「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。
オリジナルのTPPから米国を除いた「TPP11」にて、
「知的財産」関連を含む20項目を凍結したうえで、
大筋合意に至ったことが、11月11日に公表されました。
(参考:TPP11協定の合意内容について(内閣官房TPP等政府対策本部))
「知的財産」の分野については、これまでの交渉過程で米国が強く主張してきた項目ですね。
例えば、日本の著作権の保護期間は著作者の死後50年間(映画は公表後70年)ですが、
これを米国と同じ「70年」にする、というものがあります。
米国には、ミッキーマウスの著作権の保護期間満了(パブリックドメイン化)が近づくと、
制度を見直して保護期間を改正する「著作権延長法(Copyright Term Extension Act)」という法律が1998年に制定され、「ミッキーマウス延命法」と揶揄されていますが…。
海外に対しても「米国の基準に合わせろ」と要求していたわけですね。
著作権の保護期間が延長になったら、
著作物を自由利用できる機会が先延ばしになり、
例えば、原作の小説を映画にしたり演劇化したりする、二次創作が制限されてしまいます。
新たな創作への意欲を減退させることは、
著作権法の目的である「文化の発展」を阻害してしまうのです。
また、作家の遺族だけが長年不労所得を得続けるというのも、
腑に落ちない人は多いと思います。
そんな「著作権保護期間の延長」も、米国がTPPに参加しなくなった以上必要なくなり、凍結に至ったということです。
ただし、TPPとは別の「日欧EPA」交渉では、
著作権の保護期間を70年に延長する方向のようで、懸念の声も広がっています。
(参考:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000270758.pdf)
著作権保護期間の延長の問題は、まだ終わらないのです。
それにTPP11での合意内容が、日米FTAの交渉のベースになることも考えられます。
そうなると、TPP以上に悪い条件で、米国との二国間協定を締結させられる可能性もあるのです。
もちろん、大筋合意を経たからといって、各国で批准されるかはわかりません。
しかし、発効に至った場合の想定をしながら、対策を考えておく必要はありますね。