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★ご質問
今回は、ご質問をいただいたので、それについてお答えします。
去年の緊急事態宣言の後、絵本の読み聞かせの著作権侵害のことが話題になったのを覚えています。 スタエフで以下のようなことを行う場合について、セーフかアウトか、ご意見をお伺いしたいです。 ●「全文読み聞かせ」ということでライブ配信をする。 読んだ後に、リスナーさんの感想などをコメントでいただき、交流する。 ●自分の子供に読み聞かせをしている様子を収録する。 全文のこともあれば一部のこともある。 子供との日常のやり取りを配信するのであって、それがたまたま読み聞かせだった。(お菓子作りをしている日もあるし、カルタをしている日もあるし、読み聞かせの日もある、そんな感じ。) どちらも、本のタイトルや作者などの情報は、配信内でお伝えするか概要欄に書いておく。 ほっしーさんの見解を伺いたいです。よろしくお願いします。
★結論
結論から言いますと、「全文読み聞かせ」でのライブ配信は今の法律ではアウトとなります。
なぜなら「全文」を読み聞かせということなので、
著作権法上の「引用」の要件を満たさないからです。
これは、読んだ後にリスナーさんの感想などをコメントでいただく場合でも、同じです。
したがって、「全文読み聞かせ」の配信を伴う場合は、著作権を持っている人に対して、
「全文読み聞かせの様子をライブ配信してもいいですか?」といった許諾が必要となります。
全文読み聞かせを動画で撮って、ネットにアップせずに近所の子どもと一緒に見るぐらいなら大丈夫です。
★一部の場合
「全文のこともあれば一部のこともある」とのことですが、
一部の場合は、「引用」に当たれば許諾をもらう必要はありません。
この場合ですと、絵本の一部を読み上げて、
それについて、絵本の部分よりも多く自分の解説を加えたりすると、
「引用」として認められるだろうと思われます。
ただ、自分の解説を加えるとしても、全文はNGとなってしまいます。
★たまたまでも同様
「子供との日常のやり取りを配信するのであって、それがたまたま読み聞かせだった。」
ということですね。
とてもほのぼのした光景が目に浮かんで、微笑ましいですね。
ただ、たまたま意図せずに読み聞かせをネットで流してしまったとしても、
一応法律上は、権利の侵害行為に該当してしまいます。
なお、「日本児童出版美術家連盟」で
読み聞かせ活動に関する権利の取扱がまとめられています。
概要欄にリンクを貼っておきますので、ご参考ください。
http://dobiren2.main.jp/yomikikase/
https://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/yomikikase-faq.pdf
★ネットに載せない場合
朗読会のような形で、オフラインの場で読み聞かせをされる場合、
無料で行うのであれば、権利者の許諾は必要ありません。
交通費と昼食代程度なら無料に含まれると解釈されます。
どんどんやって、お子様たちとコミュニケーションを取られてくださいね。
一方、これが入場料をとるようなケースだと、やはり利用に際して許諾が必要になります。
また、無料であっても、文の一部を改変して読み聞かせすることは、認められていません。
この点はご注意くださいね。
★例外
営利を目的としない教育機関が行う場合、
2021年3月末までは、無償で配信することができます。
2021年4月以降は、一定額の補償金を支払えば、配信可能です。
ただし、いずれにしても授業の目的で必要と認められる範囲に限られます。
元々は、法改正により昨年の4月から、「授業目的公衆送信補償金制度」というのが始まって、
補償金の支払いが必要だったのですが、
新型コロナウイルス感染拡大の事態を受けて、
遠隔授業でも質の高い教育を提供できるようにという計らいで、
2020年度に関しては無償ということになりました。
ちなみに、ここでいう「教育機関」というのは、
学校教育法等に基づいて設置された機関のことで、
届出を行う必要があります。
今回のケースには当たらないかもしれませんが、
ご参考のためにご紹介しました。
★他の人もやってるし、バレないのでは…?
もちろん、世の中にはそんなこと知らずに読み聞かせ配信をしている人はいると思います。
それを見ると悔しい気持ちになるかもしれませんね。
そこで、リスクを背負って自分もやっちゃうというのも1つの手です。
ただ、それによって何か言われてしまう場合もあるので、
やはり安全をとるということを、おすすめいたします。
以上、ちょっと厳しいご回答になってしまいましたが、
ご参考になれば幸いです。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。