以前の記事で、
商標権は「登録日から10年」の有効期間だけれど、
10年ごとの更新により20年、30年…と
半永久的に権利を持つことができるというお話をしました。
※参考:「商標権の有効期間」
https://samuraitz.com/?p=2004
中には100年を超える商標権もあるのですが、
今現在存在している商標で、最も古い商標は、
一体どんな商標で、いつから権利が存続しているのでしょうか?
現存最古の登録番号の商標
早速調べてみると、「清酒」の分野で登録されている
「寿海」という商標が、
現在のところ最も古い登録番号の商標となっております(登録第1655号)。

「J-PlatPat」の出願・登録情報によれば、
出願されたのは、
明治35年(1902年)5月8日で、
登録されたのが、
明治35年(1902年)7月16日と記録されています。
今から、119年前、明治35年ですね。
しかし、この「寿海」の公報の方を見てみると、
出願日が
明治20年(1887年)4月2日
登録日が
明治20年(1887年)7月5日
と記録されています。
すなわち、こちらが旧制度下での出願日・登録日なのでは?と思われます。
ちなみに「寿海」は、江戸時代に活躍した
歌舞伎役者の7代目市川團十郎の俳名(はいみょう、役者名)にちなんで
つけられたそうです。
現在は、百萬石酒造株式会社が商標権者ですが、
沢の鶴株式会社が、商標権のライセンスを受ける形で、
醸造し、販売しています。
https://www.sawanotsuru.co.jp/site/nihonshu/jukai/
現存最古の登録商標
ところが、こちらの「寿海」よりももっと前に出願された商標があることを知りました。
それが下記の鶴と太陽からなる図形です(登録第106215号)。

「J-PlatPat」の出願・登録情報によれば、
出願されたのは、
大正8年(1919年)7月4日で、
登録されたのが、
大正8年(1919年)8月14日と記録されています。
一見、こちらの方が後に登録されているように見えますが、
実はこの図形商標は、当時の法制度に従い、更新出願の際に新しい登録として扱われたようなのです。
更新前の元の出願は、
出願日が
明治17年(1884年)11月5日
登録日が
明治18年(1885年)6月3日
と記録されています。
登録番号は登録第56号でした。
したがって、どうやらこの鶴と太陽の図形商標が、現存する最古の登録商標だといえそうです。
なお、「J-PlatPat」の出願・登録情報に”出願日””登録日”として記録されているのは、
明治32年(1899年)に制定された最初の「商標法」の下で、
更新の手続を行なった日、更新が登録された日という意味なのかもしれません。
その他の現存する古い登録商標
他にも、現存する古い商標登録があります。
例えば「みりん」の分野で登録されている「九重」という商標です(登録第521号)。

こちらは九重味淋株式会社が登録していますが、
「J-PlatPat」の出願・登録情報によれば、
明治23年(1890年)7月31日
に出願されたと記録されています。
登録されたのは
明治43年(1910年)8月24日
です。
一方、公報の記録によれば、
出願日が
明治18年(1885年)3月10日
登録日が
明治18年(1885年)7月28日
と記録されているので、
こちらも「鶴と太陽の図形」に負けず劣らず古いです。
公報とJ-PlatPatの出願日・登録日が一致しないのはなぜ?
おそらくですが、
これは当時の法制度が関係していると考えられます。
日本で最初の商標に関する法令は、
1884年(明治17年)の6月7日に公布された商標条例です。
この商標条例が、明治天皇の勅令により、
1888年(明治21年)に全面改正されました。
この商標条例は、まだ法律とは言えないくらい、
整備されていないものだったのではないか?と考えられます。
または、商標条例の下で出願・登録された年月日は、
きちんと出願のていを成していなかったか、審査がされなかったのかもしれません。
その後、前述の通り、1899年(明治32年)に最初の商標法が制定されて、
やっと内容が整備されてきました。
だから、旧制度(商標条例)下での登録日は、
「J-PlatPat」の出願・登録情報における”登録日”として記録されていないのではないか…
と推測しています。
そして、商標法成立後の更新登録日が、
“登録日”として記録されているのだと思われます。
こうやって考えてみると、先人たちの努力によって、
幾度となく制度の改正が行われた結果、
今日の商標制度が成り立っているんだなということがわかります。
そんな歴史に思いを馳せつつ、
今日もお仕事をがんばっていこうと思いました。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。
