著作権ないのに ©︎ マークつけたら違法?

著作権ないのに ©︎ マークつけたら違法?

2021年7月9日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/6056be56307f0542e9453180

普段、いろんなウェブサイトの記事だとか、
プレゼン資料だとかに、
マルシー(©)マークがついているのを、
見たり使ったりしたことがあるかと思います。

この©というマークは、
以前の記事でも説明したように、
英語のCopyrightの頭文字Cに由来しており、
著作権を意味しているんですね。

[cardlink url=”https://samuraitz.com/?p=1783″]

つまり、「この文章には著作権が発生していますよ」と
アピールするために、
©マークをつけています。

★著作権ないのに ©︎ マークつけたら違法?

では、著作権がないのに、
©︎マークをつけたら違法になるのでしょうか?

結論から言うと、
違法にはなりません
なぜなら、©︎マークは法律で決められたマークではないからです。

この©︎マークは、万国著作権条約の3条1項で、
かつて著作権の発生に何らかの手続を必要としていた国に向けて作られたルールです。
©マークと、著作権者の氏名と最初の発行年を表示すると、
手続なしで著作権が発生する外国で発行された外国民の著作物も、
同様に著作物で保護しますよという規定があるんですね。

例えば、かつて米国では、著作権の発生のために手続を必要としていたので、
手続が不要な日本や欧州で発生した著作権が、
同じように保護されるためには、この規定が必要でした。

ただし今では、
米国を含めほとんどの国で、
手続なしで著作権が発生するようになったので、
©マークそのものに、法的な意味はなくなってしまったんですね。

★実際にあった争い

実際に日本で起きた争いで、
著作権が消滅したのに©マークをつけて、
著作権がまだあるかのように、ライセンシーに使用させることは、
不正競争行為じゃないかと主張する事件がありました。
http://tyosaku.hanrei.jp/hanrei/cr/6293.html
(大阪地判平成19年1月30日判決 平成17年(ワ)12138号事件)

これは、「パブリックドメイン」の記事にも出てきた、
「ピーターラビット」の事件で、
すでにパブリックドメイン、つまり著作権消滅してるのに、
©マークをつけて、著作権侵害を訴えてきたので、
ライセンシーであるファミリアが反論したという事件ですね。

[cardlink url=”https://samuraitz.com/?p=2014″]

結局、不正競争行為にはならなかったのですが、
この判決文のなかで、©マークが
著作権を発生させるものではないこと
・表示がないからといって、著作権の保護を受けられないわけではないこと
表示の有無と著作物として保護されるかどうかは無関係であること
などが示されました。

また、©マークの現実的な機能として、
著作権の存在を積極的に表明する側面があること
無断で使用すると著作権侵害なりうることを、警告する機能があること
も否定できないと指摘されました。

★ © マークの存在意義

以上より、現在の©マークは、
著作権が発生しているかもしれないことを、外部に知らしめる
くらいの役割だと思っていただければ大丈夫です。

これがあることで、少し引き締まる感じもしますし、
人によっては、このマークをみて「気をつけよう」と思ってくれるため、
存在意義はあると思います。

★ © マークの使い方

ちなみに、 © マークの使い方に決まりがあるわけではないですが、多いのは、
©の後に、最初に公開した年と著作権を有する人や企業名を書いておく方式です。
例えば、
「©2021べんりしほっしー株式会社」
といった具合ですね。
これは、冒頭にも出てきた、万国著作権条約の3条1項のルールに基づきます。

★「All Rights Reserved.」は必要?

また、その後ろに「All Rights Reserved.」をつけることもあります。
これは、「著作権法上の全ての権利を留保する」といった意味合いです。
この表記は、現在全く意味を成していません
というのも、かつての米国のように、著作権の発生のために手続を必要としていた国が調印した、
ブエノスアイレス条約で必要とされた表記だからです。

今はどの国も、手続き不要の方式を採用するベルヌ条約に加盟しているので、
「All Rights Reserved.」は必要ないということなんですね。

以上、 © マークは、法的な効果はないけれど、
著作権の発生を匂わせて、取り扱いの注意喚起をするために、
よかったらご自身の著作物などに使ってみてください。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。