、識別力がないと判断され、登録が認められません。
✅ 審査で「識別力なし」と判断される例
1. 宣伝広告や企業理念を表示する標語のみからなる商標
- 「安全第一」「出張買取No.1」(宣伝広告的なスローガン)
- 「次の世代に、明るい未来を届けたい。」「未来をクリエイトする・・・」
(企業理念・経営方針を示すフレーズ)
💡 こうしたフレーズは、特定の企業やブランドを示すものではなく、誰でも使用できるため識別力がないと判断されます。
2. 単位・元号を表示する商標
- 「グラム」「centimeter」
- 「平成」「令和」
💡 これらは、特定の業者の商品・役務を示すものではなく、誰でも使用できるため、商標登録できません。
3. 地理的名称を表示する商標
- 「京都高麗人参」(不服2022-10587)
- 「TaiShan」(←中国の名山「泰山」を欧文字で表記したものとして拒絶(不服2020-16489))
(不服2022-10587)
💡 事業者の設立地・事業所の所在地等を表す地理的名称は、「この地域の商品・サービス」という印象はあっても、特定の業者の商品・サービスを識別することができないため登録できません。
4. 単なる地模様や装飾的なデザイン
(不服2009-8044)
(不服2009-650170)
💡 こうした連続する模様や単純な柄は、商標というより装飾として認識されるため、識別力なしと判断されます。
5. 単に一般的な広告媒体又は取引対象物、商品の装飾を表してなると認識・理解される立体商標
(不服2021-17434)
(不服2020-4857)
💡 「この形状=特定の会社の商品」と認識できない限り、商標登録は難しくなります。
拒絶理由通知を覆すための3つの方法(優先順位順)
✅ 1. 意見書を提出し、識別力があることを主張する(最も有効な方法)
審査官の判断に異議を唱え、商標が識別力を持つことを論理的に説明する意見書を提出できます。
主張のポイント:
- 一種の造語として認識され、識別力があることを説明
- 一般的な使用事実や特定の商品等を想起させる特段の事情がないことを説明
- 過去の登録事例を引用し、登録の可能性を示す

「家具の小売等」の分野で、商標「家具350」を出願したところ、取扱商品名とサービスの提供で広く使用される数字を単に一連に表したにすぎないとして、一度は拒絶されました。しかし、構成全体のまとまりのよさから一種の造語として認識されると判断され、「家具〇〇〇(数字)」のような文字の一般的な使用事実もないことから、登録になりました(不服2023-12638)。
📌 意見書の提出期限は拒絶理由通知を受け取ってから40日以内のため、迅速に対応する必要があります!
✅ 2. 使用による識別力の取得を主張する(可能であれば)
商標が長期間にわたって使用され、消費者が特定の企業の商品やサービスを示すものとして認識している場合、識別力が認められる可能性があります(セカンダリーミーニング)。

商標「Aoyama Flower Market」は、「東京都港区青山にある花屋」「青山氏による花屋」程の意味合いを認識するにすぎず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないという理由で一度は拒絶になりました。しかし、長年の使用実績や業績等を証拠として提出し、特定の企業の商品等を表すものと認められ、登録になりました(不服2023-11485)。
証明に使用する資料:
- 販売実績や広告宣伝の記録(例:売上データ、広告費、掲載メディア)
- 消費者の認知度を示すアンケート調査
- 商標が指定商品等との関係でブランドとして機能している(特定の企業の業務に係る商品等を表示する商標として、日本全国で広く認識されている)ことを示す証拠
📌 この方法は、「特定の業者の商品・役務を示すものとして広く認識されている商標」に有効!
✅ 3. 商標を変更して再出願する(最終手段として有効)
意見書や使用実績では拒絶理由を覆せない場合、商標を一部変更して再出願するのが有効です。
再出願時のポイント:
- 独自のロゴを追加する
- 造語を加えて識別力を高める
- 文字をデザイン化し、ブランドとしての特徴を加える

実際の事例:
こちらの商標を出願したところ「ありふれた氏である田中のタンパク質」程度の意味が認識されるという理由で拒絶されました(商願2021-163001)。
その後、「TK」の文字を付加したこちらの商標を出願したところ、今度は登録が認められました(登録第6642960号)。
📌 再出願前に、弁理士に相談すれば拒絶されにくい商標を提案してもらえます!
商標専門弁理士に相談するメリット
✅ 拒絶理由通知の内容を正確に分析し、最適な対応策を提案できる
✅ 使用による識別力の証拠を整理したり、審査官に納得してもらいやすい意見書を作成したりできる
✅ 再出願時に、商標のデザインを見直し、登録可能な形に調整できる
💡 「拒絶理由を覆したい!」という方は、弁理士への相談が最も確実な方法です!