※2020年9月29日配信メルマガVol.91より抜粋(一部加筆修正あり)
知的財産の専門部署を置く会社は少ない
組織が大きくなってくると、
新しい製品やサービスを継続的に生み出して、
それを知財として守り、活かしていくための
「体制づくり」が課題になってきます。
大企業では、知財のことを専門に扱う「知的財産部(知財部)」が設置されることが多いですが、
中小企業では、知財に力を入れている企業を除き、
わざわざ知財のための専門部署を設けることは多くありません。
したがって、どこが知財を担当するのか?
が問題になります。
社内で知的財産を担当するのは誰にすべきか?
それを考える上では、知財が「研究・開発」「製造(生産)」「営業(マーケティング・販売)」の
どこに関わるのかを考えます。
まず、技術的思想の創作である「特許(発明)」は、「研究・開発」段階で検討すべきところです。
そして、具体的な製品のデザインが絡む「製造(生産)」の段階では、「意匠」を検討します。
さらに、商品を売る「営業(マーケティング・販売)」の段階では、「商標」の検討が必要です。
つまり、企業活動のそれぞれの段階で、知財が関係してくるので、
できるだけ部署を横断的に見ることができる社長自身(又は経営陣)か、
社長直轄の部署で担当することが望ましいのです。
社員50名くらいまでの規模の企業であれば、
できれば社長ご自身が担当されるのが良いでしょう。
それ以上の規模の場合は、
やはり企業活動の上流である「研究・開発」の部署で知財の担当を置いて、
「製造(生産)」「営業(マーケティング・販売)」にも関われるようにすれば良いと思います。
理想的な体制を敷いている大阪の優良企業
とても理想的な体制を敷いている企業で、大阪の「株式会社ユニオン」という会社があります。
ここは、オフィスビルや百貨店など、3000種類ものデザインのドアハンドルを扱う企業で、
国内シェアはなんと9割を誇っています。
ユニオンのドアハンドルは、品質とデザイン性の高さに定評があり、
グッドデザイン賞やIFデザイン賞の受賞に加え、
平成25年度の「産業財産権制度活用優良企業」の「意匠活用」部門でも表彰されています。
彼らの社内体制の特徴は、
「社長直轄」の「開発部」に知財担当者を置いていること。
同社はファブレス企業で、「製造・組み立て」を外部委託していますが、
開発した技術は特許権で、
設計したデザインは意匠権で、
販売におけるブランドは商標権で、
しっかりと権利保護しています。
中小企業の知財は社長が責任者
このように隙のない知財網を構築しているのは、
社長自らが責任者となり、
ドアハンドルのトップシェアメーカーとしての誇りを守っているからなのですね。
社長のデザインにかける情熱は特に熱く、
過去の意匠出願のファイルは、権利化されなかったものも含めてファイリングして、
過去のデザインに似ていないかチェックすることで、
常にオリジナルの新しいデザインを生み出しています。
圧倒的なシェアトップを取っているためか、
敵は自社自身なのですね。
(実際に、意匠出願の審査では、自社の権利の存在を理由に拒絶されることが多々あるそうです。)
組織の壁を超えて、経営視点で知財に関わる
ユニオン社の知財を生み出す体制の工夫は、これだけではありません。
「全社員」を対象にした「新製品の社内提案制度」を設け、
これを「社内の審査会」にかけて採用の可否を決定しています。
知財担当者だけで決めているわけではないのです。
また、組織横断的なパテント会議が定期的に開催され、
経営者、各部門の責任者、知財担当者が出席して、
「出願が必要かどうか」「権利を存続させるかどうか」
「他社の模倣品に対してどう対応するか」
「ロイヤリティ契約をどうするか」
などについて、議論をしているそうです。
このうち「権利を存続させるかどうか」は、
単に「売り上げに貢献しているかどうか」だけでなく、
「他社を牽制する効果があるか」
「ブランド向上につながるか」
といった、多面的な観点から判断しています。
このように、知財を経営に直接結び付けて考える体制を構築しているからこそ、
知財を活用してビジネスの価値を高めることができるのですね。
「知財は経営の要」
このような意識を持ちつつ、体制を整えていただければと思います。
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