「とちおとめ」と「あまおう」の法的な違いと理由

「とちおとめ」と「あまおう」の法的な違いと理由

2021年7月1日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/60517e4393579a4b9c6697b3

あなたには好きなイチゴ、ありますか?
私は、手軽に手に入る「とちおとめ」や、
特別な時に食べる「あまおう」が好きですね。

栃木の「とちおとめ」と、福岡の「あまおう」は、
東の「とちおとめ」、西の「あまおう」なんていう言葉もあるほど、
イチゴの世界では人気のある両横綱です。

そんな「とちおとめ」と「あまおう」なのですが、
実は両者には決定的な違いがあることを、
ご存知でしたでしょうか?

見た目とか、味とか、産地とか、
そういう話ではありません。

★「とちおとめ」は品種名、「あまおう」はブランド名

実は、「とちおとめ」は「品種登録」されている「品種名」で、
あまおう」は「商標登録」されている「ブランド名」、
という違いがあります。

「品種名」は、同じ種と苗には全て同じ名前がつけられるのに対し、
「ブランド名」は、商標権者が認めた場合にのみ、
その名前をつけることができる点で、
全く異なる種類の名前なんですね。

スーパーで見かけると、「とちおとめ」も「あまおう」も
同列に並んでいるから、
まさかこういう違いがあると思わなかった方もいるのではないでしょうか。

そもそも「品種登録」は、「種苗法」という法律に基づいて、
農林水産省」に対して手続する制度です。
新しく開発した品種について、品種登録されると、
育成者権」という権利が発生し、
その品種の種や苗を独占的に生産したり、譲渡したりできます。
また、その品種の種や苗を譲渡等する時に、
登録した品種名を使用することを義務づけられます。

一方、「商標登録」は、「商標法」という法律に基づいて、
「経済産業省」の「特許庁」に対して手続する制度です。
文字やロゴなどについて、商標登録されると、
商標権」という権利が発生し、
商品やサービスを提供する際に、
そのブランド名やロゴなどを、独占的に使用することができます。

★品種名が地味な理由

「あまおう」は商標登録されているブランド名と言いましたが、
「あまおう」の品種名は何かというと、「福岡S6号」です。
かなり地味ですけれども、
世の中にある品種にはこういった記号のような名前をつけることが多いです。

というのも、登録された商標と同じ名称や類似の名称は、
品種登録ができないため、
いい名前をつけようとすると、審査で引っかかってしまうからなんですね。
そこで、普通は商標登録できない記号のような名前をつけて、
品種登録をしているというわけです。

一方、品種名として登録してしまうと、
今度はその名称を商標登録できなくなるため、
ブランド名として使うことができなくなります。

★「とちおとめ」という目立つ品種名になった理由

では、「とちおとめ」はなぜ、
「とちおとめ」というちょっと目立つ名前で品種登録したのでしょうか?

それは「とちおとめ」という品種名を前面に出して
生産者の間に知名度をいち早く広めて、
種と苗の販売数を上げたいという狙いがあったからです。
品種名が目立ってわかりやすいと、人の記憶に残りやすいですよね。
それだけネーミングは重要だということです。

そのおかげもあってか、
「とちおとめ」は、品種登録されてから8年足らずで生産量日本一となりました。

このように、新しい品種を開発した時には、
どういう品種名にするのか、ブランド名を何にするのか、
についても戦略的な判断が必要になります。

それでは、なぜ「あまおう」は、
「とちおとめ」とは異なり、
品種名である「福岡S6号」とは別に、
ブランド名を商標登録したのかですが、
この辺は長くなりそうなので、
また別の機会にお話しいたします。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。