最近話題の「サイトブロッキング」について

最近話題の「サイトブロッキング」について

「サムライツ®」の弁理士、保屋野です。

最近、著作権が発生しているコンテンツを、
無断でアップロードしてサービスを提供する「海賊版サイト」の存在が話題になっています。

例えば、「漫画村」や「Anitube」、「MioMio」といったサイトが、政府により名指しで指摘されています。
特に「漫画村」は、サイト閉鎖の後、「漫画タウン」に名前を変えて、
公式Twitterでは挑発的なツイートを繰り返して、注目されています。

これらのサイトは、今現在の時点ではアクセスできなくなっていますが、
それまでは、一般に有料で提供されている漫画やアニメを、無料で見ることができたのですね。

これによって、漫画やアニメの売上が激減し、著作権者や著作隣接権者、出版権者といった権利者の利益を、著しく損なっている現状があります。

そうなると、今後良質なコンテンツが生まれなくなって、
結局、インターネット上で健全なコンテンツを楽しむ機会が失われてしまうのではないかと、危惧されています。

そこで、インターネットへの接続サービスを提供する「ISP(インターネットサービスプロバイダ)」側で、悪質な「海賊版サイト」へのアクセスを遮断することで、
閲覧を防止できる措置「サイトブロッキング」の実施が議論されています。

「サイトブロッキング」の特徴は、ユーザの意思に関係なく、一律にアクセスを切断する、という点です。
この点では、ユーザの同意を得た上でアクセスを遮断する「フィルタリング」とは異なっています。

ただ「サイトブロッキング」は、すべてのユーザーの通信を監視する必要があるので、
憲法21条で守られている「通信の秘密」を侵害するのではないか?という懸念があります。
通信の秘密というのは、表現の自由を保障するために確保されているものなんですね。

これに対して、
相当悪質な「海賊版サイト」をブロックする際は、
刑法でいう「緊急避難」に当たるから、違法にはならないという考えがあります。

「緊急避難」というのは、
例えば船が沈没したときに、一枚の板が浮いていて、それにつかまれば助かるというケースで、自分ともう1人がそれにつかまろうとしている場合に、
相手を突き飛ばして溺死させても、罪に問われないという理論です(カルネアデスの板)。

サイトブロッキングも、「緊急避難」に該当するような差し迫った場合であれば、
認められるべきと言っているわけですね。

なかなかこの判断は難しいですし、
インターネットサービスプロバイダに委ねて、
ブロッキングが乱発するようなことは避けなければなりません

すでに欧州やイギリス、ドイツでは、立法化されているので、
そういった海外のケースも参考にしながら、
日本でも法整備の議論が進んでいくものと考えられます。

個人的な感想としては、
ネットの普及とサービス、テクノロジーの進化により、
デジタルコンテンツに無料でアクセスできてしまう大きな流れというのは、
もう変えられないのかなという印象です。
ライブ配信の世界で行われているような、
本当に応援したい作家さんに対しては、寄付や投げ銭などで応援する、
みたいな文化も、出てくるとは思います。

ただし、ユーザー側のモラルに頼るだけでは、
創り手の創作意欲を失わせることにもなりかねませんし、
著作権者の利益を守るための法整備というのは、
きちんとされるべきだと思いました。