商標の4つのメリット

商標の4つのメリット

2021年6月15日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/6031e8e0ea0275220866d496

「商標の4つのメリット」を説明しますが、
いきなり結論から言いますと、

①自分と他人の商品やサービスを見分けられる
②商品やサービスの出所を示すことができる
③商品やサービスの質を保証してくれる
④広告宣伝してくれる

の4つになります。

これらは弁理士の間では「商標の4つの機能」と説明されるのですが、
「機能」だとよく分からないし、
自分にとってどんなメリットがあるか、興味がわかないですよね。
そこで、「4つのメリット」という形でご紹介いたします。

★①自分と他人の商品やサービスを見分けられる

まず1つ目は、
自分と他人の商品やサービスを見分けられる」ことです。

わかりやすい例で考えてみましょう。
例えば、ある2つのリンゴにAというブランド名、Bというブランド名がついているとします。
すると、お客さんや取引先は、
このAのリンゴはBのリンゴとは違うんだということがわかるわけですね。

この違いがあることで、何がいいのかというと、
Aのリンゴが好きな人は、次もAのブランド名を目印に買いに行けることです。

これがもし、AもBも単に「リンゴ」とだけ表示されていたとしたら?
Aのリンゴが好きなのに、間違えてBを選んでしまう可能性があります。
これって、お客さんにとっても不利益だし、
Aのリンゴを販売する側としても不利益ですよね。

また、スーパーにとっても、
Aのリンゴを扱いたいのに、間違えてBのリンゴを棚に並べてしまって、
お客さんから「このスーパーのリンゴ、質が落ちたな」とか、
「次からは向こうのスーパーで買おう」なんて言われたら、
これまた不利益です。

こういうことを防ぐためにも、
「自分と他人の商品やサービスを見分けられる」
ということが重要な意味を持ってくるのですね。

そしてこの「自分と他人の商品やサービスを見分けられる」メリットを基本として、
以下の3つのメリットが発生してきます。

★②商品やサービスの出所を示すことができる

まずは「商品やサービスの出所を示すことができる」メリットです。

例えば、いくつかのリンゴにAと書いてあれば、
あるいは過去に買ったリンゴと同じAと書いてあれば、
「このAのリンゴは、同じところから提供されたリンゴなんだな」と思います。
つまり同じ出所を示すわけです。

これがもし「リンゴ」とだけ書いてあったら、
別のところから提供されてるリンゴなのに、
同じ出所と勘違いされたり、
同じところから提供されてるリンゴなのに、
別の出所と勘違いされる可能性があります。
それだと、お客さん側から見ると商品の選択に迷いますし、
提供者側からしても「うちのを選んでもらった!」という喜びがありません。

それから、出所を示すことができるおかげで、
わざわざ生産者の表示を見なくても、
Aというブランド名を見たら、
一発でどこから提供されているのかを示すことができるのは、
コミュニケーションコストを減らしてくれる効果があります。

★③商品やサービスの質を保証してくれる

次は「商品やサービスの質を保証してくれる」メリットです。

例えば、Aと書いてあるリンゴは、
果汁が多くてみずみずしいとか、程よい酸味でさわやかな甘さだとか、身が大きいとか、
常に一定の品質であることを保証するわけです。
お客さんがAというブランドのリンゴに一定の品質を期待し、
Aのリンゴを提供する事業者がそれに応える努力をすることで、
Aの品質が保証されます。

これがもし「リンゴ」とだけ書いてあったら、
甘くてみずみずしくて美味しいリンゴを食べたいのに、
どれを選んだらいいか分からず、
酸っぱくてパサパサしてまずいリンゴを選んでしまう可能性があります。

この「質を保証してくれる」メリットがあるおかげで、
ビジネスが成り立つといっても過言ではありません。

★④広告宣伝してくれる

そして最後が「広告宣伝してくれる」メリットです。
Aのリンゴの広告を打って、お客さんに認知させて、
お客さんがAのブランド名(商標)を見た時に、
「これこないだ見たAのリンゴだ!ほしい、買ってみたい」
と購買意欲を起こさせることができます。
また、お客さんの友達に「Aのリンゴって美味しいよ~」とクチコミさせることもできます。

これにより、商品やサービスが購入され、リピートされ、クチコミされ、マスコミなどに取り上げられる
ということが起こります。
ビジネスがどんどん拡大していくわけですね。
いわば商標がセールスマンの役割を果たしているようなものです。
こうなると、もはや商標そのものに経済的価値が出てくるので、
商標権自体が高い金額で価値評価されることもあります。

これがもし全部「リンゴ」という名前だったら、
このようなことは決して起こりません。
そもそもリンゴを提供する会社が少なくなって、
競争が起きなくなるために、
結果的にリンゴ全体の質が落ちる可能性があります。

このように、商標というものが、
事業者やお客さんや取引先だけでなく、
社会全体にとっても
非常に重要なものなんだということが、
お分かりになったのではないでしょうか。

ぜひ、商標の持つ4つのメリットに注目していただければと思います。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。